2011年のナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ
2011年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは9月30日に開幕した。ナショナルリーグの第42回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 42nd National League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、10月9日から16日にかけて計6試合が開催された。その結果、セントルイス・カージナルス(中地区)がミルウォーキー・ブルワーズ(同)を4勝2敗で下し、5年ぶり18回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのは、1982年のワールドシリーズ以来29年ぶり2度目。その当時ブルワーズはアメリカンリーグに加盟していたが、1997年シーズン終了後のエクスパンションにともないナショナルリーグへ転籍した。もし今シリーズをブルワーズが制すれば、史上初めて両リーグからのワールドシリーズへの出場を果たすところだったが[3]、カージナルスが阻止した。カージナルスは今シリーズで、先発投手が誰一人として6回以降のマウンドに立たなかったにもかかわらずポストシーズンのシリーズを制した史上初のチームとなった[4]。シリーズMVPには、第1戦と第6戦でそれぞれ3点本塁打を放つなど、6試合で打率.545・3本塁打・9打点・OPS 1.691という成績を残したカージナルスのデビッド・フリースが選出された。このあとカージナルスは、ワールドシリーズでもアメリカンリーグ王者テキサス・レンジャーズを4勝3敗で下し、5年ぶり11度目の優勝を成し遂げた。
両チームの2011年
10月7日、まず先に行われた試合でブルワーズ(中地区優勝)が、そのあとの試合ではカージナルス(中地区2位=ワイルドカード)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
ブルワーズは、2010年は77勝85敗と負け越し監督のケン・モッカを解任、ロン・レニキーを後任に据えた。2011年は中心打者プリンス・フィルダーのFA前最終年となることから、将来を犠牲にしてでも優勝を狙うことにし、弱点の先発ローテーションを強化するためにトレードで複数の若手有望株を放出、ザック・グレインキーやショーン・マーカムを獲得した[5]。そのグレインキーが怪我で開幕から1か月出遅れ、チームも4月30日からの7連敗で地区5位まで沈むなど序盤はもたつくが、その後は盛り返してカージナルスとの首位争いを展開、前半戦終了時には49勝43敗で首位タイに並ぶ。打線では中軸のライアン・ブラウンやフィルダーに加え、1番打者リッキー・ウィークスも好調な打撃でチームを牽引した[6]。さらに後半戦突入前、フランシスコ・ロドリゲスを獲得したことで救援投手陣の層も厚くなり、チーム防御率は前半戦と後半戦で比較すると1点近く向上した[7]。8月は21勝7敗と勝率も上昇し、同月終了時にはカージナルスとのゲーム差が8.5まで開く。そのまま首位を維持した末、9月23日に地区優勝を決めた[8]。平均得点4.45はリーグ5位、防御率3.63はリーグ7位。打線は本塁打数リーグ最多だったがそれ一辺倒とはならず、ブラウンやカルロス・ゴメスらの足を絡めた攻撃も見せた[7]。投手陣では先発登板したのが6人のみと、ローテーションが年間を通して安定していた[9]。地区シリーズではアリゾナ・ダイヤモンドバックスを3勝2敗で下した[10]。
カージナルスは2010年、86勝76敗の地区2位でポストシーズンに5.0ゲーム差届かず。オフにはランス・バークマンやライアン・テリオを獲得し、守備力の低下と引き換えに打線を強化した[11]。その後は誤算が相次ぐ。スプリングトレーニングではエース右腕アダム・ウェインライトがトミー・ジョン手術でシーズン絶望となり[12]、開幕後も中心打者アルバート・プホルスの打撃不振や抑え投手ライアン・フランクリンの度重なる救援失敗などに見舞われた[13]。ただ、バークマンが攻守に期待以上の働きを見せてチームを牽引し[14]、前半戦終了時点では49勝43敗でブルワーズと地区首位タイに並んだ。後半戦に入り、プホルスはOPS.960と不振を克服したものの[15]、チームはブルワーズの勝率上昇についていけず2位に定着、8月終了時には地区首位ブルワーズにも、ワイルドカード争いの首位アトランタ・ブレーブスにも8.5ゲーム差をつけられる。しかし9月はカージナルスの追い上げとブレーブスの失速が重なって両者のゲーム差が縮まっていき、残り1試合で順位が並ぶ。そしてレギュラーシーズン最終日の9月28日、カージナルスの勝利とブレーブスの敗北により逆転、カージナルスがワイルドカード枠でポストシーズンへ滑り込んだ[16]。平均得点4.70はリーグ最高、防御率3.74はリーグ8位。クリス・カーペンターの好投が終盤のチームを勢いづけ、最終戦も彼の完封勝利で締めくくられた[15]。地区シリーズではフィラデルフィア・フィリーズを3勝2敗で下した[17]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、ブルワーズがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は18試合対戦し、9勝9敗の五分だった[18]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
地区シリーズのロースターからは、ブルワーズは変更はない[19]。これに対しカージナルスは、投手のジェイク・ウェストブルックと内野手のスキップ・シューマッカーを外し、いずれも投手のランス・リンとカイル・マクレランを加えた。地区シリーズでシューマッカーは、日によって二塁を守ったり外野を守ったりしながら全5試合に出場し、10打数6安打3打点という成績を残した。ただ最終第5戦の第2打席で右脇腹を痛め、その裏の守備から途中交代していた。彼が離脱したことにより今シリーズでは、二塁にはライアン・テリオとニック・プントを併用し[20]、外野手が必要になった場合にはプントをまわす見込みとなった[19]。代わりの野手を入れずに右投手をふたり加えたのは、ブルワーズの右の強打者を封じるためだという[21]。ウェストブルックは地区シリーズでの登板機会がなく、かつこの年はブルワーズ相手に24.0イニングで被打率.326・被長打12本と打ち込まれていた[22]。
試合結果
2011年のナショナルリーグ優勝決定戦は10月9日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
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10月09日(日) |
第1戦 |
セントルイス・カージナルス |
6-9 |
ミルウォーキー・ブルワーズ |
ミラー・パーク |
|
10月10日(月) |
第2戦 |
セントルイス・カージナルス |
12-3 |
ミルウォーキー・ブルワーズ
|
10月11日(火) |
|
移動日 |
|
10月12日(水) |
