2013年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月1日に開幕した。アメリカンリーグの第44回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 44th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、12日から19日にかけて計6試合が開催された。その結果、ボストン・レッドソックス(東地区)がデトロイト・タイガース(中地区)を4勝2敗で下し、6年ぶり13回目のリーグ優勝および12回目のワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのはこれが初めて。今シリーズの第2戦ではレッドソックスが、8回裏にデビッド・オルティーズの満塁本塁打で同点に追いつき、9回裏にジャロッド・サルタラマッキアの適時打でサヨナラ勝利を収めた。満塁本塁打はポストシーズン史上55本目だが、このうち4点ビハインドを同点に追いつくものは9年ぶり史上3本目である[注 1][3]。オルティーズの一打のあと、9回表は上原浩治がタイガース打線を三者凡退に封じ、結果的にこの試合の勝利投手となった。今シリーズで上原はこの試合も含め、5試合6.0イニングに登板して1勝0敗3セーブ・防御率0.00を記録、シリーズMVPに選出された。日本人選手の同賞受賞は初めてである[4]。このあとレッドソックスは、ワールドシリーズでもナショナルリーグ王者セントルイス・カージナルスを4勝2敗で下し、6年ぶり8度目の優勝を成し遂げた。
両チームの2013年
10月8日にまずレッドソックス(東地区優勝)が、そして10日にはタイガース(中地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
レッドソックスは69勝93敗で地区最下位に沈んだ2012年シーズン終了後、監督のボビー・バレンタインを解任して後任にジョン・ファレルを招聘した。補強では大物FA選手との長期契約に背を向け、外野手のシェーン・ビクトリーノや内野手のマイク・ナポリら、年齢や体調に不安がある選手を3年以下の短期契約で獲得した[5]。シーズンが開幕すると、前年から一変して優勝争いを優位に進める。4月を18勝8敗の首位で終え、5月中旬には3位まで後退したものの、同月26日には首位へ戻る。前半戦終了時点では58勝39敗で、2位タンパベイ・レイズに2.5ゲーム差をつけた。7月30日には三角トレードを成立させ、内野手ホセ・イグレシアスを放出する代わりに先発右腕ジェイク・ピービーを獲得した。このトレードが可能になったのも、イグレシアスと同じポジションにFA加入組のスティーブン・ドリューがいたからだった[6]。レイズとは8月24日時点でゲーム差なしだったが、そこから16試合で9.5ゲーム差に突き放し[7]、9月20日に6年ぶりの地区優勝を果たした[8]。平均得点5.27はリーグ最高、防御率3.79はリーグ6位。打線はほとんどのポジションと打順で平均OPS.750超と切れ目がなく、ジョニー・ゴームズやビクトリーノらFA加入組はプレイのみならず雰囲気を盛り上げる面でもチームの躍進に一役買った[7]。上原浩治が抑え投手として活躍したことなども含め、オフのFA補強は総じて成功したといえる[6]。地区シリーズではレイズを3勝1敗で下した[9]。
タイガースは2012年、88勝74敗で地区を制してポストシーズンに進み、リーグ優勝を果たしたがワールドシリーズで敗れた。オフには外野手デルモン・ヤングや抑え投手ホセ・バルベルデが退団したものの、外野手トリー・ハンターの獲得や指名打者ビクター・マルティネスの怪我からの復帰などで総合的には戦力が向上し、同地区他球団と比べても群を抜いていた[10]。しかしシーズン開幕後は、地区首位にいながらも差を広げられない。5月・6月の2か月間では勝ち越しが1だけと停滞し[11]、7月1日にはクリーブランド・インディアンスに抜かれて2位に落ちる。これはすぐに抜き返し、前半戦終了時点では52勝42敗で2位インディアンスに1.5ゲーム差をつけた。7月26日からはインディアンスとの直接対決4連勝を含む12連勝を記録して他球団を突き放す。その間の7月30日には、正遊撃手ジョニー・ペラルタに長期離脱の可能性が浮上したため、三角トレードを成立させてレッドソックスからイグレシアスを獲得した[12]。これ以降はゲーム差を常時5.0以上に保ってシーズンを進め、9月25日に地区3連覇を決めた[13]。平均得点4.91はリーグ2位、防御率3.61はリーグ3位。打線はミゲル・カブレラを中心にマルティネスやオマー・インファンテらが脇を固め、投手陣ではエースのジャスティン・バーランダーに加えてマックス・シャーザーやアニバル・サンチェスも200三振を奪う力投を見せた[11]。地区シリーズではオークランド・アスレチックスを3勝2敗で下した[14]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、レッドソックスがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、タイガースが4勝3敗と勝ち越していた[15]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
地区シリーズのロースターからは、レッドソックスは変更はない[16]。これに対しタイガースは救援投手をひとり入れ替え、右のルーク・プッコーネンに代えて左のフィル・コークを登録した。レギュラーシーズン中に先発登板の経験がある投手のうち、リック・ポーセロとホセ・アルバレスがポストシーズンではリリーフに回っていたため、プッコーネンはロングリリーフ3番手という位置づけとなり、地区シリーズでは登板機会がないまま終わっていた[17]。コークは前腕の屈筋を痛め、この年は防御率5.40・対左打者被打率.299と不振だった[18]。ただレッドソックス主力打者との相性はよく、通算成績ではデビッド・オルティーズを18打数2安打、ジャコビー・エルズベリーを11打数1安打、マイク・ナポリを6打数1安打に封じている[19]。
タイガースの内野手ホセ・イグレシアスは、この年のシーズン途中まではレッドソックスに在籍し、63試合に出場していた。レッドソックスでは先発ローテーションの一角だったクレイ・バックホルツが肩痛で故障者リスト入りし、タイガースでは正遊撃手ジョニー・ペラルタにドーピング騒動("バイオジェネシス・スキャンダル")での出場停止処分が下される可能性があった[12]。7月30日、両球団にシカゴ・ホワイトソックスも交えての三角トレードが成立し、レッドソックスは先発投手ジェイク・ピービーをホワイトソックスから獲得する代わりにイグレシアスをタイガースへ放出した。今シリーズを前に、イグレシアスは「タイガースの一員としてこの場に立つ幸運に恵まれた。ボストンへ戻ってくるのは特別なことで、素晴らしい気分だ」と話した[20]。
試合結果
2013年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月12日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月12日(土) |
第1戦 |
デトロイト・タイガース |
1-0 |
ボストン・レッドソックス |
フェンウェイ・パーク |
|
10月13日(日) |
第2戦 |
デトロイト・タイガース |
5-6x |
ボストン・レッドソックス
|
10月14日(月) |
|
移動日 |
|
10月15日(火) |
第3戦 |
ボストン・レッドソックス |
1-0 |
デトロイト・タイガース |
