九州新幹線 (整備新幹線)
九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)は、整備新幹線計画の1つで、九州旅客鉄道(JR九州)の高速鉄道路線(新幹線)およびその列車である。鹿児島ルート(博多 - 鹿児島中央間)と西九州ルート(長崎ルート、博多 - 新鳥栖 - 長崎間)があるが、両ルートとも法令上の名称は単に「九州新幹線」である(建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画を参照)。 全区間を独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道建設公団)が建設し、JR九州がこれを借り受けて運営している。 概要鹿児島ルート→詳細は「九州新幹線」を参照
鹿児島ルートは、博多 - 鹿児島中央間を結ぶ、新幹線規格(フル規格)の路線である。2004年3月13日に新八代 - 鹿児島中央間が開業しており、2011年3月12日には博多までの全線が開業した[新聞 1][新聞 2]。営業上は単に「九州新幹線」として案内されている。 800系を使用した九州新幹線内の「つばめ」「さくら」のほか、新たに導入されたN700系7000・8000番台による「さくら」「みずほ」が山陽新幹線経由で新大阪駅まで乗り入れている[注 1]。 2019年3月16日改正時点では、「みずほ」は新大阪 - 鹿児島中央間を最速3時間41分、新大阪 - 熊本間を最速2時間57分で運転している。博多 - 熊本間は最速32分、博多 - 鹿児島中央間は最速で1時間16分である。 開業以来、東京駅に直通する営業列車が設定されていない[注 2]。東京駅からの列車は博多駅までの運転で九州新幹線には乗り入れない。鹿児島中央駅からの列車は新大阪駅までの運転で東海道新幹線には乗り入れない。
西九州ルート→詳細は「#西九州ルートの沿革」以降の節を、武雄温泉駅 - 長崎駅間の詳細は「西九州新幹線」を参照
西九州ルート(長崎ルート)は、博多 - 長崎間を結ぶ路線である。博多 - 新鳥栖間は鹿児島ルートとの共用が予定されている。 このうち2022年9月23日に武雄温泉 - 長崎間が西九州新幹線として新幹線規格(フル規格)で開業した。武雄温泉以東の区間は2022年時点で整備方式やルートが決定しておらず、暫定方式として博多 - 武雄温泉間(鹿児島本線・長崎本線・佐世保線経由)で運行される在来線特急列車と、武雄温泉駅において同一ホームでの対面乗り換えで新幹線を乗り継ぐリレー方式が採られる[新聞 3]。 2008年に武雄温泉 - 諫早間が新幹線鉄道規格新線(スーパー特急方式)で着工されたが、2012年に諫早 - 長崎間が標準軌新線(フル規格)で着工され、武雄温泉 - 諫早間も標準軌新線で建設する方向となった。また2004年(平成16年)の政府・与党申合わせでは、既存の在来線に直通可能なフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)での運行を予定していたが[国交省 1]、実用化は難航し[新聞 4]、2018年7月19日に導入を正式断念したと与党検討委員会が表明している[1]。
名称について1973年(昭和48年)に新幹線整備計画が発表された時点では「九州新幹線長崎ルート」という名称を用いていたが、2005年(平成17年)10月に沿線自治体である長崎県[長崎 1]と佐賀県[佐賀 1]が独自に「九州新幹線西九州ルート」へと名称を変更した。建設に難色を示す佐賀県への配慮に基づくもので、JR九州も自主的にこれに対応した[JR 1]。建設を行う鉄道建設・運輸施設整備支援機構も2016年の時点で「西九州ルート」表記を用いている[JRTT 1]ほか、政府も「九州新幹線(西九州ルート)」を使用している[国交省 2]。 ニュースサイトの見出しについては、発行元の判断により、複数の表記が見受けられる。公共放送局である日本放送協会(NHK)は新幹線整備計画発表当時の「九州新幹線・長崎ルート」[2][3]、地元紙の長崎新聞や佐賀新聞は「新幹線長崎ルート」という表記を主に採用している[新聞 5][新聞 6]。全国紙やブロック紙では「長崎新幹線[新聞 7][新聞 8][新聞 9][新聞 10]」「長崎ルート[新聞 11]」「九州新幹線[新聞 12]」などの表記が用いられる。 2021年4月28日、JR九州は武雄温泉 - 長崎間の路線名称を「西九州新幹線」に決定したことを発表した[JR 2]。未着手となっている武雄温泉以東の区間はこの発表に含まれていない。 名称・呼称整備計画上の路線名と実際の路線名の関係は下表の通り。
