朝日杯将棋オープン戦(あさひはいしょうぎオープンせん)は朝日新聞社・日本将棋連盟主催の将棋の棋戦。2006年度で終了した朝日オープン将棋選手権の後継棋戦として2007年に創設され、回次も第1回と改められた。優勝賞金は750万円[1][2][注釈 1]。
方式
一次予選、二次予選、本戦を行って優勝者を決定する。全棋士(全棋士参加棋戦に該当する)とアマチュア選手10人(前期の朝日アマ名人、挑戦者を含む朝日アマ名人戦のベスト8、学生名人)、女流棋士3人(主催者の推薦による)[注釈 2]が参加する。
持ち時間は各40分(チェスクロック方式)で、持ち時間を使い切った後は1手1分未満で指す。
本戦シードは8人、二次予選シードは16人。シード順位は年毎に一部変更が行われているが、概ね以下のように定められている。第1回(2007年度)の「前回ベスト4」「前回本戦出場者」には、2006年度の朝日オープン将棋選手権の成績が適用された。
【第19回時点】
- 前回ベスト4 (4名)
- タイトル保持者 (最大8名)
- 全棋士参加棋戦優勝者 (NHK杯・銀河戦、最大2名)
- 前回の本戦出場・勝利者(かつ一次予選・二次予選通過者) (人数不定)
- 永世称号者(襲位者および有資格者:谷川・羽生・渡辺明・森内・佐藤康の5名、第16回より)[3][注釈 3]
- 順位戦上位者 (人数不定)
前身の朝日オープン将棋選手権ではタイトル戦と同じく挑戦手合制の五番勝負、さらに前身の全日本プロ将棋トーナメントでは決勝五番勝負(初期は三番勝負)が採用されたが、本棋戦は決勝戦も含めてすべて一番勝負でのトーナメント棋戦である。持ち時間は短く、1人が1日に2局対局することが多い[注釈 4]。本戦は基本的にすべて1日2局であり、準決勝と決勝でさえ同じ日に行われる。
2021年2月より、本戦トーナメントベスト4まで勝ち進んだ女流棋士およびアマチュアに、棋士編入試験の受験資格が与えられることとなった[4]。
一次予選
16ブロックに分かれ、トーナメント方式で二次予選への進出者16名を決定する。アマチュア選手と女流棋士は一次予選の各ブロックに1人ずつ割り振られ、1回戦から出場する。
朝日オープンの一斉対局を引き継ぎ、アマチュア選手の対局は10局とも可能な限り同日に開催される。関東では朝日新聞東京本社、関西では大阪本社もしくは関西将棋会館で午前と午後に分けて5局ずつ、公開対局で行われる[注釈 5][注釈 6]。
2024年度現在で、アマチュア枠・女流枠から一次予選を突破したのは、アマチュアでは第3回(2009年度)の清水上徹(二次予選1回戦で敗退)と第9回(2015年度)の森下裕也(同)、第16回(2022年度)の小山怜央(二次予選決勝で敗退)の3人である。なお、小山は朝日杯の実績も含めて棋士編入試験の資格を得て、編入試験合格で四段プロ入りしている。女流では第17回(2023年度)の西山朋佳(二次予選1回戦で敗退)だけである。西山は朝日杯の実績も含めて棋士編入試験の資格を得て受験したが、試験不合格となっている。
アマチュア枠に対するプロの対局者は四段昇段順に新人10人、即ち棋士番号の大きい方から10人(シード者、五段昇段者は除く)[注釈 7][注釈 8]が選ばれる。年に昇段する新四段(新人プロ棋士)は通常4人であるため、プロ入り1年目の新人は、必ずアマチュア選手と対局することになる。
畠山鎮は、プロから見たプロアマ一斉対局について、「棋士としてのスタートの時期に〔負けられない闘い〕です。負けた新四段の姿は痛々しいものです」と述べている[5]。
さらに、棋士編入試験の試験官も同様に棋士番号の大きい方から5人が選ばれるため、一斉対局に敗れた新四段と、一斉対局から勝ち上がって編入試験の受験資格を得たアマチュアが、編入試験で再戦する事例も見受けられる。2024年までの具体例としては、星野良生四段対今泉健司アマ、岡部怜央四段対小山怜央アマの2例があり、どちらの例でも再戦となった編入試験で再び受験者が勝利を収め、編入試験にも合格を果たしている。
第14回(2020年度)は新型コロナウイルスの影響で、朝日アマ名人戦の開催が延期された。このため、アマチュア出場枠は前期朝日アマ名人、学生名人の2人のみとなった[6]。
二次予選
一次予選からの勝ち抜き者(16名)と二次予選からのシード者(16名)が8ブロックに分かれ、トーナメントで本戦出場者8名を決定する。トーナメント表は二次予選進出者とシード者が1回戦で対戦するように組まれる。
本戦
本戦は16名(二次予選の勝ち抜き者8名、本戦シード者8名)によるトーナメント方式で行われ、勝者1名が優勝となる。
例年、本戦1回戦は本戦進出者と本戦シード者とが対戦する組み合わせとなっている。
本戦の準決勝・決勝は、東京・有楽町朝日ホールでの公開対局として[注釈 9]、2月の土日または祝日(2月11日〈建国記念の日〉または2月23日〈天皇誕生日〉)に行われる[注釈 10]。