コメリカ・パーク
|
10月16日(水) |
第4戦 |
ボストン・レッドソックス |
3-7 |
デトロイト・タイガース
|
10月17日(木) |
第5戦 |
ボストン・レッドソックス |
4-3 |
デトロイト・タイガース
|
10月18日(金) |
|
移動日 |
|
10月19日(土) |
第6戦 |
デトロイト・タイガース |
2-5 |
ボストン・レッドソックス |
フェンウェイ・パーク
|
優勝:ボストン・レッドソックス(4勝2敗 / 6年ぶり13度目)
|
第1戦 10月12日
第2戦 10月13日
第3戦 10月15日
第4戦 10月16日
第5戦 10月17日
第6戦 10月19日
脚注
注釈
出典
- ^ "League Championship Series umpires announced / Gerry Davis Will Serve as NLCS Crew Chief; Joe West to Lead ALCS Crew," MLB.com, October 11, 2013. 2021年7月24日閲覧。
- ^ Roger Schlueter, "MLB Notebook: Papi adds to October lore / Slugger moves up all-time list with game-tying slam in Game 2 of ALCS," MLB.com, October 14, 2013. 2021年7月24日閲覧。
- ^ 「オルティス、MVP上原に『最高の男』」 『nikkansports.com』、2013年10月21日。2021年7月24日閲覧。
- ^ Matthew Pouliot, "2013 Preview: Boston Red Sox," NBC Sports, March 26, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ a b Tyler Kepner, "In Bulk Purchase of Free Agents, the Red Sox Go 7 for 7," The New York Times, October 26, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ a b 出野哲也 「全30球団通信簿 ボストン・レッドソックス 切れ目のない打線と団結力でV字回復」 『月刊スラッガー』2013年12月号、日本スポーツ企画出版社、2013年、雑誌15509-12、49頁。
- ^ Associated Press, "Red Sox beat Blue Jays, claim first AL East crown since 2007," ESPN.com, September 20, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ foxsports, "Red Sox beat Rays to reach ALCS," FOX Sports, October 8, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ Aaron Gleeman, "2013 Preview: Detroit Tigers," NBC Sports, March 20, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ a b 出野哲也 「全30球団通信簿 デトロイト・タイガース チーム104年ぶりとなる3年連続ポストシーズン進出」 『月刊スラッガー』2013年12月号、日本スポーツ企画出版社、2013年、雑誌15509-12、55頁。
- ^ a b "Peavy headed to Boston in three-team deal," AP News, July 31, 2013. 2022年5月26日閲覧。
- ^ Associated Press, "Max Scherzer (21-3) quiets Twins as Tigers clinch AL Central again," ESPN.com, September 26, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ John Branch, "Verlander's Mastery Extends Athletics' Misery as Tigers Advance," The New York Times, October 11, 2013. 2023年6月10日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年7月24日閲覧。
- ^ Peter Abraham, "Red Sox, Tigers set rosters for ALCS," Boston.com, October 12, 2013. 2022年5月26日閲覧。
- ^ Jason Beck, "Tigers' ALCS roster set with return of Coke / Left-handed reliever had been out since September due to forearm issue," MLB.com, October 12, 2013. 2022年5月26日閲覧。
- ^ Jason Beck, Alden Gonzalez, T.R. Sullivan and Gregor Chisholm, "Coke added to roster to attack Red Sox lefties," MLB.com, October 11, 2013. 2022年5月26日閲覧。
- ^ foxsports, "Tigers' ALCS roster adds a Coke … and a smile?," FOX Sports, October 11, 2013. 2022年5月26日閲覧。
- ^ Tim Britton, "Jose Iglesias back at Fenway Park for ALCS," The Providence Journal, October 11, 2013. 2022年5月26日閲覧。
外部リンク
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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レッドソックス球団殿堂 | |
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ワールドシリーズ優勝(09回) | |
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ワールドシリーズ敗退(04回) | |
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リーグ優勝(14回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(04回) | |
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ワールドシリーズ敗退(07回) | |
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リーグ優勝(11回) | |
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