佐々木 勇気(ささき ゆうき、1994年8月5日 - )は、日本の将棋棋士。男性。スイスのジュネーヴ生まれ、埼玉県三郷市育ち。石田和雄九段門下。棋士番号は280。東京都立白鷗高等学校・附属中学校卒業。
棋歴
アマチュア時代
奨励会
- 5級時代に一度、降級点を喫したが、おおむね順調に昇級・昇段を重ね、2008年4月(中学2年生時)には13歳8か月で三段への昇段を果たした。これは13歳12か月(中学2年4月)で昇段した豊島将之を抜いて史上最年少記録となった(※一般向けには学年単位で捉えてタイ記録とする資料が多い)[注 3][4][5]。
- 奨励会三段リーグには、第44回(2008年度後期)から参加。2回(1年)以内に四段昇段すれば加藤一二三・谷川浩司・羽生善治以来4人目の「中学生棋士」、3回(1年半)以内に昇段すれば、渡辺明と同じく中学卒業と同時のプロ入りという記録がかかっていたが、第44回6位(12勝6敗)、第45回17位(9勝9敗)、第46回4位(13勝5敗)と、四段昇段に迫るも果たせなかった[注 4]。
- しかし、4回目となる第47回(2010年度前期)で14勝4敗(6勝4敗からの8連勝)・1位の成績を収め、プロ入りを決める[6]。当時のインタビューで、「やっぱりタイトルは取れるようになりたい。連勝記録[注 5]を塗り替えたい。勝ち進んでいきたい」と述べ、高い目標を掲げた[7]。16歳1か月でのプロデビュー(2010年10月1日付)は、現行三段リーグ制度導入(1987年)以降では、藤井聡太(14歳2か月)、渡辺明(15歳11か月)に次ぐ3番目の年少記録であり、通算でも藤井、加藤、谷川、羽生、渡辺に次ぐ6番目の年少記録である。
プロ入り後
- 第3期加古川青流戦(2013年度)では決勝まで進み、三番勝負で千田翔太に2勝1敗で勝利(3局とも後手番が勝利)し、プロ棋戦初優勝を遂げた。
- 第42期棋王戦(2016年度)で予選・本戦を勝ち抜きベスト4進出するも、本戦準決勝と敗者復活からの挑戦者決定二番勝負でいずれも千田翔太に退けられ、タイトル挑戦はならなかった。
藤井聡太の連勝記録をストップ
- 第30期竜王戦4組ランキング戦で優勝。2017年7月2日に行われた竜王戦決勝トーナメントでは、6組優勝で公式戦29連勝無敗中であった藤井聡太との対局に勝利し、藤井に公式戦初黒星をつけた[8]。
順位戦・竜王戦での昇級
初の全棋士参加棋戦優勝・タイトル戦登場
棋風
- 渋い将棋を好み[16]、デビュー当時の得意戦法は矢倉囲いであった[6]。プロデビュー時に「どんなに悪くても(=不利な局面になっても)、最後まで諦めないで指すタイプ。簡単には折れないのが長所。そういうところを棋譜などで感じ取ってもらえたら嬉しい」と語っている[7]。対局の大半は居飛車だが、作戦として振り飛車を指すこともある。
- 横歩取り6八玉型の「横歩取り勇気流」と呼ばれる戦法を創案し、2017年度の升田幸三賞を受賞した[17]。「横歩取り勇気流」は、大内延介から愛蔵の将棋盤を2015年に譲り受けたのを契機に、その盤に向かい合って研究を重ね、自分の将棋について深く考えることが増えた中で生まれた[18]。
人物・エピソード
趣味・好物
- 中学までは陸上部、高校時代はバスケットボール部に所属。将棋連盟にもバスケ部を作り部長を務める。その他、連盟のフットサル部にも所属[20]。
- 対局時の食事の出前で、餅をトッピングとして追加注文することが多い。佐々木のこの注文が契機となり、2016年後半から将棋界では空前の「餅トッピングブーム」が起きた[21]。ただ力うどんが元々餅入りだと知らず、勢い余って「力うどんに餅追加」を注文してしまったこともある。
- かなりの大食漢。2024年の第37期竜王戦七番勝負では、第1局初日の昼食で「ビッグハンバーガー&スパゲティボロネーズ」を注文したのを皮切りに[22]、度々昼食で2人前の注文を敢行した。2025年2月の第83期順位戦A級最終局・対佐藤天彦戦では、夕食休憩時に本まぐろ丼・うな重・国産牛フィレステーキの3品を注文し関係者を驚かせた[23](本人によれば「全て完食した」という[24])。
棋士との関係
- 2013年10月にプロ棋士となった三枚堂達也とは幼少期から同じ将棋道場[注 8]に通い、同じ都立白鷗高校出身で、奨励会も同期で入会した仲で、1年年上の三枚堂は四段昇段決定時のコメントで佐々木をライバル視している[25]。三枚堂のプロ四段としての初対局相手は奇しくも佐々木であった[注 9]。
- 都立白鷗中学・高校の同級生には、奨励会に在籍中であった渡辺和史がいたが、当時は互いに将棋を指したことはなく昼休みにバスケに興じた仲で、佐々木が部長を務める将棋連盟バスケ部に渡辺和史も所属して楽しんでいる[26]。
- 9藤井聡太に対して強い対抗意識を持っていることで知られる。公式戦初対局で藤井のプロデビュー以来の連勝を止めた第30期竜王戦決勝トーナメント2回戦に先立ち、二度に渡って藤井の対局に立会い[注 10]、100名を超える報道陣の中で対局するための場馴れをした[28]。藤井戦に勝利した佐々木と語り合った三枚堂によると、佐々木はこの場馴れが勝因であったと語り、対藤井戦の可能性が生じたら同様にするように勧めたという[29][注 11](ただし佐々木本人は路上で軽く振った程度の認識であった[30])。
- 伊藤匠が四段昇段を決めたとき、昇段祝いの宴席を呼びかけ三枚堂達也ら数名で集まったが、二度の飲食費の全額を伊藤に負担させたと伊藤本人が東竜門Twitterアカウントで発言をしたことが物議を醸した。なお、伊藤はすぐに当該ツイートを削除し「勇気さんは普段からお世話になっている先輩で、度々ご馳走になってきたので、四段に昇段した際に初めて払わせて頂いたというのが本当のところです。」と訂正している[31]。
