阿倍野区(あべのく)は、大阪市を構成する24行政区のうちの一つ。区域には、帝塚山や北畠といった良質な住宅街を抱え、区北端には日本初のスーパートール(高さ300m以上のビル)であるあべのハルカスがそびえる。
概要
北部の阿倍野橋周辺は近鉄南大阪線大阪阿部野橋駅、Osaka Metro御堂筋線・谷町線天王寺駅、阪堺電気軌道上町線天王寺駅前駅があり、百貨店や映画館などが存在する商業地区である。
国道25号を挟んですぐ北側の天王寺区に位置するJR大阪環状線・関西本線(大和路線)・阪和線天王寺駅とともに「天王寺・阿倍野」と位置づけられており大阪の南の主要ターミナルとなっている。
天王寺・阿倍野は大阪府内では梅田(キタ)、心斎橋・難波(ミナミ)に次ぐ大阪の第三の繁華街としての機能を持っており、近畿地方でも有数の商業集積地となっている。阿倍野再開発事業により、あべのキューズタウン等が誕生した。阿倍野区の最北端に位置する、近鉄の主要駅の一つである大阪阿部野橋駅は、日本第2位の超高層ビルである「あべのハルカス」と直結しており、大阪市東住吉区や大阪府南河内地域、奈良盆地南部からのターミナル駅の一つでもある。
町会・自治会などの自治組織は、金塚・常盤・高松・丸山・晴明丘・王子・阿倍野・阪南・長池・文の里の各連合町会が組織されている。北東部の松崎町・文の里と、南西部の晴明通・橋本町・相生通・北畠・帝塚山・万代は文教地区・高級住宅街として知られている。また、南西部は『聖天山風致地区』(晴明通・橋本町・相生通・北畠・帝塚山)辺り(部分的に風致地区でない箇所も有る)。
中央区、天王寺区と同様に数多くの学校が立地する文教地区の1つである[1]。
なお、区名やOsaka Metro・阪堺電気軌道上町線の駅名は「阿倍野」だが[2][3]神社名と近鉄南大阪線の駅名は「阿部野」となっている。
地理
隣接している区
区域
- 高松連合振興町会
- 天王寺町北1丁目~3丁目
- 天王寺町南1丁目~3丁目
- 常盤連合振興町会
- 阿倍野筋1丁目1番~3番
- 阿倍野筋2丁目1番~4番
- 阿倍野筋3丁目1番~9番
- 三明町1丁目~2丁目
- 美章園1丁目~2丁目
- 松崎町1丁目~4丁目
- 文の里連合振興町会
- 昭和町1丁目
- 美章園3丁目
- 文の里1丁目~4丁目
- 桃ケ池町1丁目2番
- 長池連合振興町会
- 昭和町2丁目~5丁目
- 長池町
- 西田辺町1丁目~2丁目
- 阪南町7丁目1番
- 阪南町7丁目4番~6番
- 阪南町7丁目9番
- 桃ケ池町1丁目3番~14番
- 王子連合振興町会
- 阿倍野筋4丁目1番~17番
- 阿倍野筋5丁目1番~9番
- 王子町1丁目
- 阪南町1丁目
- 阪南連合振興町会
- 王子町4丁目
- 播磨町1丁目~3丁目
- 阪南町4丁目~6丁目
- 阪南町7丁目2番
- 阪南町7丁目3番
- 阪南町7丁目7番~8番
- 金塚連合振興町会
- 旭町1丁目~3丁目
- 阿倍野筋1丁目4番~7番
- 阿倍野筋2丁目5番
- 阿倍野筋3丁目10番~13番
- 丸山連合振興町会
- 阿倍野筋4丁目18番~24番
- 阿倍野筋5丁目10番~13番
- 阿倍野元町1番~2番
- 共立通1丁目~2丁目
- 松虫通1丁目~3丁目
- 丸山通1丁目~2丁目
- 晴明丘連合振興町会
- 相生通1丁目~2丁目
- 阿倍野元町3番~19番
- 北畠1丁目~3丁目
- 晴明通
- 帝塚山1丁目
- 橋本町
- 万代1丁目
町名
阿倍野区の町名には、以下のものがある。
