2013年のナショナルリーグワイルドカードゲーム
2013年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月1日に開幕した。ナショナルリーグの第2回ワイルドカードゲーム(英語: 2nd National League Wild Card Game)はその最初の試合として、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグのPNCパークで行われ、ピッツバーグ・パイレーツがシンシナティ・レッズを6-2で下した。この結果、パイレーツが地区シリーズへ進出することになった。 両チームの2013年→「2013年のメジャーリーグベースボール」も参照
パイレーツは1993年から2012年まで20年連続で負け越しており、特に過去2年はいずれも7月中旬に地区首位となったが、そこから崩れて4位に沈んでいた。この年も、当初は30球団で最初に50勝目を挙げる好調ぶりで[3]、前半戦終了時点では首位セントルイス・カージナルスと1.0ゲーム差の2位につけた。そしてこの年は同じ轍を踏まず、後半戦も引き続きカージナルスと優勝を争った。抜きつ抜かれつの混戦のなか、9月上旬には単独首位に立ってゲーム差を最大2.0に広げ、その後また抜き返されても中旬には首位に並ぶなど粘った。最後はカージナルスに突き放され、27日に地区優勝を奪われたが[4]、翌28日に第1ワイルドカードの座を確保した[5]。投手陣が先発・救援ともに安定した働きを見せ、野手も高い守備力と効果的なシフトで彼らを支えるなど、ディフェンスの良さがチーム躍進の鍵となった[6]。1試合平均得点は3.91でリーグ9位、防御率は3.26で同3位。 そのパイレーツやカージナルスと同じ地区に属するレッズも、開幕から勝利を積み重ねた。しかし地区首位の座にいたのは4月下旬が最後で、それ以降は2位以下の順位を強いられた。前半戦終了時点では首位カージナルスと5.0ゲーム差の3位だった。ただ、リーグのワイルドカード2枠をめぐる争いでは2位以上を維持し、3位ワシントン・ナショナルズ(東地区)に5.0ゲーム差をつけていた。後半戦は、地区優勝をめぐってはカージナルスとパイレーツになかなか追いつけず、その一方でワイルドカード争いではナショナルズに追い上げられた。9月23日にナショナルズを振り切ってポストシーズン進出を決めたが[7]、最後に5連敗を喫して地区優勝をカージナルスに、第1ワイルドカードをパイレーツに譲った。選手それぞれが持ち味を発揮したにもかかわらず、チームとしては中途半端な結果に終わった[8]。1試合平均得点は4.31でリーグ3位、防御率は3.38で同4位。 両チームはこの年、レギュラーシーズンでは計19試合を戦っている。結果は以下の通り[9]。
ロースター両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
試合
試合前の式典では、アメリカ合衆国国歌『星条旗』独唱をパイレーツ外野手アンドリュー・マカッチェンの母ペトリーナが行い[10]、始球式ではダグ・ドレイベックがボールを投じた[11]。この試合の先発投手は、パイレーツはフランシスコ・リリアーノ、レッズはジョニー・クエト。レギュラーシーズンでの成績は、リリアーノが26試合161.0イニングで16勝8敗・防御率3.02、クエトが11試合60.2イニングで5勝2敗・防御率2.82である。ドミニカ共和国出身の投手どうしが先発で投げ合うのは、ポストシーズンでは9年ぶり史上3度目となる[12]。 ![]() ペンシルベニア州ピッツバーグでポストシーズンが行われるのは1992年のリーグ優勝決定戦以来21年ぶりとあって、この日のPNCパークには球場史上最多の観客が詰めかけてパイレーツに声援を送っていた[13]。そのなかで登板したリリアーノは、1回・2回とレッズを三者凡退に封じた。パイレーツは2回裏、先頭の5番マーロン・バードが4球目のチェンジアップを捉え、左翼スタンドへ飛び込む先制のソロ本塁打とする。この展開に場内のファンはさらに盛り上がり、7番ラッセル・マーティンの打席では「クエエエト! クエエエト!」と、相手投手の名前を連呼し始めた。煽られたクエトはマーティンに対してボール先行のカウントにし、4球目を投げる前にはマウンド上でボールを落とした。それを拾ってからの4球目はフォーシームが真ん中に入り、マーティンがこれを逃さずに引っ張ると、左翼スタンドへ飛び込むソロ本塁打となった。