その他
- 前述した藤井を29連勝で止めた際、メディアから殺到した取材依頼を「将棋に集中するため」と全て断ったストイックな面を持つ[32]。
- 端正な顔立ちのイケメンで女性ファンが多いとの評判があり[33]、スーツ姿の棋士が多い中、和装で登場することもある[33]。
- 2024年12月に指宿市の観光大使に任命された。同年に行われた第37期竜王戦七番勝負第6局に挑戦者として指宿を訪問した他、過去にはタイトル戦の副立会人や大盤解説等で指宿を訪問した際に砂むし風呂を楽しむ等の縁で「永世砂むし温泉」と称されていた経緯もあった[34][35]。
昇段履歴
- 2004年09月29日 : 6級 = 奨励会入会(当時 小学4年)
- 2005年01月06日 : 5級(9勝3敗、当時 小学4年)
- 2005年06月28日 : 4級(6連勝、当時 小学5年)
- 2005年09月08日 : 3級(9勝2敗、当時 小学5年)
- 2005年11月22日 : 2級(9勝3敗、当時 小学5年)
- 2006年10月28日 : 1級(9勝3敗、当時 小学6年)
- 2007年04月14日 : 初段(12勝2敗、当時 中学1年)
- 2007年06月09日 : 二段(8連勝、当時 中学1年)
- 2008年04月19日 : 三段(12勝4敗、当時 中学2年) = 中学2年4月の三段昇段は歴代2位タイ記録。
2008年04月00日 : 三段(第44回奨励会三段リーグ<2008年度後期>から三段リーグ参加)
- 2010年10月01日 : 四段(第47回奨励会三段リーグ成績1位・14勝4敗)[36] = プロ入り(当時 高校1年)
- 2014年03月11日 : 五段(順位戦C級1組昇級、通算91勝46敗)[37]
- 2017年07月11日 : 六段(勝数規定 /五段昇段後公式戦120勝、通算211勝98敗)[38]
- 2018年11月16日 : 七段(竜王ランキング戦連続昇級、通算243勝120敗)[39]
- 2023年03月09日 : 八段(順位戦A級昇級、通算349勝177敗)[40][41][42]
主な成績
タイトル挑戦
- 登場回数 1回、タイトル獲得なし
棋戦優勝
- 合計 2回
将棋大賞
在籍クラス
順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始 年度
|
(出典)順位戦
|
(出典)竜王戦
|
期
|
名人
|
A級
|
B級
|
C級
|
0
|
期
|
竜王
|
1組
|
2組
|
3組
|
4組
|
5組
|
6組
|
決勝 T
|
|
1組
|
2組
|
1組
|
2組
|
2010
|
69
|
四段昇段前
|
24
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
1-2
|
2011
|
70
|
|
|
|
|
|
C240
|
5-5
|
25
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
5-1
|
2012
|
71
|
|
|
|
|
|
C221
|
8-2
|
26
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
5-2
|
2013
|
72
|
|
|
|
|
|
C205
|
8-2
|
27
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
4-1
|
2014
|
73
|
|
|
|
|
C131
|
|
5-5
|
28
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
1-2
|
2015
|
74
|
|
|
|
|
C118
|
|
8-2
|
29
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
3-2
|
2016
|
75
|
|
|
|
|
C108
|
|
6-4
|
30
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
2-1
|
5-0
|
2017
|
76
|
|
|
|
|
C106
|
|
9-1
|
31
|
|
|
|
3組
|
|
|
|
--
|
3-1
|
2018
|
77
|
|
|
|
|
C103
|
|
5-5
|
32
|
|
|
2組
|
|
|
|
|
--
|
1-2
|
2019
|
78
|
|
|
|
|
C114
|
|
9-1
|
33
|
|
|
2組
|
|
|
|
|
0-1
|
4-0
|
2020
|
79
|
|
|
|
B222
|
|
|
9-1
|
34
|
|
1組
|
|
|
|
|
|
--
|
1-2
|
2021
|
80
|
|
|
B112
|
|
|
|
7-5
|
35
|
|
1組
|
|
|
|
|
|
--
|
0-2
|
2022
|
81
|
|
|
B105
|
|
|
|
9-3
|
36
|
|
|
2組
|
|
|
|
|
--
|
3-2
|
2023
|
82
|
|
A 09
|
|
|
|
|
4-5
|
37
|
|
|
2組
|
|
|
|
|
4-0
|
4-0
|
2024
|
83
|
|
A 07
|
|
|
|
|
5-4
|
38
|
|
1組
|
|
|
|
|
|
--
|
|
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。