西九州ルートの沿革ルート選定とスーパー特急方式による整備方針九州新幹線のうち福岡市・長崎市の区間は1972年(昭和47年)12月12日、全国新幹線鉄道整備法第4条第1項の規定による『建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画』(昭和47年運輸省告示第466号)により告示された[国交省 3]。その後、1973年(昭和48年)11月13日に東北新幹線(盛岡市・青森市)、北海道新幹線(青森市・札幌市)、北陸新幹線(東京都・大阪市)、九州新幹線(福岡市・鹿児島市)とともに整備計画が決定された。この整備計画において現在の九州新幹線(福岡市・長崎市)は主要な経過地として「佐賀市附近」、その他「九州新幹線(福岡市・鹿児島市)と筑紫平野で分岐するものとし、福岡市・分岐点間は共用する。」とされた[佐賀 2]。1985年(昭和60年)に国鉄は博多 - 長崎間の(早岐経由)ルートを公表した[JRTT 2][佐賀 3]。 1987年(昭和62年)、JR九州は「早岐経由では、全額公的負担で整備しても収支改善効果は現れない」との意見表明を行った[佐賀 3]。その後、1992年(平成4年)2月にJR九州は、長崎本線肥前山口(現・江北) - 諌早間の経営分離を前提に、構造物は新幹線規格で建設するが、軌間は在来線と同じ狭軌で整備する新幹線鉄道規格新線(スーパー特急方式)での収支試算結果を公表した[佐賀 3]。同年6月には短絡ルートの通過地点となる佐賀県嬉野町が「九州新幹線長崎ルート『嬉野温泉駅』設置に関する陳情」を提出した[佐賀 4]。 一方、新幹線の恩恵を受けにくく、長崎本線が並行在来線としてJR九州から経営分離されることを懸念した有明海沿いの鹿島市、江北町、福富町、白石町、有明町、塩田町、嬉野町、太良町が「JR長崎本線経営分離に関する要望書」を提出し[佐賀 5]、長崎本線の肥前山口駅 - 諫早駅を経営分離の対象にしないことを求めた。同年8月には江北町が江北町「九州新幹線長崎ルートの新整備案の早期実現とJR肥前山口駅への停車について」の陳情書を提出し[佐賀 6]、長崎本線・佐世保線の分岐駅である肥前山口駅を停車駅にするよう求めた。 1998年(平成10年)1月21日の政府・与党整備新幹線検討委員会における検討結果において、その他の区間として「(略)及び九州新幹線(長崎ルート)武雄温泉・新大村間については、需要予測や収支採算性の見通し等の基本条件の確認作業を行うに当たって必要となる、駅・ルート公表を速やかに行い、引き続き環境影響評価に着手するとともに、(略)及び九州新幹線(長崎ルート)長崎駅における駅部調査を開始する。」とされた[国交省 4]。同年2月3日に日本鉄道建設公団は武雄温泉 - 新大村(仮称)間の駅・ルートを公表した[JRTT 2][佐賀 3][長崎 2]。 2000年(平成12年)12月18日の「整備新幹線の取扱いについて」政府・与党申し合わせの中で、九州新幹線については鹿児島ルートの全線をフル化し、今後概ね12年後の完成を目指す交通結節点として新鳥栖駅の整備を行うこと、長崎ルートの武雄温泉 - 長崎間は環境影響評価終了後工事実施計画の認可申請を行うことが示された[国交省 5]。 2002年(平成14年)1月8日に日本鉄道建設公団が武雄温泉 - 新大村(仮称)間および新大村(仮称) - 長崎間の環境影響評価書を佐賀県知事へ提出し、同日に武雄温泉 - 長崎間の工事実施計画をスーパー特急方式で認可申請した[JRTT 2][佐賀 3][長崎 2]。 三者基本合意と武雄温泉 - 諫早間の着工肥前山口駅 - 肥前鹿島駅を上下分離方式によりJR九州が運営することや長崎県の応分の負担といった提案などの状況変化を踏まえ、2004年(平成16年)12月9日に佐賀県知事は並行在来線の経営分離はやむを得ないとの判断を表明[佐賀 7]、12月16日に「整備新幹線の取扱いについて」政府・与党申し合わせが公表された。 この中で九州新幹線(長崎ルート)については「並行在来線区間の運営のあり方については、長崎県の協力を得ながら佐賀県において検討を行うこととし、速やかに結論を出すこととする。調整が整った場合には、着工する。