また現在は住居表示上の町名ではないものの、地域一帯を示す地名として金塚(旭町全域と阿倍野筋の一部)、高松(天王寺町北・天王寺町南)といった地名があり、小学校や連合町会などの名称として使用されている。
主な地名の由来は、以下の通りとなる。
- 文の里 - この付近を宅地開発を行った天王寺土地建物株式会社が、この地を「文ノ里」と命名したこと。および当時、この地を走っていた南海電気鉄道平野線(1980年11月28日廃止)の苗代田 - 股ヶ池間に駅を建設し、「文ノ里」と名付けて南海電気鉄道に寄付したことに由来する[4]。
- 播磨町 - 王子町4丁目にある南北朝時代の住吉の合戦で南朝側の忠臣・楠木正行と戦って敗れた北朝側の播磨の太守・赤松則村(円心)の子、赤松貞範が、戦死した将兵の遺骨を納めて塚を築き、播磨塚と名付け部下の冥福を祈ったと伝えられていることに由来する。
- 王子町 - 旧東成郡天王寺村大字阿倍野村字王子前に由来する[4]。
- 橋本町 - 江戸時代の与力であった橋本尚四郎・久五郎兄弟が明治維新後、この地に移り住み、明治の初めごろに天下茶屋遊園地や聖天坂の道路開発を手掛けるなど、この辺り一帯の開発に貢献したのを記念して名付けられたことに由来する[4]。
- 晴明通 - この付近が生誕の地とされ、この地に隣接する阿倍野元町5番地にある平安時代の陰陽師の一人、安倍晴明を祀る安倍晴明神社(阿倍王子神社の末社)に由来する[4]。
- 相生通 - かつての東成郡天王寺村の西端であった紀州街道の下町から東に延びる町並み(現在の西成区天神ノ森付近)と、同じく東成郡天王寺村のほぼ中心部を通る阿倍野街道(熊野街道の一部)から西へ伸びる町並みとが現在の相生通1丁目8番地と相生通1丁目9番地との境目の坂の辺りで相会することから、その意味を取り入れて、その坂の名が相生坂と名付けられたことに由来する[4]。
- 阿倍野元町 - かつての東成郡阿部野村の中心地であったことに由来する。
- 北畠 - 王子町3丁目8番地にある北畠公園に所在する大名塚を、江戸時代の国学者・並川誠所が、南北朝時代の石津の戦いで討ち死にした南朝側の公家で、武将でもあった北畠顕家の墳墓と享保年間に比定したことにより、明治維新後、地元の有志が、この辺り一帯を北畠顕家戦没の地として顕彰し、北畠顕家を祀る祠、阿部野神社を建立するとともに、この地に北畠の名を冠したことに由来する[4]。
- 万代(1丁目のみ阿倍野区・2-3丁目は住吉区) - この地の南側に隣接する住吉区万代3丁目7番地にある万代池に由来する。また、町名が名付けられた当時、この辺りも住吉区の一部であった。
- 帝塚山 - この地の南側に隣接する住吉区帝塚山西2丁目8番地に帝塚山古墳に由来する。また、町名が名付けられた当時、この辺りも住吉区の一部であった[4]。
歴史
1943年(昭和18年)4月1日に、大阪市がそれまでの15区制から22区制へ分増区させた際、住吉区が3区(住吉区・東住吉区・阿倍野区)に分区されて誕生した。区域は大阪市編入前の旧天王寺村(1897年大阪市第一次市域拡張以降の区域)の大半と、田辺町・住吉村・長居村のそれぞれ一部にあたる。
区名の由来は、古代にこの地を領有していた豪族「阿倍氏」の姓からとする説と、『万葉集』の山部赤人の歌からとする説、古地名の「東生郡餘戸郷(ひがしなりぐんあまべごう)」の「餘戸(あまべ)」からとする説などがあるが、豪族「阿倍氏」説が今のところ有力である[4]。
区名については、1943年分区前までの住吉区役所は現在の阿倍野区内にあったことから、当初の案では分離前の「住吉区」の区名を継承することが検討されていた(現在の住吉区は、当初案では「住之江区」が提示された)。しかし住吉大社周辺の住民の反対によってこの案は撤回され、「住吉区」の名称は現在の住吉区が継承し、当区は阿倍野区の名称となった。