|
年度別成績
公式棋戦成績
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2010
|
8 |
4 |
4 |
0.5000 |
[46]
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2011
|
40 |
26 |
14 |
0.6500 |
[47]
|
2012
|
41 |
27 |
14 |
0.6585 |
[48]
|
2013
|
49 |
35 |
14 |
0.7142 |
[49]
|
2014
|
47 |
29 |
18 |
0.6170 |
[50]
|
2015
|
47 |
34 |
13 |
0.7234 |
[51]
|
2016
|
65 |
46 |
19 |
0.7076 |
[52]
|
2017
|
43 |
31 |
12 |
0.7209 |
[53]
|
2018
|
40 |
22 |
18 |
0.5500 |
[54]
|
2019
|
32 |
20 |
12 |
0.6250 |
[55]
|
2020
|
39 |
28 |
11 |
0.7179 |
[56]
|
2011-2020 (小計)
|
443 |
298 |
145 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021
|
38 |
20 |
18 |
0.5263 |
[57]
|
2022
|
39 |
28 |
11 |
0.7179 |
[58]
|
2023
|
45 |
27 |
18 |
0.6000 |
[59]
|
2021-2023 (小計)
|
122 |
75 |
47 |
|
|
通算
|
573 |
377 |
196 |
0.6579 |
[60]
|
2023年度まで
|
その他記録
脚注
注釈
- ^ 準優勝は菅井竜也
- ^ 3人目は、2007年(平成19年)に優勝した佐伯駿介。
- ^ これらの記録は、2015年10月18日に13歳2か月(中学1年生)で昇段した藤井聡太が更新し、単独1位となっている(2019年現在)
- ^ 44回、46回では昇段ラインまで1勝差であったが、リーグ戦の序列で不利であったため、あと2勝または上位者との直接対決で勝利のいずれかが必要であった。
- ^ BS2『囲碁・将棋ジャーナル』2010年9月18日放送回に出演の渡辺明によれば、1987年に神谷広志が樹立した28連勝の記録のことと考えられる。
- ^ 小学生で奨励会入りしていたため、中学受験をした。
- ^ 米長は東京都教育委員時代に、学校の授業に将棋を取り入れることを積極的に推し進めており、そのことを自身のホームページや掲示板でも話題にしていた。
- ^ 石田和雄が師範を務め、千葉県柏市に所在する「柏将棋センター」
- ^ 2013年12月20日・第40期棋王戦予選・結果は佐々木の勝ち。
- ^ 2017年6月10日の第3期叡王戦段位別予選1回戦の対局前、6月27日の第30期竜王戦決勝トーナメント1回戦の対局前・終局後。竜王戦は主催の読売新聞社の解説役を買って出たといい、仕事も兼ねていた[27]。
- ^ 三枚堂は竜王戦2回戦から約3週間後の7月21日に行われた上州YAMADAチャレンジ杯で藤井に2つ目の黒星を付けている。なお、藤井はこの後異例の速度で昇段したため、YAMADAチャレンジ杯への参加資格を失った。
出典
関連項目
外部リンク
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タイトル 保持者 【7名】 |
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九段 【27名】 (引退1名) |
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八段 【33名】 (引退2名) |
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七段 【46名】 (引退2名) |
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六段 【29名】 |
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五段 【19名】 |
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四段 【15名】 | 2025年04月1日付 昇段者 | |
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2025年10月1日付 昇段者 | |
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2025年度 引退者 【4名】 |
九段 福崎文吾 ( 2025年4月22日引退 )
七段 木下浩一 ( 2025年4月23日引退 )
七段 増田裕司 ( 2025年4月23日引退 )
八段 長沼洋 ( 2025年5月1日引退 )
八段 有森浩三 ( 2025年5月15日引退 )
2023年度引退予定者 (現役継続中) |
七段 川上猛 ( 引退日未定 / 第38期竜王戦 5組在籍、4組昇級の場合は現役継続、引退日は2025年度以降)