第10回(2016年度)からは本戦1回戦・2回戦の半分(1回戦4局、2回戦2局)も公開対局で開催しており、第10回は熊本市で、第11回(2017年度)以降は名古屋市内で開催されている。
- 本戦1-2回戦の公開対局一覧(第10回以降)
- 在籍期限を満了したフリークラス編入棋士の特例参加
- 本戦トーナメント準決勝進出者(ベスト4)が、フリークラス規定の在籍期限を満了したフリークラス編入棋士である場合[注釈 11]、その在籍期限満了者は他棋戦については出場資格がなくなるが、朝日杯将棋オープン戦については次年度の棋戦に参加が可能となり、引退とはならない(2010年7月9日以降)[10][注釈 12]。
歴代結果
結果
ベスト4以上の結果は以下の通り。称号、段位は対局当時のもの。
棋士別成績
棋士 |
優勝 |
準優 |
優勝年度 |
準優勝年度
|
羽生善治 |
5 |
1 |
2009,2011,2013,2014,2015 |
2010
|
藤井聡太 |
4 |
1 |
2017,2018,2020,2022 |
2023
|
渡辺明 |
1 |
4 |
2012 |
2013,2014,2018,2022
|
菅井竜也 |
1 |
1 |
2021 |
2012
|
永瀬拓矢 |
1 |
1 |
2023 |
2019
|
行方尚史 |
1 |
- |
2007 |
|
阿久津主税 |
1 |
- |
2008 |
|
木村一基 |
1 |
- |
2010 |
|
八代弥 |
1 |
- |
2016 |
|
千田翔太 |
1 |
- |
2019 |
|
近藤誠也 |
1 |
- |
2024 |
|
久保利明 |
- |
2 |
|
2008,2009
|
広瀬章人 |
- |
2 |
|
2011,2017
|
丸山忠久 |
- |
1 |
|
2007
|
森内俊之 |
- |
1 |
|
2015
|
村山慈明 |
- |
1 |
|
2016
|
三浦弘行 |
- |
1 |
|
2020
|
稲葉陽 |
- |
1 |
|
2021
|
井田明宏 |
- |
1 |
|
2024
|
プロアマ一斉対局
結果には、一斉対局が行われていない対局も含む(1次予選1回戦のうちプロアマ戦に相当するものの通算)。
回 |
年度 |
対局日 |
結果
|
1 |
2007 |
2007年7月7日 |
プロ7勝 |
    |
アマ3勝
|
2 |
2008 |
2008年7月12日 |
プロ7勝 |
    |
アマ3勝
|
3 |
2009 |
2009年7月4日 |
プロ7勝 |
    |
アマ3勝
|
4 |
2010 |
2010年7月3日 |
プロ10勝 |
    |
アマ0勝
|
5 |
2011 |
2011年7月2日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
6 |
2012 |
2012年7月7日[注釈 19] |
プロ5勝 |
  |
アマ5勝
|
7 |
2013 |
2013年7月6日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
8 |
2014 |
2014年7月5日 |
プロ8勝 |
    |
アマ2勝
|
9 |
2015 |
2015年7月4日 |
プロ6勝 |
    |
アマ4勝
|
10 |
2016 |
2016年6月18日 |
プロ6勝 |
    |
アマ4勝
|
11 |
2017 |
2017年6月17日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
12 |
2018 |
2018年7月29日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
13 |
2019 |
2019年6月29日 |
プロ5勝 |
  |
アマ5勝
|
14 |
2020 |
2020年7月25日,30日[注釈 20] |
プロ1勝 |
  |
アマ1勝
|
15 |
2021 |
2021年7月10日[注釈 21] |
プロ7勝 |
    |
アマ3勝
|
16 |
2022 |
2022年7月9日[注釈 22] |
プロ7勝 |
    |
アマ3勝
|
17 |
2023 |
2023年6月24日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
18 |
2024 |
2024年6月30日 |
プロ9勝 |
    |
アマ1勝
|
- (前身棋戦である朝日オープン将棋選手権のプロ対アマの対戦成績 も参照。)
放送・配信
以下は2018年現在。
生中継
テレビ特別番組
脚注
注釈
