月の満ち欠け (小説)
『月の満ち欠け』(つきのみちかけ)は、佐藤正午の長編小説[1]。生まれ変わりを題材に、時空を超えた男女の究極の愛を描く[2]。 概要2017年4月5日に岩波書店から単行本が刊行され[4]、同年7月19日に第157回直木三十五賞の受賞作品に選ばれた[5]。その後、2019年10月4日に岩波文庫をイメージした装丁による「岩波文庫的」より、文庫本が刊行された[6](厳密には「文庫サイズの単行本」であり、岩波文庫や岩波現代文庫の目録には収録されない[7])。これは、佐藤が「(直木賞を)受賞したら岩波文庫に入れてほしい」などと冗談半分で話していたが、古典的作品が中心である岩波文庫に収めるには時期尚早という理由により、「岩波文庫的」となった。実際の岩波文庫とは、現代日本文学は「緑」であるカバーの背の色が月の光を意識した「金色」であったり、表紙の左下のマークが「月の満ち欠け」が模様されているとの違いがある。岩波書店がパロディーを行うのは珍しいため、担当編集者は「岩波としてもこの種の試みは初めて」と話した[1]。特別寄稿は伊坂幸太郎[8]。 2022年9月時点で、累計発行部数は56万部を超える[9]。 あらすじ東京のサラリーマンである小山内堅は妻と娘の瑠璃と共に円満に暮らしていた。瑠璃は7才の時に原因不明の高熱を出した以外は健康体だったが、熱が引いた後に一人で電車に乗って高田馬場に行ったり、小学生らしからぬ行動力を示したことがあった。 18才の高校生になった瑠璃は突然、母親の梢と共に自動車事故で亡くなった。ショックを受けた堅は会社を退職して故郷の八戸に戻り、高齢の母親を世話しながら暮らし始めた。その頃に、堅を訪ねて来る三角哲彦という40才近い男。娘の瑠璃は事故にあった日に、自分に会いに来ようとしていたと話す哲彦。 大学生だった頃に哲彦は、正木瑠璃という20代の女性と恋に落ちた。だが、瑠璃は実は人妻で、夫の正木竜之介は身勝手なDV夫だった。夫から逃げようと荷物をまとめて家を出たが、事故死する瑠璃。哲彦は、堅の娘の瑠璃は、死んだ自分の恋人の生まれ変わりだと説明した。7才の頃に瑠璃が高田馬場に行ったのは哲彦を探していたのだ。とても信じられずに哲彦を追い返す堅。 瑠璃の高校時代の親友だった緑坂ゆいに呼び出される堅。ホテルのラウンジで待つ“ゆい”は7才の娘のるりを連れていた。「ここのどら焼、好きだよね」と初対面の堅に微笑みかけるるり。“ゆい”の娘もまた生まれ変わりだったのだ。娘から事情を聞いている“ゆい”は、堅が仕事で関係していた正木こそ、哲彦の恋人だった正木瑠璃の夫だと話した。 妻の死後に落ちぶれ、堅の関連会社で再起を図っていた正木は、堅の娘の瑠璃が自分の妻の生まれ変わりだと気づいて付きまとった。正木が哲彦にまで害を及ぼすことを案じた瑠璃は、母の梢に頼んで車で哲彦に会いに行こうとしたが、正木に車で追跡され、それを振り切ろうとして交通事故を起こしたのだった。 ゆい母子の言葉が信じられずに、体調の悪化した母親の待つ八戸へ戻ろうとする堅。そんな堅を抱きしめて「生まれ変わりは私だけじゃない」と囁き、哲彦に会いに行く瑠璃。八戸へ戻り、母親のヘルパーである清美とその娘の“みずき”に出迎えられる堅。母の元へ向かう車中で、堅が東京のホテルからの帰りだと聞いた“みずき”は、「どら焼の美味しい所?」と、亡き妻の梢と同じ仕草をして見せた。 登場人物
書誌情報
映画
2022年12月2日に公開[11][12]。『第46回日本アカデミー賞』優秀作品賞受賞作品[13]。監督は廣木隆一、主演は大泉洋[11]で、大泉と廣木は初タッグとなった[14]。撮影は2021年11月 - 12月に行われた[14]。全体的にストーリーが原作よりも短縮されており、原作で3番目の生まれ変わりの「瑠璃」だった小沼希美が登場せず、それに伴って正木竜之介の設定が原作とは変わっている。 あらすじ(映画)仕事も家庭も順調だった小山内堅の日常は、愛する妻・梢と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で失ったことで一変する。深い悲しみに沈む堅のもとに三角哲彦と名乗る男が訪ねてくる。事故に遭った日、堅の娘が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛していた「瑠璃」という女性の生まれ変わりなのではないか、と告げる[15]。 キャスト
スタッフ
受賞歴
脚注
外部リンク
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