この際、新区名の漢字表記を「阿倍野」にするか「阿部野」にするかの論議が起きた。当時「阿倍野」「阿部野」の両表記ともに広く使用されていたが、1925年に大阪市に編入された際、東成郡天王寺村大字「阿部野」から大阪市住吉区「阿倍野」町へ表記が変更されていたこともあって、区役所の土地台帳や戸籍原簿などに「阿倍野」が使われていたため「阿倍野」の表記を採用した[4]。
なお1925年に大阪市に編入された際に設置された第一次住吉区は、第一次案での区名候補は「阿倍野区」だったが、住吉区の名称が採用されている。
産業
商業
-
-
近鉄百貨店阿倍野本店(旧:西本館)2007年5月撮影。この建物は、あべのハルカス(タワー館)に建てかえられたため、現存しない。
-
日本を代表する大企業の一つである
シャープ旧本社ビル(長池町)。この建物は、ニトリに売却された後、解体されたため、現存しない。
主な商業施設
阿倍野区に本社を置く企業
阿倍野区に本社を置いていた企業
地域
大阪市立大学医学部キャンパス・大阪市立医学部附属病院
大阪市立工芸高等学校本館(大阪市指定文化財)
桃山学院中学校・高等学校
シティタワーグラン天王寺
教育
大学・短期大学
専修学校
高等学校
中学校
小学校
集合住宅
超高層マンション
大規模マンション
住宅団地
- 都市再生機構アーベイン天王寺
- 都市再生機構サンヴァリエ西田辺(西田辺団地(公団)を建て替えた住宅団地)
- 都市再生機構サンヴァリエあべの阪南(阪南団地を建て替えた住宅団地)
- 大阪府住宅供給公社西田辺団地
- 大阪市住宅供給公社コーシャハイツ阿倍野筋
- 大阪市住宅供給公社コーシャハイツ相生
- 大阪市住宅供給公社コーシャハイツ共立
- 市営阿倍野住宅
- 市営北畠住宅
- 市営三明住宅
- 市営高松住宅
- 市営帝塚山住宅
- 文の里社宅
- 住装社宅
- かつて存在した住宅団地
- 都市基盤整備公団西田辺団地(建て替えられて「サンヴァリエ西田辺」となった)
- 都市再生機構阪南団地(建て替えられて「サンヴァリエあべの阪南」となった)
- 帝塚山住宅団地(日本住宅公団分譲の団地で日本唯一全てスターハウスという独特の団地だったが、建て替えられマンションになった)
斎場
交通
鉄道路線
- 近畿日本鉄道
- F 近鉄南大阪線:大阪阿部野橋駅 - 河堀口駅
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)
阪和線:美章園駅 - 南田辺駅 - 鶴ケ丘駅
- 大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro)
御堂筋線:天王寺駅 - 昭和町駅 - 西田辺駅
谷町線:阿倍野駅 - 文の里駅
- 阪堺電気軌道
- ■ 上町線:天王寺駅前駅 - 阿倍野駅 - 松虫停留場 - 東天下茶屋停留場 - 北畠停留場 - 姫松停留場
- 南海高野線も阿倍野区の南西部を通るが、区内に駅は設置されていない。
バス
区内ではあべの橋を拠点とする。あべの橋からは高速路線(近鉄バスなど)も発着する。
道路
名所・旧跡・文化・観光施設
出身有名人
五十音順
学問
実業
文化・芸能
スポーツ
政治
阿倍野区ゆかりの有名人
脚注
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
阿倍野区に関連するカテゴリがあります。
外部リンク