その際、軌間可変電車方式による整備を目指す。 長崎駅部の調査を行う」とされた[国交省 6]。この時点では佐賀県内のすべての沿線自治体からの同意が得られているわけではなかった。 九州新幹線(長崎ルート)には平成17年度から毎年度10億円の予算が計上されていたが、着工の条件である並行在来線の経営分離の同意が得られていなかったため、着工には至っていなかった。その後、2005年(平成17年)12月に白石町[佐賀 8] が、2006年(平成18年)2月に太良町[佐賀 9]、同年3月に江北町[佐賀 10] が並行在来線の経営分離に同意した。 2007年(平成19年)12月16日に佐賀県、長崎県、JR九州の三者は、
という合意に達した[佐賀 11]。これにより2008年(平成20年)3月5日に政府・与党ワーキンググループにおいて、着工の基本条件が満たされたことが確認された。これを受けて3月19日に鉄道・運輸機構は九州新幹線西九州ルート(武雄温泉〜諫早間)の工事実施計画を認可申請、3月26日に暫定整備認可された[JRTT 2]。同年4月28日には起工式が行われた。 武雄温泉 - 長崎間の一体整備2011年(平成23年)12月26日に「整備新幹線の取扱いについて(政府・与党確認事項)」が公表され、九州新幹線武雄温泉・長崎間については想定完成・開業時期を「武雄温泉・長崎間を一体として、諫早・長崎間の着工から概ね10年後」とし、「(注)現在建設中の武雄温泉・諫早間と新たな区間である諫早・長崎間を、一体的な事業(佐世保線肥前山口・武雄温泉間の複線化事業を含む)として扱い、軌間可変電車方式(標準軌)により整備する。」という方針が示された[国交省 7]。その後、2012年(平成24年)6月12日に九州新幹線武雄温泉・長崎間の認可申請(フル規格)が行われ、6月29日に認可された[JRTT 2][国交省 8]。 フリーゲージトレインの採用断念2014年10月からフリーゲージトレインの3モード耐久走行試験が開始されたが、約3万km走行した時点で不具合が発生し12月に試験が一時休止された[JRTT 3]。2015年(平成27年)1月14日に「整備新幹線の取扱いについて」が公表され、整備新幹線の新規開業区間の貸付料収入を財源に北海道新幹線(新函館北斗 - 札幌間)、北陸新幹線(金沢 - 敦賀間)、及び九州新幹線(武雄温泉 - 長崎間)の完成・開業時期を前倒しする方針が示された[国交省 9]。 この中で九州新幹線(武雄温泉 - 長崎間)は「フリーゲージトレインの技術開発を推進し、完成・開業時期を平成34年度から可能な限り前倒しする」とされた。しかし、フリーゲージトレインの開発方針が不透明となったことから、2016年(平成28年)3月29日に国土交通省、鉄道・運輸機構、長崎県、佐賀県、JR九州に与党PTを加えた6者による「九州新幹線(西九州ルート)の開業のあり方に係る合意」(いわゆる「六者合意」)が発表された。その合意内容はおおむね以下の5項目であった[長崎 3][佐賀 12]。
これらにより、武雄温泉 - 長崎間は当面武雄温泉駅での対面乗り換え方式での開業が決まり、新鳥栖 - 武雄温泉間のフリーゲージトレイン導入を前提とした整備については国の技術評価委員会の結果待ちとなった。 しかし、2016年11月18日に行われた国の「軌間可変技術評価委員会」では、2014年からの試験走行で明らかになった「車軸の摩耗対策」「高速走行安定性の評価」「経済性の検討」の面における問題点について更なる検討を加える必要があるとの報告がなされ[国交省 10]、翌年7月14日の委員会において、「車軸の摩耗対策」については完全な解決には至っておらず、トータルコストは当初よりは圧縮できたとはいえ通常の新幹線の2倍近い車両関連費用が見込まれることが避けられなかった[国交省 11][4]。 こうした状況を受け、2017年(平成29年)7月25日、JR九州の青柳俊彦社長は、一般の新幹線より車両関連費が2倍前後かかり、全面導入すればJRにとっては年間約50億円の負担増につながると試算されたため「前提である収支採算性が成り立たない」とし、また安全性も「まだ確立できていない状態」であることを理由として「フリーゲージトレインによる運営は困難」だとして、西九州ルートへのフリーゲージトレイン導入を断念すると発表し、博多 - 長崎間の全線フル規格での整備を求める考えも示した[新聞 13]。