第35回東京国際映画祭
第35回東京国際映画祭(だい35かいとうきょうこくさいえいがさい、35th Tokyo International Film Festival)は、2022年(令和4年)10月24日(月)から11月2日(水)までの10日間に渡り東京都内で開催された35回目の東京国際映画祭[1][2]。アメリカの舞台演出家・映画監督であるジュリー・テイモアがコンペティション部門の審査委員長を務めた[3]。 概要今回は前回からメイン会場を日比谷・銀座・有楽町エリアに移転し、プログラマーを市山尚三に交代したことによる部門改変を継承しつつ、「上映会場の拡大」、「上映本数の拡大」、「海外ゲスト招へいの拡大」という目的を踏まえ、「飛躍」というコンセプトを掲げて映画祭が行われた[1][4]。上映会場は前回から引き続き、日比谷・銀座・有楽町エリアをメイン会場とし、複数の劇場[注釈 2]を使用して実施した[4]。 開催期間は10月24日(月)から11月2日(水)の10日間開催され、開催期間が10日間なのは前回から変わらないが、初日が月曜日、最終日が水曜日は今回が初めてである。初日に行われるオープニングセレモニーは今回が初めてとなる東京宝塚劇場、クロージングセレモニーは前回のオープニングセレモニー会場である東京国際フォーラムのホールCにて行われた[4]。また、屋外上映のイベントなどでは東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場にて開催された。オープニング作品は瀬々敬久監督、二宮和也主演の『ラーゲリより愛を込めて』、クロージング作品は黒澤明監督の『生きる』を第二次世界大戦後のイギリスを舞台にカズオ・イシグロが脚本を手がけ、オリヴァー・ハーマナス監督、ビル・ナイ主演でリメイクした『生きる LIVING』が上映された[5]。映画祭期間中に上映される作品は合計で169本で、動員数は5万9541人で前年比202.4%となった[6][7]。 また、今回は黒澤明賞が14年ぶりに復活し、山田洋次、仲代達矢、原田美枝子、川本三郎、市山尚三の5名の選考委員による選考の結果、長編映画監督デビュー作「アモーレス・ペロス」が第13回東京国際映画祭でグランプリを受賞し、第22回東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員長を務め、今回も「バルド、偽りの記録と一握りの真実」がガラ・セレクション部門に出品された映画監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと「淵に立つ」が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞するなど芸術性の高い野心作に挑み続けると同時に、コロナ禍の影響で経営危機に陥る劇場支援のためのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げるなど、若手映画監督としての枠を超えた活動を展開し、新作の「LOVE LIFE」が第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映された映画監督の深田晃司が受賞し、開催期間中の10月29日に帝国ホテルにて授賞式が開催され、それぞれに授与した[8][9][10]。また、黒澤明監督の『羅生門』にスクリプターとして参加し、その後、「生きる」以降の黒澤明監督の映画すべてにおいて記録・編集・制作助手として参加した野上照代が黒澤明賞が復活した今回、長年に渡る国内外を含めた映画界への貢献を評価して、特別功労賞を受賞し、11月2日のクロージングセレモニーで授与した[6][11]。 経緯
上映作品ワールド・プレミアは世界初上映、インターナショナル・プレミアは製作国以外で初上映、アジアン・プレミアはアジアにて初上映、ジャパン・プレミアは日本初上映、*は長編監督デビュー作となったことを意味する。 コンペティション2022年1月以降に完成した長編映画を対象に、107の国と地域から1,695本の応募作品[注釈 3]の中から、選出された15本の作品を上映し、国際的な映画人で構成される審査委員のもと、クロージングセレモニーで各賞が決定される[20][31][32]。
アジアの未来長編3本目までのアジアの新鋭監督の作品を世界に先駆けて上映するアジア・コンペティション部門。すべてワールド・プレミア上映の10作品を上映し、最優秀作品には「アジアの未来 作品賞」を決定する[31][33]。
ガラ・セレクション今年の世界の国際映画祭で話題になった作品、国際的に知られる巨匠の最新作、本国で大ヒットした娯楽映画など、日本公開前の最新作を14本プレミア上映する[31][34]。なお、本項目では10本に加えて、オープニング作品とクロージング作品を明記する[35]。
ワールド・フォーカス世界の国際映画祭で注目された話題作、日本での公開がまだ決まっていない最新の作品などを上映する[31][36]。また、戦時下のウクライナの現状を描いたドキュメンタリー作品『フリーダム・オン・ファイヤー』が急遽この部門の特別上映として上映される[37]。
第19回ラテンビート映画祭 IN TIFF第32回から4年連続となる「ラテンビート映画祭」とのコラボレーションで、スペインや中南米の秀作も上映する[31][36]。
ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集監督デビュー作『青春神話』の製作30周年を記念して台湾の巨匠ツァイ・ミンリャン監督の特集を台北駐日経済文化代表処台湾文化センターおよび東京フィルメックス[注釈 4]との初の共催で上映する[16][17][31][36]。
Nippon Cinema Nowこの1年の日本映画を対象に、特に海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映する部門[31][39]。
監督特集 <追悼 青山真治>今年3月に急逝した青山真治監督を追悼し、代表作2作品を英語字幕付きで上映し、国立映画アーカイブとの共催で2本の初期作を上映する特集上映[16][17][31][39]。