- ^ 2017年の第11回より。それ以前は1000万円
- ^ 2016年の第10回まではタイトル保持者・棋戦優勝者・タイトル戦出場者の順に6人。
- ^ 以前の「永世称号者」のシード順位は、タイトル保持者の次であったが、谷川浩司が十七世名人を2022年5月に襲名するまで「永世称号者」の該当者がなく、第16回(2022年度)から実質有効となった。また、その際に「永世資格者」もシード対象になった。
- ^ 本棋戦のほかに1日に2局以上の対局が組まれるものとしては、NHK杯予選や銀河戦、棋聖戦一次予選(第81期以降)、叡王戦(段位別予選及び第3期~第5期の七番勝負の一部)、マイナビ女子オープン予選などがある。
- ^ プロアマ一斉対局と本戦準決勝・決勝は、将棋の公式戦では珍しく椅子に着席する形で行われる。本棋戦以外での公式棋戦の椅子対局は、女流棋戦のマイナビ女子オープン予選など一部のみである。
- ^ ただし、第11回(2017年度)のプロアマ一斉対局(2017年6月17日)は、当初関西将棋会館開催の大阪会場の対局は公開対局を予定していたが、対局当時デビュー戦から26連勝を飾っていた藤井聡太がプロ側のひとりとして出場。藤井の過熱する人気による混乱を避けるため、一転して非公開となった。
- ^ 2018年度(第12回)の場合、本来棋士番号314の池永天志から順番に10人が選ばれるが、棋士番号307番の藤井聡太は前回の優勝者のため本戦からの出場となるので代わりに棋士番号304の都成竜馬が選ばれた。
- ^ 2025年度(第19回)の場合、新人10人に含まれる上野裕寿五段がプロアマ対局の該当者から外れた。前年までは五段昇段者でもプロアマ対局に出場しており、2024年度(第18回)では藤本渚五段(当時)が五段昇段後にプロアマ対局に出場している。
- ^ 本戦準決勝・決勝は原則公開だが、第14-15回(2020年度-2021年度)は新型コロナウイルス感染症の影響もあり一般非公開での実施となった。
- ^ 本戦準決勝・決勝の実施日が2月23日(天皇誕生日)となったのは第14回(2021年度〈2022年2月〉)から。第10回(2016年度)までの実施日は第2土曜日。第11-12回(2017年度-2018年度)は第3土曜日、第13-14回(2019年度-2020年度)は2月11日(建国記念の日)にそれぞれ実施された。
- ^ 順位戦C級2組からの降級・棋士編入試験の合格・奨励会三段リーグで次点(リーグ3位)2回獲得によりフリークラスに編入した棋士が対象となる。60歳以上で順位戦C級2組から降級した棋士を含む。ただし「フリークラス宣言」による転出者については含まれない。
- ^ 他棋戦においても同様の規定があるが、2022年時点での適用例は竜王戦のみとなっている。
- ^ 優勝した阿久津は本優勝により、「類まれなる成績」を収めたとして理事会で審議となり、結果昇段が認められ、2009年4月1日付けで七段に昇段した。
- ^ 優勝した八代は本優勝により、七段以下の昇段条件のひとつ「全棋士参加棋戦優勝」を満たし、同日付で六段に昇段した。
- ^ 将棋ソフト不正使用疑惑により、三浦九段は出場停止になり、第10回朝日杯に参加できなかった。
- ^ 優勝した藤井聡太五段は、朝日杯初出場初優勝、史上最年少での朝日杯および全棋士参加棋戦優勝。また、この優勝で七段以下の昇段条件のひとつ「全棋士参加棋戦優勝」を満たし、同日付で六段に昇段した。同2月1日に五段昇段したばかりの藤井は五段昇段から16日後の六段昇段となった。
- ^ 決勝戦は井上慶太門下による、同門兄弟弟子対決となった。前身の朝日オープン将棋選手権、全日本プロ将棋トーナメントの決勝戦を含めて、本棋戦初の決勝戦同門兄弟弟子対決となった。
- ^ 本棋戦初となる「竜王位」対「名人位」の決勝戦となった。また、タイトル数では「五冠」対「二冠」の対局となった。
- ^ 1局が同年8月8日に延期となったため、全9局での一斉対局となった(一斉対局はプロ5勝アマ4勝、延期局はアマ1勝)
- ^ 新型コロナウイルス感染拡大による第43期朝日アマ名人戦の延期に伴い、アマチュア枠からは横山大樹アマ(朝日アマ名人)と天野倉優臣アマ(前年の学生名人戦優勝者)の2名のみ出場し、一斉対局は行われなかった。1次予選1回戦として、7月25日に横山大樹アマ-服部慎一郎四段戦(プロ勝ち)、7月30日に天野倉優臣アマ-谷合廣紀四段戦(アマ勝ち)が行われた。
- ^ 7月10日に関西将棋会館で半数の5局が一斉対局(プロ5勝)。その他の5局は8月8日までかけて順次行われた。
- ^ 1局が同年7月13日開催となり、全9局での一斉対局となった。(一斉対局はプロ6勝アマ4勝、残り1局はプロ1勝)
出典
関連項目
外部リンク
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