かもめ (列車)
かもめは、九州旅客鉄道(JR九州)が主に西九州新幹線の武雄温泉駅・新大村駅 - 長崎駅間で運行している特別急行列車の愛称。 本項では、1953年から山陽新幹線全線開業の1975年まで京都と博多を結んでいた在来線特急「かもめ」、1976年から西九州新幹線開業までの間、主に鹿児島本線・長崎本線博多駅 - 長崎駅間で運行されていた在来線特急「かもめ」、福岡県と佐賀県を結ぶ在来線特急のうち、武雄温泉駅発着で運行されている「リレーかもめ」、佐賀駅・肥前鹿島駅発着で運行されている「かささぎ」、その他長崎本線における優等列車の沿革についても記述する。 概要特急「かもめ」は、1976年7月1日に長崎本線と佐世保線全線の電化により、それまで小倉駅・博多駅 - 長崎駅間で運行していた急行「出島」の一部を特急に格上げする形で、7往復で運行を開始した。その後、博多駅 - 長崎駅間は、最大で26往復の運行となった。 2022年9月23日のダイヤ改正において、西九州新幹線の武雄温泉駅 - 長崎駅間が開業し、「かもめ」の列車名は新幹線に移行。武雄温泉駅から博多方面へ向かう既存の在来線特急については「リレーかもめ」の列車名で運転され、武雄温泉駅における同一ホームでの対面乗り換えで接続する形となった[1][注 1]。この2列車は事実上の同一列車として扱い、直通ではないが長崎発は「かもめ博多行き」とし、博多発は「リレーかもめ長崎行き」として運行する。接続先列車とは号数も統一させている。ただし「リレーかもめ」の本数は新幹線「かもめ」の本数より少なく、この分については特急「みどり」を「みどり(リレーかもめ)」として接続列車と扱うことで対応している。また、福岡県と佐賀県を結ぶ特急のうち、佐賀駅・肥前鹿島駅発着の列車には「かささぎ」の名称が与えられた[2]。 運行概況2022年9月23日時点の状況[3]を示す。 定期列車は武雄温泉駅 - 長崎駅間で22往復が設定されているほか、朝に下り2本・夜に上り1本が新大村駅 - 長崎駅間で運転される。号数は、100番台を独自に付番している新大村駅発着列車を除き、「リレーかもめ」および「みどり(リレーかもめ)」に合わせられている。 リレーかもめ・かもめ停車駅「かもめ」は各駅停車を主体とするが、約半数の列車が嬉野温泉駅を通過する。また、朝夕には同駅に加え新大村駅も通過となる便が存在する。
使用車両・編成熊本総合車両所大村車両管理室所属のN700S系6両編成が充当される。長崎方先頭車が1号車で、全車普通車。車椅子対応座席は3号車に設置されている。 1 - 3号車が指定席、4 - 6号車が自由席となるのが基本であるが、新大村駅発着列車は全車自由席となる。 在来線特急「かもめ」「リレーかもめ」「かささぎ」かもめ(1976年 - 2022年)
2022年9月22日時点で、「かもめ」は博多駅 - 長崎駅間22往復(1 - 46・48号。15・28・36号は欠番、多客期に臨時列車として運転)、門司港駅→佐賀駅間下り1本(101号)、博多駅 - 佐賀駅間下り1本・上り2本(下り103号・上り100・108号)、肥前鹿島駅→博多駅間上り1本(102号)と、平日のみ佐賀駅→吉塚駅間上り1本(104号)、土曜・休日のみ佐賀駅→博多駅間に上り1本(106号)が運行されていた。なお101号は2020年3月14日ダイヤ改正時点で、列車種別を変更せずに博多駅を跨いで運行する唯一の定期運行の在来線特急列車であった。[4]「かもめ」として列車種別を変えずに博多駅を跨いで運転する列車は2005年2月28日以来[5]の運転となった。 2022年9月23日に西九州新幹線の武雄温泉駅 - 長崎駅間が部分開業したことにより「かもめ」は新幹線にその名を継承し、在来線特急「かもめ」は廃止された。 停車駅門司港駅 - 門司駅 - 小倉駅 - 戸畑駅 - 黒崎駅 - 折尾駅 - 赤間駅 - 福間駅 - (吉塚駅) - 博多駅 - (二日市駅) - 鳥栖駅 - 新鳥栖駅 - 佐賀駅 - (肥前山口駅) - 肥前鹿島駅 - 諫早駅 - 浦上駅 - 長崎駅
使用車両・編成
南福岡車両区に所属する885系電車・787系電車・783系電車が充当されていた。当時のJR九州管内を運行する特急列車の中では唯一、3形式の車両が使用されていた。
