自由民主党税制調査会(じゆうみんしゅとうぜいせいちょうさかい)は、自由民主党における審議機関の一つ。自民党税調、自民税調ともいう。
概説
1956年に税制改革特別委員会として発足、1959年に税制調査会に改名した[1]。
初期は自民税調は「単なる調査会の一つ」に過ぎず、会長ポストも通常の党人事の一環であり、政府税制調査会が税に関する最高意思決定機関であった[2]。1970年代に入り、1971年度税制で道路特定財源のための自動車重量税の創設を、1973年度税制で個人事業主に給与所得控除を実現する事業者報酬制度の創設を自民税調が主導権を握る形で実現して以降、税制が自民税調の主導になっていった[2]。1973年の第一次オイルショックによって高度経済成長が終わると、予算配分が思うようにいかなくなり、業界の要望に応えるために租税特別措置による減税に重心を移す必要が出てくる一方で、税収確保のための増税も避けられないため、税制を調整する自民税調の権威が高まっていった[2]。
1980年代以降はインナーと呼ばれる一部の税調幹部(山中貞則、村山達雄、奥野誠亮、林義郎、相澤英之ら)が実権を掌握し、一部の税調幹部による非公式会議で税制を事実上決定する等して、総裁や党三役すらはばかるほどであった。かつては首相も口出しができない「聖域」と呼ばれた[3]。インナー(内輪)という呼称は大蔵省の官僚が命名したとされる[2]。インナーによる長老支配は「様々な利害関係が存在する税制問題において、うかつに声を出して決定方針を示すと自分の選挙の落選という形で責任を取らされるとして、党内全体で多数決で決定するには及び腰になりやすいが決定せずに先送りにするのも困難な性格の問題であることから、専門知識を持った権威者が裁定するしかない」という理由もあった。1980~2000年代、山中貞則が「税調のドン」として君臨。「首相に(税制改正を)判断する能力はない」として首相が何か口出ししようものなら「おしゃべり野郎」と言い放った[3]。また、1986年に府令で設置が決まっている公式組織である政府税調と方針が対立したとき、記者から「政府税調を軽視しているのではないか」と聞かれた際、「軽視ではない。無視しておる」と発言している[4][5]。2000年から2004年にかけて、これら長老議員の相次ぐ死去・引退によりかつてほどの独立性は薄れていった。また2003年に小泉純一郎総裁の下で自民党税制調査会改革で一部の税調幹部による非公式会議への切り込みを行ったが、すぐに事実上の復活をしたため掛け声倒れに終わったと評された。自民税調では税制改正の審議が始まる前の年末には各業界団体等からの税制に関する要望がまとめられた資料「税制改正要望一覧表[注 1]」が用意され、自民税調幹部の前で各自民党国会議員が要望等の発言をし、税調幹部が査定するのが慣例となっている。
2006年(平成18年)11月、官邸主導の人事により本間正明が政府税調の会長に互選され、会議開催場所も内閣府に移されるなど、財務省、総務省主導の体制に変化が見られた。
なお、2007年(平成19年)参議院議員選挙での民主党大勝などの影響で、民主党や公明党の党内税制調査会も影響力を増してきていた。そして、2009年の鳩山由紀夫内閣誕生後、政府と与党の税制調査会を一元化するため、民主党の税制調査会及び政府税制調査会を廃止し、新たに政治家をメンバーとする政府税制調査会を設置した。ただし2011年の野田内閣では民主党税制調査会が復活した(会長は大蔵省出身で蔵相、財務相を経験した藤井裕久)。自民党の政権復帰に伴い、2013年には有識者会議としての政府税制調査会が復活した。
自民党税制調査会の主な歴代会長には山中貞則、塩川正十郎、相澤英之、津島雄二、野田毅、宮澤洋一、甘利明などがいる。2023年現在の自民党税制調査会の会長は宮澤洋一。
歴代会長
代 |
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会長 |
在任期間 |
備考
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1
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太田正孝
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1959年8月 - 1960年7月
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2
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植木庚子郎
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1960年7月 - 1960年12月
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3
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前尾繁三郎
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1960年12月 - 1961年8月
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4
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愛知揆一
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1961年8月 - 1962年8月
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5
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坊秀男
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1962年8月 - 1963年8月
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6
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小山長規
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1963年8月 - 1964年8月
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7
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坊秀男
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1964年8月 - 1966年9月
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再任
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8
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内田常雄
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1966年9月 - 1967年3月
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9
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桜内義雄
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1967年3月 - 1968年2月
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10
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黒金泰美
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1968年2月 - 1970年1月
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11
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坊秀男
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1970年1月 - 1971年7月
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再任
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12
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小山長規
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1971年7月 - 1972年7月
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再任
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13
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内田常雄
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1972年7月 - 1973年12月
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再任
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14
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植木庚子郎
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1973年12月 - 1974年11月
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再任
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15
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小川平二
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1974年11月 - 1976年11月
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16
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金子一平
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1976年11月 - 1978年12月
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17
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倉成正
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1978年12月 - 1979年11月
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18
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山中貞則
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1979年11月 - 1982年12月
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19
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村山達雄
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1982年12月 - 1983年12月
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20
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加藤六月
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1983年12月 - 1986年8月
