初鹿野裕樹
初鹿野 裕樹(はじかの ひろき、1977年〈昭和52年〉7月6日 - [1])は、日本の政治家。参政党所属の参議院議員(1期)。元警視庁警察官(最終階級:警部補[2])。 経歴1977年、神奈川県横須賀市に生まれる。小学2年生から柔道を始め、高校で全国大会に出場し、東海大学体育学部に柔道推薦で進学[3]。大学では全国大会(団体)で優勝した[3]。2000年から2022年まで警視庁に勤務し、警視庁柔道部に所属。選手としての活動を終えた後は、柔道、逮捕術、拳銃の指導にあたった[4][5]。 2023年、葉山町議会議員選に無所属で立候補し、落選した[6][3]。 参政党時代2024年、第50回衆議院議員総選挙に神奈川11区から参政党公認で立候補したが、落選した[7]。参政党を選んだ理由については、少年時代から日本の歴史に強い関心があり、同党の伝統文化を重視する理念に共感したためだとしている[4]。 2025年、第27回参議院議員通常選挙に神奈川県選挙区から参政党公認で立候補し、党の急速な支持拡大を背景に初当選した[8]。4議席目をめぐり公明党現職の佐々木さやかと激しく競り合い、21日午前4時過ぎに当選確実と報じられた[9][3]。最終的な票差は約5千票だった[10]。 人物論争南京事件否定発言2025年6月18日、Xで「捏造された南京事件」「南京大虐殺が本当にあったと信じている人がまだいるのかと思うと残念でならない」とポストした。都留文科大学名誉教授の笠原十九司は「推定される被害者数に幅はあるが、虐殺があったこと自体は、学問的には当たり前の定説で、とっくに片が付いている。日本政府も公式に認めている」と批判した[12]。 「共産党員による殺害」発言2025年7月、第27回参議院議員通常選挙期間中、Xで「たくさんの仲間が共産党員により殺害され、殺害方法も残虐であり、いまだに恐怖心が拭えません」と投稿した。この発言に対し、日本共産党神奈川県委員会は謝罪と撤回を求める抗議文を送付したが、初鹿野から回答がなかったため、県委員会は名誉毀損および公職選挙法違反(虚偽事項公表)で刑事告訴した[13][14]。初鹿野は、白鳥事件などを例に挙げ、「歴史の事実に基づいている。別に何ら臆することはない。(謝罪や撤回は)必要ない」と述べている[15][16]。これに対して共産党神奈川県委員会は、白鳥事件など1950年代に起きた事件に関して、「党が分裂して混乱していた時期の話」であり、その後の共産党が統一される過程において「武装路線は否定されている」と主張、「共産党が沢山の警察官を殺害したという事実はない」と初鹿野の見解を否定している[13]。 「外国人優遇」発言第27回参議院議員通常選挙期間中、「日本人ファースト」をキャッチコピーに掲げ、街頭演説で「外国人は優遇されている」「生活保護は受給権がない外国人ばかり」など、事実に基づかない発言を繰り返した[17][18][19]。こうした発言については複数の報道機関がファクトチェックを行い、厚生労働省の公式データと異なり根拠が不明であると判定された[20][21][22]。また、「中国人留学生に返済義務なしで1,000万円の奨学金が支給され、日本人は借金漬け」とする主張についても[23]、文部科学省は外国人優遇の実態はないと否定しており、発言はミスリードと判定された[24][25][26]。こうした発言に対し、街頭演説では「人間にファーストもセカンドもない」と抗議する市民の声が上がり[21][27]、当落線上で競る他候補に戦略的投票を行う動きも見られた[28][29]。 神奈川新聞は、初鹿野の発言について、デマであり、判例や統計に照らして「ヘイトスピーチ」に該当するとする記事を掲載した[30][31]。これに対し初鹿野は、SNSなどで「偏向報道」と反論し[31]、自身の発言は客観的事実に基づく政治的主張であるとして抗議文をブログに掲載した[32]。自由法曹団神奈川支部は、初鹿野の演説および抗議ブログ中の生活保護優遇などの主張について、根拠のない誤りでありヘイトスピーチに該当するとして抗議声明を発表[33][34]し、発言の撤回と在留外国人への謝罪を求めたが、初鹿野側からの回答はなかった[35]。 神谷宗幣参政党代表も、初鹿野の発言が事実に基づいていないことを認めた上で、次のように述べている。
表現の自由や公職選挙法に詳しい杉山大介弁護士は、初鹿野の発言は、人種差別撤廃条約が定める「国籍や人種などを理由に、差別的な区別・排除・制限・優先を行うこと」に該当し、属性を理由にしたデマによる攻撃は正当化できず、明確なヘイトスピーチにあたると指摘している[37]。 横領疑惑報道同年7月16日、日刊ゲンダイが警視庁時代の初鹿野の横領疑惑と退職理由の真偽に関する報道を行った[31][38]。これに対し参政党は同日、記事の内容は虚偽であるとして記事の削除と謝罪記事の掲載を求めた[39]。同月20日、初鹿野自身も「根も葉もない捏造報道である。やはり日刊現代は廃刊しかないようだ」とXに投稿し、自身の横領疑惑を否定した[40]。 「非国民」発言と神奈川新聞記者の会見からの排除同年7月18日、川崎駅前での街頭演説において、反差別を訴えて集まった市民に対し「ああいうのは非国民ですから」などと発言した[41]。「非国民」という言葉は戦時中に軍や国策に非協力的な人を非難する目的で使われた言葉であり、差別や言論統制につながったことから[42][43]、不適切であるとして批判の声が上がった。また、神谷宗幣参政党代表も「非国民という言葉は私はよくないと思います〔…〕初鹿野さんにお会いしたらしっかりと注意をしたい」と述べ、初鹿野の発言に苦言を呈した[42][43]。この発言について初鹿野は、21日の神奈川新聞の取材に対して「殉職者をばかと言う人は非国民じゃないですか」と答えたが、「殉職者」が何を指すのかは明らかにしなかった[44]。16日には、抗議活動を行う市民に対して「犯罪」であると述べ、支援者に110番通報を呼びかけた[44][45]。また、7月3日の公示第一声では「左翼思想は日本から出ていけばいい」と発言したことも報じられている[25]。 7月22日、参政党は国会内で記者会見を開いたが、初鹿野をめぐる報道を続けていた神奈川新聞の記者の出席を認めず、退出を求めた[42][46][47][48]。参政党は、記者の出席にあたっては事前登録が必要であると説明し、当該記者が登録していなかったことを理由に記者会見から排除しようとしたが、実際は当該記者以外の出席者も事前登録は行っていなかった[42][46]。 同日、神奈川新聞は「知る権利をないがしろにする行為で、容認できない」として党へ抗議文を提出した[49][50]。ジャーナリストの江川紹子は、国政政党が都合の悪い記者を排除する行為は民主主義に反し、報道機関が萎縮すればジャーナリズム全体に悪影響を及ぼすため、メディア全体で抗議すべきだと指摘した[51]。立教大学の砂川浩慶教授は、参政党がPRと報道を混同し、批判を排して説明責任を果たさない姿勢は民主主義に反すると指摘。記者の排除は有権者の排除に等しく、メディアも当事者として誤りを正さなければ、SNS上のPRが世論を支配すると警鐘を鳴らした[52]。 選挙歴
脚注
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