第3戦 |
ミルウォーキー・ブルワーズ |
3-4 |
セントルイス・カージナルス |
ブッシュ・スタジアム
|
10月13日(木) |
第4戦 |
ミルウォーキー・ブルワーズ |
4-2 |
セントルイス・カージナルス
|
10月14日(金) |
第5戦 |
ミルウォーキー・ブルワーズ |
1-7 |
セントルイス・カージナルス
|
10月15日(土) |
|
移動日 |
|
10月16日(日) |
第6戦 |
セントルイス・カージナルス |
12-6 |
ミルウォーキー・ブルワーズ |
ミラー・パーク
|
優勝:セントルイス・カージナルス(4勝2敗 / 5年ぶり18度目)
|
第1戦 10月9日
第2戦 10月10日
第3戦 10月12日
第4戦 10月13日
第5戦 10月14日
第6戦 10月16日
脚注
- ^ Associated Press, "MLB names crew chiefs for LCS," ESPN.com, October 8, 2011. 2021年7月16日閲覧。
- ^ FOXSPORTS, "NLCS PREVIEW: SIZING UP CARDS, BREWERS," FOX Sports, October 8, 2011. 2021年7月16日閲覧。
- ^ Tyler Kepner, "A Gritty Bullpen of Fierce Creatures," The New York Times, October 17, 2011. 2021年7月16日閲覧。
- ^ Chris Jenkins, "Royals trade Greinke to Brewers," New York Post, December 19, 2010. 2023年8月29日閲覧。
- ^ "Fielder, Weeks, Braun, home play are first-half highlights for Brewers," Milwaukee Journal Sentinel, July 13, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ a b 嶋田剛司 「30球団の通信簿 ミルウォーキー・ブルワーズ 本拠地で勝率7割以上を記録し、29年ぶりの地区優勝」 『月刊スラッガー』2011年12月号、日本スポーツ企画出版社、2011年、雑誌15509-12、74頁。
- ^ Associated Press, "Ryan Braun's late homer helps Brewers wrap up NL Central title," ESPN.com, September 24, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ Kevin Goldstein, Ben Lindbergh, and ESPN Insider, "Kiss'Em Goodbye: Milwaukee Brewers," Baseball Prospectus, October 19, 2011.
- ^ Reuters Staff, "Brewers edge Diamondbacks to end playoff drought," Reuters, October 8, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ Jeff Gordon, "Cards sacrifice defense for offense, toughness," St. Louis Post-Dispatch, December 5, 2010. 2023年8月29日閲覧。
- ^ Cliff Corcoran, "Wainwright injury deals crippling blow to Cardinals' chances," Sports Illustrated, February 23, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ Rick Hummel, "McClellan has been a big boost," St. Louis Post-Dispatch, May 5, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ foxsports, "Cardinals ride Berkman's huge first half," FOX Sports, July 12, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ a b 豊浦彰太郎 「30球団の通信簿 セントルイス・カージナルス 9月8日の8.5ゲーム差を最終日に逆転してワイルドカード奪取」 『月刊スラッガー』2011年12月号、日本スポーツ企画出版社、2011年、雑誌15509-12、76頁。
- ^ Associated Press, "Braves loss caps Cards' incredible run to playoffs," ESPN.com, September 29, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ Reuters Staff, "Cardinals win thriller to seal division title," Reuters, October 8, 2011. 2023年8月29日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年7月16日閲覧。
- ^ a b Associated Press, "Cards add Kyle McClellan, Lance Lynn," ESPN.com, October 9, 2011. 2023年8月16日閲覧。
- ^ Staff Reports, "McClellan, Lynn added to fortify bullpen," St. Louis Post-Dispatch, October 9, 2011. 2023年8月16日閲覧。
- ^ Drew Silva, "Cardinals add two right-handed relievers to NLCS roster," NBC Sports, October 9, 2011. 2023年8月16日閲覧。
- ^ Joe Strauss, "Schumaker probably will miss NLCS," St. Louis Post-Dispatch, October 9, 2011. 2023年8月16日閲覧。
外部リンク
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球団 | |
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できごと | |
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文化 | |
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