ロシア連邦軍参謀本部情報総局 GRU Generalnogo Shtaba
Glavnoje Razvedyvatel'noje UpravlenijeГлавное Разведывательное Управление
GRUの紋章
組織の概要 設立年月日
1918年 管轄
ロシア連邦政府 行政官
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ロシア連邦軍参謀本部情報総局 (ロシアれんぽうぐんさんぼうほんぶじょうほうそうきょく、ロシア語 : Главное разведывательное управление , ラテン文字転写 : Glavnoye Razvedyvatelnoye Upravleniye 、英 : Main Intelligence Directorate of the General Staff )は、ロシア連邦軍 における情報機関 。略してGRU (発音は英語でグルー、ロシア語 の場合はゲーエルウー、ロシア語での略称はГРУ )と呼ばれる。ソ連 時代から存続している組織である。
概要
組織上は、ロシア連邦軍参謀本部 の一部署に過ぎないが、参謀 系統を通した情報の収集のほか、外国に対するスパイ 活動や世論工作、SIGINT 、偵察衛星 や特殊部隊 (スペツナズ および29155部隊 )の運用も管轄しており、旧KGB(ソ連国家保安委員会 )やその後継であるSVR(ロシア対外情報庁 )などと並ぶ強力な情報機関である。第二次世界大戦 前期に大日本帝国 でスパイ活動を行なったリヒャルト・ゾルゲ はGRUの管理下にあった。
GRUの総局長は参謀総長及び国防相に従属し、SVRとは異なり、大統領 に直接報告することはない。GRUの本部庁舎は首都モスクワ の旧ホドゥンキ地区、ホロシェフスコエ通りに位置するガラス張りの9階建ての建物である。GRU職員からはステクリャーシュカ(Стекляшка ;ガラス ビル)と呼ばれているが、一般にはアクワリウム(Аквариум ;水族館 )として知られている。
組織
ロシア連邦軍参謀本部情報総局の現在の紋章
以下の機構はドミトリー・プロホロフ 著の"Империя ГРУ "(GRU帝国、2000年)を参照した。ただし、同書もヴィクトル・スヴォーロフの著書(1970年代の情報)を参考にしている。
2006年4月、参謀総長ユーリー・バルエフスキー 上級大将 は、軍情報機関の改編について表明した。国防省筋によれば、地上軍 ・海軍 ・空軍 の軍種情報局が廃止され、各軍種情報局の機能は参謀本部情報総局に移管される。各軍種には情報局に基づき、大佐を長とする佐官6人から成る情報課が創設される(情報局時代は定数20人未満、局長は中将)。
中央機構
GRU総局長は上級大将で、参謀次長を兼任する。局長は中将 、副局長や課長は少将 。副課長、班長及び副班長は大佐 。一般班員は、先任作戦将校 と作戦将校職から成り、先任作戦将校は大佐 、作戦将校は中佐 。
GRU総局長/参謀次長
GRU指揮所
特別重要エージェント及びイリーガル・グループ
第一副総局長:全情報収集(エージェント諜報)部門を管掌
第1局:西欧 諸国。5課を有し、各課は国ごとの班を有する。
第2局:北米 ・南米 諸国
第3局:アジア 諸国
第4局:アフリカ 及び中東 諸国
第5局:作戦・戦術情報。通常の参謀系統は、この局が管轄する。スペツナズ を管理する特殊情報班が存在する。
第1課:モスクワ
第2課:東西ベルリン
第3課:民族解放運動及びテロ組織
第4課:キューバ
副総局長/第6局長
第6局:電子偵察局。SIGINT 。特殊部隊OSNAZが存在する。
副総局長/情報部長 - 情報の処理・分析部門を管掌
第7局:NATO 担当。6課を有する。
第8局:特別指定国に関する業務
第9局:軍事技術
第10局:軍事経済、軍事生産及び売却、経済保安
第11局:戦略核戦力
第12局:不明(情報戦?)
