2018 FIFAワールドカップ日本代表 (2018フィファワールドカップにほんだいひょう)は、2018年にロシアで開催されたFIFAワールドカップのサッカー日本代表である。
概要
監督交代
ワールドカップ6大会連続出場を果たした日本は、その行程で2度の監督交代という激震に見舞われた。前回ブラジル大会後に代表監督に就任したハビエル・アギーレはレアル・サラゴサ監督当時の八百長疑惑が取り沙汰され、就任半年後に契約を解除された[1]。急遽招聘したヴァイッド・ハリルホジッチの指揮下でアジア予選を勝ち抜き本大会出場を決めたが、開幕2カ月前に「選手とのコミュニケーションや信頼関係」の問題からハリルホジッチは解任された[2]。そして、1996年アトランタ五輪で「マイアミの奇跡」を起こし、日本サッカー協会技術委員長としてハリルホジッチを支えていた西野朗が新監督に就任した[3]。日本人監督としてワールドカップに参加するのは岡田武史(1998年・2010年)に次いで2人目となる。
選手選考
2018年5月14日、国際サッカー連盟 (FIFA) へ予備登録メンバー35人のリストを提出[4][5]。西野監督は「シーズンは国内外で続いているし、動揺を避けたかった」という理由からリストを非公開にした[6]。その後、5月30日のガーナとのテストマッチに臨む27人を招集して国内キャンプを行い、ガーナ戦翌日の5月31日に最終登録23人を発表するという手順になった[7]。なお、35人リストの中から今野泰幸と小林悠[8]、27人リストの中から青山敏弘が怪我のため候補から外れている[9]。
最終選考にサプライズはなく、日本代表として経験と実績のある選手が多く選ばれた。マスコミが「ビッグ3」と呼ぶ本田圭佑・香川真司・岡崎慎司がメンバー入りし[10]、リオ五輪世代から4人[注 1] が初選出される一方、ハリルホジッチが起用していた久保裕也・浅野拓磨、井手口陽介・杉本健勇・中島翔哉ら若手は選外となった。この選考に対し、世間から「年功序列」「忖度」という批判も受けた[11][12]。平均年齢は28.3歳で、2010年大会の27.8歳を上回る過去最高[13]。ワールドカップ経験者は11人で、うち5人が3大会連続となった。
なお、深刻な怪我を負った等の理由がある場合、日本の初戦 (6月19日)の24時間前までは登録メンバーの交代が認められている。ガーナ戦に招集された26人のうち三竿健斗、浅野拓磨、井手口陽介が最終選考から洩れ、浅野と井手口がバックアップメンバーとしてチームに帯同した[14]。また、ロシア遠征中のU-19日本代表チームがトレーニングパートナーを務めた[15]。浅野は4年後のカタール大会で登録メンバーに選出。また、当時のU-19代表メンバーの中から久保建英と伊藤洋輝がカタール大会登録メンバーに選ばれた。
大会までの軌跡
直前の監督交代により、チームは1からの再構築を余儀なくされた。本大会前のテストマッチとして行われたガーナ戦(5月30日)とスイス戦(6月8日)で西野監督は攻撃的MFに本田圭佑と宇佐美貴史を抜擢し、2人を中心に攻撃を組み立てようとしたが、チームは機能せず両試合を0-2で落として連敗を喫し先行きが危ぶまれた。
続くパラグアイ戦(6月12日)ではメンバーを入れ替え、攻撃的MFには(左から)乾貴士、香川真司、武藤嘉紀が並んだ。海外で各々が培った組織的守備を活かしたショートカウンターで得点を量産、4-2で勝利し希望を繋いだ。この試合で活躍した攻撃的MFのうち乾、香川の二人が本大会でもスターティングメンバーに選ばれた。一方で武藤が務めた右サイドハーフのポジションは原口元気がスタメンに選ばれた。
3戦を通してDF(センターバック)は吉田麻也を軸に、槙野智章と植田直通、昌子源が争い、最終的には昌子がスタメンに選ばれた。守備的MF(ボランチ)は長谷部誠を軸に、大島僚太、柴崎岳、山口蛍がテストされたが、最終的には柴崎がスタメンに選ばれた。
大会経過
グループリーグで日本はグループHに入り、コロンビア(FIFAランク16位)、セネガル(同27位)、ポーランド(同8位)と対戦した。6月7日付FIFAランク[16] 61位の日本にとって、すべてが格上との対戦となる。
- 6月19日 グループH コロンビア戦(サランスク)
- 初戦は4年前のブラジル大会グループC第3戦で対戦し、1-4と大敗したコロンビアとの再戦となった。開始早々、コロンビアの選手が決定機をハンドで阻止したとして一発退場になり、この反則で与えられたPKを香川が決めて日本が先制した。直接FKを決められ同点に追いつかれるが、73分にCKを大迫勇也が頭で合わせて2-1と勝ち越し。ワールドカップ史上初めて、アジアのチームが南米のチームを破った歴史的な勝利となり、サランスクの奇跡と呼ばれた。[17]。
- 6月24日 グループH セネガル戦(エカテリンブルク)
- 第2戦ではサディオ・マネ、カリドゥ・クリバリら名手擁するセネガルと対戦。セネガルは初戦でポーランドを破っていた。マネのゴールで先制を許すも、34分に乾のシュートで同点に追いつく。後半もセネガルに勝ち越されるが、78分に乾のアシストから途中出場の本田が同点ゴールを決めた(本田はワールドカップ3大会連続得点)。2度リードを許しながらも2-2の引き分けに持ち込み、勝ち点4でセネガルと並びグループ首位に立った。