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日本将棋連盟所属(現役棋士 171名 / 2025年度引退者 5名、2025年5月15日時点) △は2025年度の昇段(期中の昇段月。月表記なしは期首4/01付)。引退者の(日付)は引退日。 これまでの引退棋士・退会者についてはTemplate:日本将棋連盟引退棋士参照。詳細は将棋棋士一覧を参照。2026年度 >> |
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竜王 | |
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1組 【 ▼降級 4名 】 | |
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2組
| |
---|
3組
| |
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4組
| |
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5組
|
【在籍 31名(棋士30名・奨励会員1名) / 定員 32名 (欠員1) 】
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6組 【 △昇級 5名 】 |
| 女流棋士 | |
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アマチュア |
- 森下裕也アマ
- 荒田敏史アマ
- 関矢寛之アマ
- 竹内広也アマ
- (6組参加4名)
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奨励会員 |
- 山下数毅(三段、5組在籍)
- 齊藤優希(三段、6組参加、2025年4月四段昇段)
- (5組、6組参加各1名、計2名)
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次期から出場 |
【2025年04月昇段者】(2名):
齊藤優希(第38期は三段として出場)、炭﨑俊毅(第39期からの出場)
【2025年10月昇段者】(2-3名):(いずれも第39期からの出場)
|
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★挑戦者 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
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名人 | |
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A級 | |
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B級1組 | |
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B級2組 | |
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C級1組 | |
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C級2組 | |
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フリー クラス
|
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次期から 出場
|
フリークラス 昇級者 | |
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奨励会三段リーグ 上位者 |
- 2025年10月1日昇段者(2-4名)
- 2026年4月1日昇段者(2-3名)
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先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの(数字)は在籍可能残り年数(2025年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |
一般棋戦優勝 1回 |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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関連項目 | |
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四段の棋士・三段リーグ上位者・女流棋士・アマチュアが参加。 |
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将棋大賞 |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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前年度の活躍が対象 |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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前年度の活躍が対象。< >は特別賞。 |
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