副総局長/艦隊情報部長:海軍 各艦隊本部の情報局を管掌
副総局長/宇宙偵察局長
支援部署
教育施設としては、軍事外交アカデミー が存在し、スパイや駐在武官 、情報参謀が教育を受ける。スペツナズは、2万5千人・24個大隊 相当が存在する。各国のロシア大使館にはGRUの支局が存在し、駐在武官もGRUの所属である。キューバのルールデスには無線傍受センターが維持されている。
部隊の情報機関
部隊レベルの作戦・戦術情報は、GRU第5局の統制を受ける。
軍管区 レベルでは、以下の主要5科から成る軍管区本部第2局(情報局)が担当する。
第1科:管区配属の軍級その他の部隊の情報科の業務を指導
第2科:管区担当地域のエージェント諜報
第3科:管区の偵察 ・破壊工作部隊の活動を指導
第4科:諜報情報の処理
第5科:電波偵察
軍級レベルでは、5班から成る軍本部第2科(情報科)が担当する。
名称の変遷
GRUは、軍政又は軍令機関の一部署であるため、その名称は目まぐるしく変わっている。
参謀本部総局 第2補給総監課(1917年11月~1918年5月)
最高司令官本営附属革命野戦本部扇動・情報課(1917年11月~1918年3月)
最高軍事会議作戦局情報班(1918年3月~1918年9月)
軍事問題人民委員部作戦課情報班、全ロシア参謀本部作戦局軍事統計課(1918年5月~1918年9月)
ロシア革命 軍事会議本部情報課(1918年9月~10月)
ロシア革命軍事会議野戦本部登録局、ロシア革命軍事会議野戦本部作戦局情報班(1918年11月~1920年)
ロシア革命軍事会議野戦本部作戦局第1課情報班、労農赤軍 本部作戦局情報部隊、労農赤軍本部情報課(1919年~1920年)
労農赤軍情報局(1922年~1924年)
労農赤軍本部第4局(1926年~1934年8月)
労農赤軍情報・統計局(1934年8月~11月)
労農赤軍情報局(1934年11月~1939年5月)
国防人民委員部 第5局(1939年5月~1940年6月)
赤軍参謀本部情報局(1940年6月~1942年2月)
赤軍参謀本部情報総局(1942年2月~9月)
赤軍参謀本部部隊情報局(1942年9月~1943年2月)
赤軍参謀本部情報局、赤軍情報総局(国防人民委員部情報総局)(1943年2月~1945年6月)
赤軍参謀本部情報総局(1945年6月~1946年)
軍参謀本部情報総局(1946年~1947年)
ソ連閣僚会議附属情報委員会(1947年~1949年)
軍参謀本部情報総局(1949年~1950年)
ソビエト軍参謀本部情報総局(1950年~1955年)
ソ連軍参謀本部情報総局(1955年~1991年)
ロシア連邦軍参謀本部情報総局(1991年~)
歴代軍情報部長
報道された対外活動
2020年2月20日、英国 の外務省と米国の国務省 は、2019年10月にジョージア 政府や企業などのWebサイトが改ざんされ、国営放送局のサービスにも支障が出たサイバー攻撃について、ロシア軍の情報機関、参謀本部情報局(GRU)が攻撃に関与したと断定し、ロシアを非難する声明を発表した[ 2] 。
2022年2月18日、米国のニューバーガー 国家安全保障担当副補佐官 (サイバー・先端技術担当)は、2月15日に発生したウクライナ国防省や銀行などを標的とした「DDoS攻撃」と呼ばれるサイバー攻撃について、攻撃に使われたIPアドレスを分析した結果、GRUに結びつく情報を確認したことを明らかにし、そのサイバー攻撃の背後にロシア軍の情報機関当局が関係しているとして、ロシア政府の責任を追及する声明を出した[ 7] 。英外務省も、ロシア軍の情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)がウクライナに対するサイバー攻撃に関与していたことはほぼ確実という認識を示した[ 8] 。2月15日のネット被害は、サーバーに大量のデータを送りつける「DDoS攻撃 」によるもので、ウクライナの国防省と軍のサイトは10時間以上も機能が停止し、銀行でも数時間、オンライン取引が利用できなくなった[ 9] 。
英国MI5 のケン・マッカラム長官は2024年10月8日のロンドンにおける講演で、GRUが「英国や欧州の街中で騒乱を引き起こすという継続的な任務を担っている」と指摘した[ 10] 。
所属したことがある人物
脚注
出典
^ 点検トランプ政権(4)火種「ロシアゲート」『読売新聞 』朝刊2017年5月3日
^ “ジョージアを狙ったサイバー攻撃、ロシア軍の情報機関GRUが関与と米英が断定 ”. ITmedia エンタープライズ (2020年2月21日). 2024年10月12日閲覧。
^ a b “ロシアがサイバー攻撃、東京五輪など標的 英政府発表 ”. AFP通信 (2020年10月20日). 2020年11月7日閲覧。
^ a b “東京五輪の妨害狙い、ロシアがサイバー攻撃 英政府が発表” . BBC NEWS . (2020年10月20日). https://www.bbc.com/japanese/54610569 2020年11月7日閲覧。
^ 日経ビジネス電子版 (2020年10月26日). “東京五輪でサイバー攻撃謀ったロシアに何も言えない日本 ”. 日経ビジネス 電子版 . 2022年12月18日閲覧。
^ 「露情報員 欧州で暗躍?英・毒殺未遂容疑の2人 チェコ爆発でも関与疑い」 『毎日新聞 』朝刊2021年4月26日(国際面)同日閲覧
^ “ロシア軍情報機関、ウクライナへのサイバー攻撃に関与 米英指摘 ”. Reuters (2022年2月18日). 2022年12月18日閲覧。
^ “ロシア軍情報機関、ウクライナへのサイバー攻撃に関与 米英指摘 ”. Reuters (2022年2月18日). 2022年12月18日閲覧。
^ “ウクライナへのサイバー攻撃、ロシア軍情報機関が実行…米英政府が分析 ”. 読売新聞オンライン (2022年2月19日). 2022年12月18日閲覧。
^ 「露中イラン 脅威が増大」英情報機関が危機感『読売新聞』夕刊10月9日3面
関連項目
旧ソ連構成国におけるGRUの後継機関
外部リンク