- 6月28日 グループH ポーランド戦(ボルゴグラード)
- 第3戦では世界的FWロベルト・レヴァンドフスキ擁するポーランドと対戦。ポーランドは2連敗で既に敗退が確定していた。引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる日本は、1・2戦からスタメンを6人入れ替えたが、59分にポーランドに先制される。その頃、同時刻に他会場で行われているセネガル×コロンビア戦でコロンビアが先制し、両会場ともこのままのスコアで終了すれば、日本が決勝トーナメントに進出する希望が出てきた。西野監督は「攻めないこと」を指示し、1点負けている日本がボールを廻しながら時間を消費し、観客席からブーイングを浴びながら試合が終了した。
グループHはコロンビアが2勝1敗(勝ち点6)で1位通過。日本とセネガルが1勝1敗1分け(勝ち点4)、得失点差(0)・総得点数(4)・直接対決の結果(引き分け)で並んだが、警告や退場数によるフェアプレーポイントで日本が2ポイント優位になり(日本4:セネガル6)、日本が2位で決勝トーナメントに進出した[18]。フェアプレーポイントが順位判定の決め手となったのは、ワールドカップ史上初めてのことだった[19]。日本のグループリーグ突破は2002年日韓大会・2010年南アフリカ大会に続く2大会ぶり3回目。
- 7月2日 決勝トーナメント1回戦 ベルギー戦(ロストフ・ナ・ドヌ)
- 初のベスト8入りを目指す日本は、グループGを3連勝で1位通過したベルギーと対戦した。エデン・アザール、ケヴィン・デ・ブライネ、ロメル・ルカク、ティボー・クルトワといった世界的スターを揃え「黄金世代」と称されたベルギーを相手に前半を0-0で折り返すと、後半開始間もなく原口元気(後半3分)と乾貴士(後半7分)がゴールを決め2-0とリードした。しかし、後半24分(フェルトンゲン)と29分(フェライニ)にセットプレーから立て続けにヘディングで2失点し、日本は同点に追いつかれた。後半アディショナルタイム4分、ラストプレーで日本はCKのチャンスを掴むが、キッカー本田圭佑の蹴ったボールはGKクルトワにキャッチされ、ベルギーがカウンターから最後はシャドリがきっちりゴールを仕留め、日本は2-3で敗れた。W杯決勝トーナメントにおいて2得点差からの逆転は、1970年メキシコ大会でイングランドが西ドイツに2-3で敗れた準々決勝戦以来、じつに48年ぶりの出来事であった。
日本は試合には敗れたものの、その評価は高く、海外メディアから称賛する報道が相次いだ[20]。
登録メンバー
最終登録メンバー
- ゴールキーパー以外の選手はポジションの区別なく「フィールドプレーヤー(FP)」と表記される[21][22]。なお、FIFA公式サイトでは従来のポジション名を掲載しており、参考として括弧書きで示す[23]。
- 「年齢」「所属クラブ」は、大会開幕時点(2018年6月14日)。
- 「出場状況」欄の「〇」はフル出場、「
」は途中交代アウト、「
」は途中交代イン、「
」は獲得得点をそれぞれ示す。
- 「備考」欄の「
」は、キャプテン(主将)。
バックアップメンバー
トレーニングパートナー
スタッフ
- 西野朗 (監督)
- 手倉森誠 (コーチ)
- 森保一 (コーチ)
- 浜野征哉 (GKコーチ)
- 下田崇 (GKコーチ)
- 早川直樹 (コンディショニングコーチ)
- 小粥智浩 (コンディショニングコーチ)
試合結果
日時はすべて現地時間。
グループ H
順
|
チーム |
試 |
勝 |
分 |
敗 |
得 |
失 |
差 |
点
|
1
|
コロンビア
|
3 |
2 |
0 |
1 |
5 |
2 |
+3 |
6
|
2
|
日本
|
3 |
1 |
1 |
1 |
4 |
4 |
0 |
4
|
3
|
セネガル
|
3 |
1 |
1 |
1 |
4 |
4 |
0 |
4
|
4
|
ポーランド
|
3 |
1 |
0 |
2 |
2 |
5 |
−3 |
3
|
コロンビア vs 日本 (Match 16)
Man of the Match:
大迫勇也 (日本)[27]
副審:[27]
ユレ・プラプロトニク (スロベニア)
ロベルト・ヴカン (スロベニア)
第4の審判:
メフディ・アビド・シャレフ (アルジェリア)
予備副審:
アヌアル・フミラ (チュニジア)
ビデオ副審:
ダニー・マッケリ (オランダ)
アシスタントビデオ副審:
バスティアン・ダンケルト (ドイツ)
サンデル・ファン・ルーケル (オランダ)
フェリックス・ツバイヤー (ドイツ)
|
日本 vs セネガル (Match 32)
Man of the Match:
サディオ・マネ (セネガル)[29]
副審:[29]
エレニト・ディ・リベラトーレ (イタリア)
マウロ・トノリーニ (イタリア)
第4の審判:
アブドゥルラフマン・アル=ジャシム (カタール)
予備副審:
タレブ・アル=マーリ (カタール)
ビデオ副審:
マッシミリアーノ・イラッティ (イタリア)
アシスタントビデオ副審:
