高校生映画コンクール高校生映画コンクール(こうこうせいえいがコンクール)とは全国の高校生を対象とした自主制作映像作品のコンクールである。対外的な表記では「映画甲子園」を使っており、現在はこの名称で全国的に認識されている。2006年から2022年度までに17大会が開催された。 概要特定非営利活動法人学校マルチメディアネットワーク支援センター(SMN)が主催した高校生の映画コンクール。 SMNの創立者でプロデューサーの大崎徹哉が2005年に創始した高校生創作音楽コンテスト(音楽甲子園)の開催に刺激を受けた奈良県の高校映画部に所属する生徒から「放送のコンクールはあるのに映画のコンクールはなく、文化祭で発表するしか目標がない。映画甲子園を開催してほしい。」という手紙をもらったことを契機に、下北沢トリウッド、ポレポレ東中野の支配人で学生映画の作品や無名の新人監督に発表の機会を与え、新海誠など多くの新人監督を発掘した大槻貴宏を飛び込みで訪問して映画甲子園の構想を相談し、協力を得て2006年、経済産業省、文化庁の後援、一般社団法人日本映画製作者連盟、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)の協力、中央出版株式会社の特別協賛を受けて創設された。 2008年からは早稲田大学が主催者に加わった。 表彰式開催日・会場
※表彰式当日には最終審査も行っている。 映画甲子園2006(第1回)第1回大会には78作品の出展があったが、その背景には募集の段階からマスコミから注目を集め、4大紙と各地方紙などに紹介記事が掲載された他、地方テレビ局、FM・AMラジオ局等に取り上げられるなど、本大会に対する社会的な関心の高さがあった。出展作品は全てDVカメラ撮影、PCを使ったデジタル編集により制作されており、学校現場における映像制作のデジタル化が深く浸透していることをうかがわせる結果となった。技術的な観点からは、特に編集技術の稚拙さが目立つ作品が多く見られ、指導教諭の間からはこの分野での指導者不足を懸念する声が聞かれただけでなく、本大会に併せて技術指導など全体のレベルを底上げする場を設けることを求める意見も聞かれ、早稲田大学との連携につながった。表彰式にはNHK及びTBSの取材が入り、NHKの首都圏ネットワークとTBS系『筑紫哲也 NEWS23』で特集報道された。 第1回大会からは、優秀作品賞等を受賞した『ウィッシュ バニッシュ ラビッシュ』と規定時間をほんのわずかに超過したために惜しくも選外となったが大槻貴宏が激賞し、後日トリウッドでロングラン上映されてジェネオンエンタテインメントから販売もされた『虹色★ロケット』の2作を監督した伊藤峻太(千葉県立幕張総合高等学校)と撮影賞と編集賞を受賞した『パンプキンラブ』を監督した森岡龍(成蹊高等学校)が巣立っている。 この大会は審査員に寺脇研、宮台真司、戸梶圭太、志摩敏樹らを迎えて、夏に開催された。 主な贈賞結果
他にも『勝負っ!』(早稲田大学高等学院)、『魔神裁判』(法政大学第二高等学校)、『SCHERZO 〜風のいたずら〜』(東京都立小石川高等学校)、『SWitCH』(大分県立大分舞鶴高等学校)、『チャレンジ角野』(東京都立竹早高等学校)など、全部で78もの作品が出展された。 映画甲子園2007(第2回)第2回大会は、2007年3月12日から9月30日にかけて募集され、審査員として滝田洋二郎、奥田誠治、掛須秀一、朝川朋之らを迎えて開催。前回を上回る112作品が43都道府県107の高校から出展され、「全国大会」と呼ぶに相応しい規模の大会となった。その後一次審査通過作品として32作品が残り同年11月23日に有楽町のイマジンスタジオでの表彰式に前後して11月17、24、25日にイマジンスタジオ、秋葉原Akiba 3D Theaterの2会場で一次審査通過全作品とプレミア上映招待各作品の上映会を実施した。またこの大会から、「佳作」「男子助演賞」「女子助演賞」「奨励賞」が新設された。 前回大会がマスコミの注目を集め、様々なメディアを通じて報道されたために本大会の認知が拡大したことと前回大会で多くの指導教員から要望のあった大会開催時期を秋にずらしたことで夏休みを制作期間に当てることが可能になったために、高校生が本大会を目標にした部活動の年間スケジュールを組むようになったことが挙げられる。 今大会において特筆すべきは、前回大会の反省から審査体制を見直し、①映画を構成する各要素を専門的な視点から審査できること ②現役で活躍し、高校生も知っている作品の制作に関わっていること ③自らも自主制作映画の経験を有し、教育的観点から高校生にアドバイスができることなどを要件に審査員の選定に当った結果、監督部門では大会の翌年2008年に公開された『おくりびと』で2009年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞・最優秀監督賞を受賞し、第81回アカデミー賞では日本映画初の外国語映画賞を受賞した日本を代表する映画監督の滝田洋二郎、企画部門では『ALWAYS 三丁目の夕日』や数多くのジブリ作品をプロデュースした映画プロデューサーの奥田誠治など当代一流の映画人の方々が審査を担当した。 この大会には@niftyとニッポン放送が特別参加し、@niftyは映画甲子園応募者全員に「ココログ」でのブログサービスの提供や@nifty動画共有での予告編の配信を行った。