ジャパニーズ・アニメーション部門のキーワードとして「ゼロから世界を創る」を掲げ、最新のアニメに加えて、回顧上映、関係者・識者によるシンポジウムを行う[31][40]。 アニメーションで世界を創る最新アニメ映画3作品をピックアップした特集上映[16][17][31][40]。
アニメと東京レトロスペクティブではアニメが「東京」という世界をいかに描いたかに注目し、「アニメと東京」というタイトルで4作品をピックアップした特集上映[16][17][31][40]。
「ウルトラセブン」55周年記念上映特撮部門では放送55周年を迎える『ウルトラセブン』を4Kリマスターされた映像を上映する特集上映[16][17][31][40]。
アニメ・シンポジウム
ユース少年少女に映画の素晴らしさを体験してもらう部門で、「TIFFティーンズ映画教室」は早川千絵監督を特別講師に招き、中学生たちが限られた時間の中で映画を作り、その成果をスクリーンで発表する。「TIFFチルドレン」はサイレント映画の名作を第31回(2018年)より続いている声優としても活躍している弁士の山崎バニラによる大正琴やピアノの弾き語り活弁を行うパフォーマンス付きでお届けし、「TIFFティーンズ」は国際映画祭で評価された作品の中から高校生世代に刺激を受けてもらいたい秀作を上映する[31][41][42]。 TIFFティーンズ
TIFFチルドレン
TIFFシリーズTV放映、インターネット配信などを目的に製作されたシリーズものの秀作を日本国内での公開に先駆け、スクリーンで上映する部門[31][43]。
日本映画クラシックス国立映画アーカイブの特集上映「長谷川和彦とディレクターズ・カンパニー」と連携し、デジタルリマスターされたディレクターズ・カンパニー作品4作品を本部門で上映する[16][17][31][44]。
黒澤明の愛した映画黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出すために世界の映画界に貢献した映画人や映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる黒澤明賞が14年ぶりに復活することに伴い、世界のクロサワが愛した名作7本を上映する特集上映[45]。 共催: CAPCOM
Amazon Prime Video テイクワン賞昨年にひきつづき、Amazon Prime Videoの賛同と協賛のもとに日本映画のさらなる才能の発掘を探るべく、長編映画の上映経験のない日本在住の映画監督の15分以下の短編作品を対象とした賞である。受賞者はPrime Videoからの賞金100万円に加え、Amazonスタジオとの長編映画製作の開発の機会を提供される。厳正な審査の結果選ばれたファイナリストの作品が映画祭で劇場上映され、行定勲監督をはじめとする審査員チームによる審査のもとに最優秀作品をクロージングセレモニーで発表するとともに、今年はファイナリスト作品をPrime VideoのSNSと連携し映画祭前に配信する試みが行われた[46][47][48][49]。
屋外上映会2022公開から1年も経てない新作を含む本のさまざまなジャンルの映画をラインナップし、日比谷ステップ広場の大型ビジョンで連日上映した[50][51]。 共催: 東京都 協賛: 東京ミッドタウンマネジメント株式会社 / 一般社団法人日比谷エリアマネジメント
イベント国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ国際交流基金との共催プログラムの一環として、前回から名称を改め、是枝裕和監督を中心とする検討会議メンバーの企画のもと、東京に集う映画人が交流する場を用意し、彼らが語り合うトークセッション[52][53][54]。 共催: 国際交流基金 「交流ラウンジ」検討会議メンバー
TIFFスペシャルトークセッション映画祭開催期間中には様々なトークイベントも行われ、芸術文化を通じて福島県浜通り地域に新たな魅力を創出する経済産業省の取り組み「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」が目指す、福島発信の映画制作についてのトークセッション[55]、ケリングが2015年よりカンヌ国際映画祭の公式プログラムとしてスタートした「ウーマン・イン・モーション」のトークイベントを是枝裕和監督と女優の松岡茉優を迎え、変化しつつある世界や日本の映画界などについて語り合うイベント[56]、三菱地所株式会社の主催のもと、川村元気が種田陽平、石川慶と映画美術と街づくりをテーマにそれぞれスクリーンの中に街をつくること、映画の中の風景を描くことなどを語り合うトークと日本映画は日本人にしか愛されないのか?をテーマに日本映画がより多くの国々で観られるために語り合うトークイベント[57]、大和ハウス工業のテレビCM「ダイワマン SEASON 2」に出演する西島秀俊と津田寛治、クリエーティブディレクターの多田琢による「映像の魅力とはなにか‼」をテーマに繰り広げられるトークイベント[58]、山本晃久を迎えて、これまでの仕事について、また、これから期待されるプロデューサー像などについて伺うイベント[54]、東京国際映画祭公式出品作品の監督・プロデューサーが世界から集い共同製作の動向について語り合うイベント、日本映画監督協会と提携し、映画業界の改善するべき問題を語り、持続可能な若手映画人の参入に向けて、問題の共有と更なる連帯を呼びかけるシンポジウム[59]、「忍風戦隊ハリケンジャー」と「爆竜戦隊アバレンジャー」の出演者を迎えたスーパー戦隊のスペシャルトークショー[60]、笠井信輔が新作映画の予告編を見て、その面白さ、完成度、期待値を採点するトークショーが行われた。
共催・提携企画審査員
プログラミング・ディレクター ・作品選定コミッティメンバー受賞結果11月2日に東京国際フォーラムで行われたクロージングセレモニーにて各賞が発表された[6][30][64]。
脚注注釈
出典
上映作品
イベントレポート
外部リンク
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