チアゴ・マルチンス (ポルトガル)
エルナン・マイダナ (アルゼンチン)
パウロ・ヴァレーリ (イタリア)
|
日本 vs ポーランド (Match 47)
Man of the Match:
ヤン・ベドナレク (ポーランド)[31]
副審:[31]
ジェルソン・ドス・サントス (アンゴラ)
ザケレ・シウェラ (南アフリカ)
第4の審判:
リカルド・モンテーロ (コスタリカ)
予備副審:
フアン・カルロス・モーラ (コスタリカ)
ビデオ副審:
ダニエレ・オルサート (イタリア)
アシスタントビデオ副審:
ゲリー・ベルガス (ボリビア)
カルロス・アストローサ (チリ)
パオロ・ヴァレーリ (イタリア)
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決勝トーナメント
ラウンド16: ベルギー vs 日本 (Match 54)
脚注
注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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1910年代 |
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1920年代 |
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1930年代 |
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1940年代 |
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1950年代 |
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1960年代 |
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1970年代 |
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1980年代 |
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1990年代 |
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2000年代 |
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2010年代 |
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2020年代 |
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ワールドカップ代表 |
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記録と統計 |
A代表 | |
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女子A代表 | |
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U23代表 | |
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女子U23代表 | |
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U20代表 | |
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女子U20代表 | |
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U17代表 | |
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女子U17代表 | |
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フットサル代表 | |
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女子フットサル代表 | |
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ビーチサッカー代表 | |
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eサッカー代表 | |
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出場選手 | |
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関連項目 | |
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