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21
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山中貞則
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1986年8月 - 1989年9月
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再任
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22
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三塚博
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1989年9月 - 1989年10月
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23
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西岡武夫
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1989年10月 - 1990年3月
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24
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塩川正十郎
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1990年3月 - 1991年11月
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25
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武藤嘉文
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1991年11月 - 1993年4月
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26
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村山達雄
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1993年4月 - 1996年11月
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再任
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27
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林義郎
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1996年11月 - 2000年7月
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28
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武藤嘉文
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2000年7月 - 2001年5月
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再任
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29
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相澤英之
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2001年5月 - 2003年11月
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30
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津島雄二
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2003年11月 - 2005年11月
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31
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柳澤伯夫
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2005年11月 - 2006年9月
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32
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与謝野馨
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2006年9月 - 2006年11月
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33
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津島雄二
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2006年11月 - 2009年11月
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再任
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34
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野田毅
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2009年11月 - 2015年10月
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35
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宮澤洋一
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2015年10月 - 2019年9月
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36
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甘利明
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2019年9月 - 2021年10月
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37
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宮澤洋一
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2021年10月 -
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再任
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- ※ 太字は大蔵省出身。
脚注
- 注釈
- ^ 2018年までは資料「税制改正要望一覧表」は厚さが6、7センチの分厚い紙の資料であったため、「電話帳」という通称があった。2019年から「税制改正要望一覧表」はタブレット化され、分厚い紙の資料では無くなった。
- 出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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前身: 自由党・日本民主党 |
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保守本流 |
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宏池会(池田派 → 前尾派 → 大平派 → 鈴木派 → 宮澤派) → 木曜研究会(加藤派 → 小里派 → 谷垣派 → 古賀派に合流×) 、※新財政研究会(堀内派 → 丹羽・古賀派) → 宏池政策研究会(古賀派 → 岸田派 → ×)、※大勇会(河野派) → 為公会(麻生派) → 志公会(麻生派)、※有隣会(谷垣グループ → ×)
| |
木曜研究会(佐藤派) → 周山会(佐藤派) → 周山クラブ(保利グループ → 福田派に合流×)、※七日会(田中派) → 政治同友会(田中派) → 木曜クラブ(田中派 → 二階堂派 → ×)、※経世会(竹下(登)派 → 小渕派) → 平成政治研究会(小渕派) → 平成研究会(小渕派 → 橋本派 → 津島派 → 額賀派 → 竹下(亘)派 → 茂木派)、※改革フォーラム21(羽田・小沢派 → 新生党に合流×)
| | | |
白政会(大野派) → 睦政会(大野派) → 一新会(船田派 → ×)、※一陽会(村上派) → 巽会(水田派 → ×)
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保守傍流 |
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十日会(岸派 → ×)、※党風刷新懇話会 → 党風刷新連盟 → 紀尾井会(福田派) → 八日会(福田派) → 清和会(福田派 → 安倍(晋太郎)派 → 三塚派) → 21世紀を考える会・新政策研究会(三塚派 → 森派) → 清和政策研究会(森派 → 町村派 → 細田派 → 安倍(晋三)派 → ×)、※政眞会(加藤派 → 新生党に合流×)、※愛正会(藤山派 → 水田派に合流×)、※(南条・平井派 → 福田派に合流×)、※交友クラブ(川島派 → 椎名派 → ×)、※(亀井グループ → 村上・亀井派に合流×)
| |
春秋会(河野派 → 森派 → 園田派 → 福田派に合流×)、※新政同志会(中曽根派) → 政策科学研究所(中曽根派 → 渡辺派 → 旧渡辺派 → 村上派 → 村上・亀井派に合流×) → 志帥会(村上・亀井派 → 江藤・亀井派 → 亀井派 → 伊吹派 → 二階派 → ×)、※近未来政治研究会(山崎派 → 石原派 → 森山派 → ×)、※さいこう日本(甘利グループ)、※国益と国民の生活を守る会(平沼グループ → 日本のこころに合流×)
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政策研究会(松村・三木派) → 政策同志会(松村・三木派) → 政策懇談会(松村・三木派 → ) → 政策懇談会(三木派) → 新政策研究会(河本派) → 番町政策研究所(河本派 → 高村派 → 大島派 → 山東派 → 麻生派に合流×)、※(松村派 → ×)、※(早川派 → 福田派に合流×)
| |
火曜会(石橋派)、二日会(石田派 → 三木派に合流×)
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青嵐会 |
青嵐会、自由革新同友会(中川グループ → 石原グループ → 福田派に合流×)
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保守新党 |
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83会 |
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水月会 |
さわらび会(石破グループ) → 水月会(石破派 → 石破グループ)
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無派閥 |
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※は派閥離脱、太字は現在への系譜、括弧内矢印は派閥継承。 |
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カテゴリ |