ニッポン放送はイベントに連携して「映画甲子園への道」のラジオ放送とウェブコンテンツ配信を行ったほか、表彰式と作品上映会場として有楽町のイマジンスタジオを提供した。表彰式後にはレセプションが行われ、出展者間の交流も図れ、高校生の映画の祭典に相応しい大会となり、参加者からは、多くの喜びの声が聞かれた。第2回大会からは一次審査を通過した全作品を「入選」とし、また一次審査を通過しなかった作品にも審査員から評価を受けると「佳作入選作品」として賞状が授与されるようになった。 第2回大会からは、最優秀作品賞を受賞したほか、企画賞、撮影賞、美術賞、編集賞など数多くの賞を受賞し、審査員をうならせた『ワッショイ!』を監督した奥山由之(慶應義塾高等学校)が巣立っている。 おもな贈賞結果(抜粋)
最多獲得は『ワッショイ!』(慶應義塾高等学校。最優秀賞、部門賞4、特別賞1の計6冠。ほか部門ノミネート3) 映画甲子園2008(第3回)第3回大会は192作品が出展された。その背景としては大会共催者に早稲田大学を迎えたために、高校生にとって本大会がより身近な存在になったことが挙げられる。 今大会において特筆すべきは、監督部門:滝田洋二郎、企画部門:奥田誠治、撮影部門:芦澤明子、美術部門:稲垣尚夫、編集部門:掛須秀一、音楽部門:中村暢之など当代一流の映画人が特別講師となり早稲田大学西早稲田キャンパスの教室を使って「セミナー」を実施したことが挙げられる。この試みは高校生映画の一層のレベルアップに直結するものとなった。 また大会後の2009年3月(春休み)にVIPOが実施した「学生のための映像セミナー09」には2年生が制作し入選した作品の中から5校5作品の制作者各3名、計15名が選抜され参加した。作品名、学校名、代表者名は以下のとおり。 『試験管ベイビー』大阪国際大和田高等学校(二宮健)『机』埼玉県立松山高等学校(名田悠亮)『宇宙大怪獣ハジラ』大阪市立工芸高等学校(石井那王貴)『3ミリじょーぎ』早稲田大学高等学院(五十嵐浩之)『第三の眼』慶應義塾高等学校(田中博巳) 以上の他、SMN推薦として『冷やしちゅう、か?』を制作した東京女学館高等学校の高杉麻子が単独で参加した。 さらに本大会後には「映画甲子園スカラシップ」として、最優秀作品賞を受賞した慶應義塾高等学校・Tetra Film Studioに特別協賛社の中央出版株式会社から映画制作費が授与され、映画監督の佐野智樹、ポストプロデューサーの掛須秀一の実技指導を受けて日本クラウンabsorbの楽曲『桜ノ雨』とタイアップした同名映画をオリジナル脚本:白濱一樹、監督:田中博巳(いずれも慶應義塾高等学校)で制作した。 第3回大会からは、『充電池人間』(第2回大会奨励賞)『東京タワーと妖怪少年トチオ』(第3回HLS SPORTS賞)を制作した内田清輝が巣立った。 おもな贈賞結果(抜粋)
<部門賞> ● 監督賞 「試験管ベイビー」 学校名:大阪国際大和田高等学校 映画研究部 ● 男子演技賞 「試験管ベイビー」 学校名:大阪国際大和田高等学校 映画研究部 ● 女子演技賞 「REST」 学校名:埼玉県立芸術総合高等学校 映像芸術科 ● 男子助演賞 「試験管ベイビー」 学校名:大阪国際大和田高等学校 映画研究部 *コンクール初の二人が複数受賞。 ● 女子助演賞「REST」 学校名:埼玉県立芸術総合高等学校 映像芸術科 ● 脚本賞 「紙袋」 学校名:共立女子高等学校 チーム爽快感 ● 編集賞 「Love Story²」 学校名:埼玉県立芸術総合高等学校 映像芸術科 ● 音楽賞 「憧憬」 学校名:慶應義塾志木高等学校 空まにあ ● 美術賞 「第三の眼 - the third eye -」 学校名:慶應義塾高等学校 TETRA FILM STUDIO ● 撮影賞 「せみ」 学校名:埼玉県立新座総合技術高等学校 映像技術研究部 ● 企画賞 「Love Story²」 学校名:埼玉県立芸術総合高等学校 映像芸術科 映画甲子園2009(第4回)第4回大会には前回大会の192作品を上回る221作品が出展され、過去最大の大会となった。その背景としては、前回大会の終了後に参加校に対してだけでなく、全国の高校で映画を制作しているクラブ等に対しSMNが年10回発行していた機関誌『Ss’(エスィーズ)』(国会図書館から購入依頼を受け、発行全巻を寄贈)を通じて「映画甲子園」の詳細をレポートしたことと大会HP上で過去作品や審査員へのインタビュー動画を配信したことなどが挙げられる。 今大会において特筆すべきは、これまでの映画研究部や自主制作団体中心の参加に加え、放送部・放送委員会の参加が増加した点である(前回8校に対し今回15校)。これは映画甲子園が「本格的な映画・映像作品の大会」であるという認知が広まったことと「環境」をテーマとしたショートムービー部門(3分以内の映像作品を対象)が放送部・放送委員会の活動に合致したためと考えられる。 第4回大会からは、前述のVIPOの映像セミナーに参加した二宮健(大阪国際大和田高等学校)、石井那王貴(大阪市立工芸高等学校)、田中博巳(慶應義塾高等学校)、高杉麻子(東京女学館高等学校)が巣立った。 関連項目外部リンク |
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