クエトは喚声の影響を否定したが[14]、マーティンは「本人じゃないからわからないけど、観客の声は聞こえているはずだ」と述べた[13]。 パイレーツは3回裏も一死一・三塁の好機を作って、6番ペドロ・アルバレスの犠牲フライで1点を加える。3点差をつけられたレッズは4回表、先頭の1番・秋信守が死球で出塁し、これをきっかけに二死一・二塁として、5番ジェイ・ブルースの左前打で1点を返した。だがパイレーツはその裏、一死から1番スターリング・マルテが二塁打を放ち、クエトを降板に追い込んだ。彼の球を受けた捕手のライアン・ハニガンは「今日はストライクゾーンの低めを突けてなかったし、球の沈みもいつもより悪かった」と振り返った[14]。クエト降板後もレッズ投手陣はパイレーツ打線を止めることができない。2番手ショーン・マーシャルは2番ニール・ウォーカーの二塁打で4点目を奪われ、一塁が空いたので3番マカッチェンを敬遠したが、4番ジャスティン・モルノーにも四球を与えて満塁とする。3番手J.J.フーバーは5番バードを二ゴロに打ち取るも、二塁手ブランドン・フィリップスが打球をこぼしたため併殺とはならず、その間に三塁走者ウォーカーが生還した。 リリアーノは失点を喫した4回と同様に、5回も先頭打者を出塁させる。7番ザック・コザートを3球で2ストライクに追い込むが、1球ファウルのあと3球連続で見極められての四球だった。しかし8番ハニガンを右飛に退けると、代打クリス・ハイジーはフルカウントからのスライダーで三ゴロ併殺に仕留め、失点を免れた。レッズ打線が3周り目に入った6回表は、一死から2番ライアン・ラドウィックがチーム初長打となる二塁打で得点圏に進み、好機で中軸に打順をまわす。リリアーノは、3番ジョーイ・ボットを外角低めスライダーで空振り三振に、4番フィリップスを外角低めチェンジアップで二ゴロに封じ、この場面を切り抜けた。レッズは7回表も一死から、今度は6番トッド・フレイジャーが二塁打を浴びせ、再び得点圏に走者を出す。それでもリリアーノは、7番コザートにスライダーで遊ゴロを打たせて走者を進ませもせず、8番ハニガンもスライダーで三ゴロに片付けた。リリアーノは結局、7イニング90球を4回の1失点のみで投げ切った。 ![]() 7回裏、パイレーツは先頭の7番マーティンがこの日2本目のソロ本塁打を放ち、6-1と点差を5点に広げた。一死後、9番リリアーノの打順で代打にトラビス・スナイダーが送られた。スナイダーは空振り三振に終わったが、場内のファンは打席のあいだ、リリアーノの名前を連呼して好投を称えていた[15]。8回表、左腕トニー・ワトソンがリリアーノからマウンドを引き継ぐ。レッズはワトソンを攻めたて、一死から1番・秋のソロ本塁打で4点差に戻すと、2番ラドウィックもエンタイトル二塁打で続いた。だが3番ボットと4番フィリップスがともに一ゴロに倒れ、3点目を取ることはできなかった。この日は3・4番コンビのふたりが、第1打席以外は得点圏に走者を置いた場面で打席に立ちながら、無安打と沈黙した。9回表、パイレーツは抑えのジェイソン・グリーリが登板し、5番ブルースを空振り三振に、6番フレイジャーを左飛に片付ける。そして最後は7番コザートを1球で二ゴロに打ち取り、三者凡退で試合を締めくくった。 パイレーツがポストシーズン初戦突破を決めると、場内のファンは大歓声をあげた。試合を通してパイレーツに声援を送り続けた彼らについて、マーティンは「こんなに大きな声援は人生でも初めての経験だ」と振り返り[16]、また「10人目の選手になって僕らを勝たせてくれたようなもんだね」と語った[17]。マカッチェンは「もし僕が敵チームの選手だったら、こんなにやかましいところでプレイするのは嫌だ」と話した[13]。次にPNCパークで試合が行われるのは5日後の地区シリーズ第3戦で、対戦相手は同じ中地区でレギュラーシーズン最終盤まで競ったセントルイス・カージナルスである。一方のレッズは、ダスティ・ベイカーが監督に就任して6年目で3度目のポストシーズン出場だったが、地区シリーズで敗退した2010年と2012年に続き、またも初戦で姿を消すことになった。これを受け、チームは試合から3日後にベイカーを解任し[18]、2014年シーズンを新たな体制で迎えることにしたのだった。 脚注
外部リンク
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