禁断の魔術 ガリレオ8
『禁断の魔術 ガリレオ8』(きんだんのまじゅつ ガリレオエイト)は、東野圭吾の連作推理小説である。2012年10月15日に文藝春秋から単行本が刊行された[1]。ガリレオシリーズ第8弾で、短編集としては5作目となる。 「曲球る」と「念波る」の2編は、2013年にテレビドラマ『ガリレオ』第2シリーズで映像化された。 単行本『虚像の道化師 ガリレオ7』を再編集し、2015年3月10日、文春文庫版オリジナルとして文藝春秋から発刊する際に、「透視す」「曲球る」「念波る」の3編も併せて収録された。残る「猛射つ」は大幅に改稿して長編小説『禁断の魔術』とし、2015年6月10日に文春文庫版オリジナルとして文藝春秋から発刊された[2]。 『禁断の魔術』は2022年9月17日にテレビドラマ『ガリレオ』のスペシャルドラマとして映像化・放送された。 概要本作はシリーズ初となる全編書き下ろしとなる。著者曰く、前作『虚像の道化師 ガリレオ7』でシリーズの短編は終わりと考えていたが、小説の神様の気まぐれを思い知らされた作品。当初は『虚像の道化師』もこれまでの短編同様に5編収録させようと考えていたが、湯川や草薙の人生や生活を積極的に書こうという想いから湧き上がったアイディアから『虚像の道化師』での4編からさらに4編書き上がり、合計すると原稿用紙1000枚超の分厚い本になるため、本作と『虚像の道化師』の2冊に分けたという背景がある[3]。 「透視す」は「湯川が透視能力を持つホステスにその力を披露されたらどんな反応をするのか」という着想から湯川が挑む謎が殺人に関係しなくてもいいと考えた末に出来上がった。他にも「曲球る」で湯川が殺人事件解決以外に人助けのために科学の知識を活かしたり、「念波る」で湯川がこれまでの事件とは異なるアプローチをする様が描かれている。そして「猛射つ」では「自分のせいで殺人犯になりかねない人間がいたら湯川はどうするのか」というアイデアから[4][3]、犯罪に手を染めようとする信頼する愛弟子に対しての湯川の意外な行動が描かれる。 2012年10月25日に発表された10月29日付のオリコン“本”ランキングBOOK(総合)部門で、4万6000部の売上により首位を獲得。3月発売の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』と8月発売の『虚像の道化師 ガリレオ7』に続く首位となり、一人の作家が発表した作品が3作連続の首位獲得をするのは今回が初となる[5]。 →湯川学、草薙俊平、内海薫、間宮慎太郎についてはガリレオシリーズ#登場人物参照
各章あらすじ第一章・透視す(みとおす)草薙に連れられて彼の行きつけである銀座のクラブ「ハープ」に通うようになった湯川は、そこでホステスのアイの接客を受けた。ホステスのアイは、湯川に出させた名刺を見ることなく彼の名字を言い当て、透視の芸を披露した。湯川は一度、アイがコートの裏側の刺繍を見たのだと推理して納得するが、帰り際に自分の名前や職業まで言い当てられたため、驚愕する。 それから4か月後、アイこと相本美香が殺害された。草薙たちは顔見知りによる犯行として捜査にあたる。美香は、死者への同情を抜きにしても誰からも慕われる女性であり、トラブルといえば遠隔地に住む継母との間に確執があった程度だったため、彼女を殺害する動機を持つ人物の特定に難航する。 やがて草薙たちは、美香の足の指の間に付着していた煙草の葉を手がかりに犯人を突き止め、逮捕した。動機は、例の透視によって美香に横領を見抜かれたことだった。しかし、その透視のからくりが分からずに行き詰まった草薙は、湯川に相談する。草薙から経緯を聞いた湯川は、透視の謎と美香が抱える一つの問題に光を当てていく。
第二章・曲球る(まがる)プロ野球選手の柳沢忠正の妻・妙子が、スポーツクラブの駐車場で撲殺された。捜査の結果、アイドルグループの追っかけに必要な資金繰りのため、スポーツクラブの元警備員が犯行に及び逮捕された。これにより、事件は解決を迎えたかに見えた。しかし、妙子は殺害される直前にデパートで置時計を購入していた。その購入目的について、柳沢自身も全く心当たりがなく、謎は残されたままとなった。 野球選手としての限界を感じていた柳沢は、遺留品の置時計を返却に訪れた草薙に、話の流れから湯川を紹介された。そして、柳沢は湯川から科学的な監修を受けることになる。その後、柳沢の様子を見に来た湯川は、彼の車に錆が出ているのを発見した。その車が事件当日、妙子が乗っていたものだと知った湯川は、草薙や内海と共に妙子の行動を調べ始める。そして、置時計購入の背景に秘められた妙子の想いが、ついに明らかになる。
第三章・念波る(おくる)都内に住む女性が帰宅時、何者かに襲われ意識不明の重体となった。この事件を最初に知ったのは、被害者・磯谷若菜の双子の妹、御厨春菜だった。遠く離れた長野の自宅で、姉からのテレパシーによって事件を知り、犯人の顔のイメージまでも受け取ったという。 捜査報告書にテレパシーなどと記述するわけにはいかない草薙と内海は、なんとか論理的な説明をつけようと春菜を湯川の研究室へ連れて行く。ところが、湯川は草薙たちの思惑とは裏腹に、春菜のテレパシー能力の研究に本格的に乗り出す。
第四章・猛射つ(うつ)ある年の5月、青年・古芝伸吾は理工学部物理学科第十三研究室を訪れた。伸吾は高校時代に湯川に出会い、彼から物理学を学んだことから、その魅力に感銘を受けて帝都大学を受験し、合格を果たした。そして、湯川のもとへ挨拶にやって来たのだ。しかしその日、伸吾の姉・秋穂は都内のホテルで死亡した。 約10か月後の3月、フリーライターが殺害される事件が発生した。容疑者として捜査線に浮上したのは、湯川の教え子である古芝伸吾だった。伸吾は姉が死亡した直後に帝都大学を退学し、金属加工品製造会社「クラサカ工機」へ入社したが、警察が捜査を始めた直後に失踪した。その後の捜査で、伸吾が殺人を計画していることが判明した。しかもその殺人方法は、かつて湯川に教わった技術を改良したものであり、すべては姉の敵討ちに起因していた。
書誌情報
脚注注釈出典
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