JR九州初代社長の石井幸孝は2022年6月に長崎新聞に掲載された記事の中で、フリーゲージトレインの技術開発状況について「素人には分かりやすく受けるが、われわれ玄人にすれば『何を言っているんだ』という代物だった」と述べている[新聞 14]。 なお、国の軌間可変技術評価委員会は2018年3月27日の会合を最後に開催されておらず[国交省 12]、国からの補助によりフリーゲージトレインの実証実験を行ってきた鉄道建設・運輸施設整備支援機構が「全ての使用が想定されない」として、2022年度から走行試験設備などの撤去を進めている[新聞 15][5]。 武雄温泉以東の整備方式の再検討上述のように、フリーゲージトレインの採用が断念されたことを受けて、武雄温泉以東の整備方式について再検討に着手したが、フル規格(標準軌新線)による整備を進めたいとする国・長崎県と、そもそもフル規格整備を求めていないとする佐賀県との間で対立が生じている[新聞 14][新聞 16]。 2018年(平成30年)3月30日、国土交通省は同日開催された与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会にて、「九州新幹線(西九州ルート)の整備のあり方について(比較検討結果)」を報告すると同時に、対面乗換開業時・FGT・ミニ新幹線(単線並列と複線三線軌の2パターン)・全線フル規格の場合の所要時間の試算をそれぞれ公表した[国交省 13]。
この比較案を元に、佐賀県は全線フル規格で整備した場合の負担額について独自に試算。国の交付金措置等を考慮しない歳出予算ベースで約2400億円と、佐賀県よりも利便性が向上する長崎県の負担割合(約1000億円)を上回り、ルールどおりであれば佐賀県の負担が大きすぎるとの見解を示した[新聞 17]。 佐賀県の試算に対し、与党プロジェクトチームでは佐賀県の求める「追加負担ゼロ」は現実的ではないとしつつ、JR九州との貸付料交渉と長崎県による協力により、佐賀県の費用負担をどれだけ減らせるか検討した上で、佐賀県に提案する予定であるとしている[新聞 18]。2018年7月19日に行われた与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会の会合で、フリーゲージトレインの導入を正式断念する一方で、2018年夏までに一定の結論を出すとしていた、全線フル規格かミニ新幹線方式かの整備方法決定について、佐賀県の財政面での見解を受けて、結論を先送りすることを決めた[新聞 19]。 2019年(平成31年)4月26日、九州新幹線西九州(長崎)ルートの与党検討委員会において、佐賀県知事山口祥義が「新幹線整備を求めたことはなく、現在も求めていない」「これまで、関係者間で合意されているのは武雄温泉〜長崎間の新線整備と、新鳥栖〜武雄温泉間は在来線を利用することだったはず」「佐賀県の負担ゼロでも建設は認めない」「短時間での解決は無理」といった内容の発言を行った[新聞 20][6][7]。しかし与党検討委員会は同年8月5日、未着工区間(新鳥栖 - 武雄温泉間)について事業費や時短効果を考慮し、フル規格で整備すべきだととの方針を決定[新聞 21]、与党検討委員会の山本幸三委員長が8月6日、佐賀県議会で桃崎峰人議長と面会し、フル規格での整備が適当とする基本方針を決めたことを伝えた[新聞 22]。また8月27日には与党プロジェクトチームも検討委員会の示したフル規格で整備するよう求める方針を確認、関係者(国・長崎県・佐賀県・JR九州)の協議を見守った上で、2023年度(令和5年度)の着工を目指すとした[新聞 23]。 この方針に佐賀県は強く反発。国や長崎県の働きかけを牽制する状態が続き、2023年度着工の目安となる「2020年度環境影響評価(アセスメント)着手」が難しくなってきたことから赤羽一嘉国土交通大臣が調整に乗り出す事態になり、2019年10月28日には山口佐賀県知事と面会。山口知事は「フル規格ありきではなく5案(スーパー特急方式、フリーゲージトレイン、リレー方式、ミニ新幹線、フル規格)を時間をかけて幅広く議論すべき」との見解を示し、両者は引き続き「幅広い協議」として話し合いの場を持つことで一致した[8]。一方で、「2023年度工事着手」を実現させたい国は、先行して環境影響評価に着手したいとして、2020年6月には5案全てに対応できる環境影響評価の手続きを実施したいとの異例の提案を行う[国交省 14] も、佐賀県側がこれを拒否。県の見解として「整備はもとより、ルート、着工時期、開業時期について決まったことや関係者で合意したものは一切ない」との考えを公表した[新聞 24]。 一方、佐賀県内でも全線フル規格での整備を求める声がある。フル規格を求める議員有志は2019年6月25日、佐賀市内でシンポジウムを開き[新聞 25]、衆議院議員今村雅弘(比例九州)が講演して、知事が懸念する未着工区間の財源負担について説明した。国の試算によると、フル規格で整備した場合、佐賀県の実質負担は約450億から660億円とされ、30年償還で考えれば年間負担は15億から22億円となると述べた。地元の経済効果などを考慮すれば、対応できる額であると主張。着工から開業までは10年以上かかるとし、「早く方向付けをしなければ、結果的に佐賀県が通せんぼをすることになり、県民は肩身の狭い思いをする」と語った[新聞 25]。 また、整備方式を議論する与党検討委員会のメンバーである衆議院議員古川康(比例九州ブロック、前佐賀県知事)は、「(以前は)佐賀県の負担を考え、ミニ新幹線がいいと思ったが、フル規格は災害に強い。新しく整備するなら、大雨が降っても使い続けられる方が望ましい」と述べ、フル規格化の必要性を訴えた[新聞 25]。自民党佐賀県議団は2020年8月に開いた総会で、「フリーゲージトレイン開発など在来線の利用を模索しつつ、フル規格で整備した場合を想定して議論を進める」とする今後の方向性を取りまとめ、フル規格での整備も容認しうることを示した[新聞 26]。 2021年5月26日、与党PTはフル規格での整備を前提として佐賀県の財政負担を軽減し、並行在来線(長崎本線・佐世保線)をJR九州の運営のまま維持すべきとする方向性でJR九州などと議論を進めることを確認[新聞 27]。一方、同年5月31日に行われた国と佐賀県の「幅広い協議」の中で、佐賀県から、県がフル規格での整備を容認したわけではないとした上で、国土交通省鉄道局が提案した、
の3案について、佐賀県が検討に値する事項があるかを国が検証するよう提案が行われた[新聞 28]。 2023年2月9日に、この要望を受けて国土交通省鉄道局が佐賀県に対し、筑後船小屋駅から佐賀空港付近を経由して武雄温泉を結ぶルート案について「特に筑後川・早津江川を横断する橋梁又はトンネルの、佐賀空港の制限表面や施工時の有明海への環境影響を考慮すると、現実的には選択肢とはなり得ない」の回答を示した。これに対し佐賀県からは「佐賀県はフル(規格での整備)は求めていないし、ルートについて何も協議をしていない」「(説明内容に)物すごい違和感もある」と回答し、双方の意見が噛み合っていないことが示された[佐賀 13]。「幅広い協議」はこれ以後行われていないが、与党検討委員会委員長である森山裕の要請[新聞 29]により2023年12月28日に国土交通省鉄道局次長の平嶋隆司と佐賀県副知事の南里隆が非公開で協議し、国が従来の方針を伝える一方で、佐賀県側からは「(佐賀駅経由のフル規格整備は)圧倒的多数の在来線利用者が不便になり、佐賀県にとっては失うものがはるかに大きい」とした上で、(国交省が否定した)佐賀空港や有明海沿岸道路と連携するルート案であれば協議の余地があるとの主張を繰り返し、県の財政負担(佐賀県の負担は最大でも長崎県の2分の1以内)・在来線問題(利便性の現状維持)・地域振興をセットで協議すべきとの主張を行った[新聞 30]。 2024年5月13日、佐賀県の山口知事の呼びかけで、JR九州社長の古宮洋二、長崎県知事の大石賢吾との間で3者による意見交換が非公開で行われたが、山口知事が武雄温泉以東の区間について「在来線の利用以外に関係者で合意されたものはない『未合意区間』である」として新たな合意形成が必要であると強調した[新聞 31]上で、佐賀空港付近を通るルートについての議論の必要性を述べる一方、JR九州の古宮社長と長崎県の大石知事が共に佐賀駅を通るルートによる(フル規格)整備が望ましいとの意向を示し、建設費用負担の在り方なども含め、議論は平行線をたどった[新聞 32]。但し、意見交換の継続の必要性では一致し[新聞 33]、国を交えた4者協議についても検討していくこととなった[新聞 34]。 年表国鉄時代
JR九州発足後
武雄温泉 - 諫早間着工後
諫早 - 長崎間着工後
武雄温泉 - 長崎間開業後脚注注釈出典
国土交通省
鉄道・運輸機構
JR九州
佐賀県
長崎県
新聞記事
参考文献報告書
関連項目外部リンク
|
Portal di Ensiklopedia Dunia