885系は2000年3月11日の車両投入時より使用されていた。当初は黄帯の「白いかもめ」編成(1次車・6両編成)のみで運用されていたが、2次車である青帯の「白いソニック」編成が5両から6両に増結されてからは次第に「白いソニック」での運行が増えた。その後、1次車と2次車は共通運用となり、1次車は青帯化され、ロゴも「KAMOME EXPRESS」から共通運用を前提とした「AROUND THE KYUSHU」ロゴに変更されている。車両投入以来、博多駅 - 長崎駅間の列車のうち16往復に使われ続けてきたが、2020年3月14日のダイヤ改正で13往復に削減され、2021年3月13日ダイヤ改正では11往復に減少していた。 787系は4人用グリーン個室とDXグリーン席を備えた7両編成(100・103号のみ6両編成)で運転されていた。100号は「みどり1・10号」が「ハウステンボス」を併結する日に限り、783系「みどり」編成+「ハウステンボス」編成で運転された(「かもめ100号」は博多駅に到着後、「みどり1号」の運用に入るため)。 7両編成は長崎駅発着の「かもめ」を主体とし、間合い運用として深夜・早朝の「みどり」「きらめき」の運用にも入っていた。2021年3月12日までは「有明」の運用もあった。6両編成は日豊本線に乗り入れる「にちりん」用の編成で、日豊本線での運用を主体とし、「みどり」「きらめき」や佐賀駅発着の「かもめ」100・103号(長崎駅への定期乗り入れはない)でも運転されていた。 1994年3月のダイヤ改正時に単独運行の列車5往復に投入されたが(当時連結していたビュフェも営業していた)、単独運行「かもめ」の783系への統一に伴い1996年3月15日をもって撤退した。その後、2001年3月3日に「有明」用の4両編成が博多駅 - 肥前山口駅間の列車1往復に充当されたが、これもこの年の10月5日に撤退していた。2011年3月12日の九州新幹線全線開業に伴い、廃止または大幅削減となった「リレーつばめ」・「有明」用の7両編成から付随車1両を抜いた6両編成が充当され、787系は9年半ぶりに「かもめ」の定期運用に復帰した。なお、885系と783系に予備車が少ないため、それ以前にも臨時列車で運用されたことがある。2014年のダイヤ改正からは従来の6両編成から7両編成に増結された(繁忙期はさらに1両増結した8両編成で運転される場合があった)。2018年以降は佐賀駅発着列車に主に「にちりん」に使用される6両編成が再び運用され始めていた。 783系は104号のみの運用で、「みどり」用の4両編成で運行されている。各車両とも中央の乗降口を境に佐賀寄りのA室と門司港寄りのB室に分かれており、駅や車内でもそのように案内されている。2017年3月4日のダイヤ改正まで「みどり」編成+「ハウステンボス」編成の8両編成で運転されていた鹿児島本線長洲駅始発の特急「有明」4号のうち、「ハウステンボス」編成を佐賀駅始発の「かもめ」104号(新設、平日のみ運転)に変更して、鳥栖駅→吉塚駅間は「有明4号・かもめ104号」として併結運転を行うようになった。その後、2018年3月17日のダイヤ改正で両編成とも「かもめ」104号になったのを経て、2020年3月14日ダイヤ改正で「みどり」編成のみでの運転に変更された。 1989年の投入当初は、先頭車の帯色を青と赤で塗り分けた専用編成(7両・全室グリーン車・繁忙期9両)が使用されていた。1990年3月から1994年7月まで、車両愛称の「ハイパーサルーン」にちなみ「ハイパーかもめ」として運転されていた。運転開始時よりカフェテリアの営業も行っていたが、1992年に営業を終了している。 その後、前述の通り1996年に単独運行の「かもめ」は783系6両編成(繁忙期は一部8両編成に増結)に統一されたが、2000年3月11日に885系が投入されると783系は「みどり」併結列車での運用がほとんどとなり、編成も4両編成となった。ただし、多客期に5両編成で運行したのが2006年9月以降は常態化し、2007年3月18日のダイヤ改正で正式に5両編成に増結された。2011年3月12日のダイヤ改正で「みどり」との併結運行が終了したことに伴い、783系は佐賀駅発着2往復のみの運転に縮小され、編成も再び4両となった。なお、従来用いられていた5両編成は日豊本線で運行される特急列車に転用された。2016年3月26日のダイヤ改正で1往復が5両編成に変更され、2017年3月4日のダイヤ改正で104号が運行を開始した。2018年3月17日のダイヤ改正で783系は104号のみとなったが、2020年3月14日のダイヤ改正で上記の通り787系の運用を1往復置き換えた。これは翌年に再び787系に戻されており、現在は再び104号のみとなった。 なお885系と783系は諫早駅 - 長崎駅間運転の200番台に充当されたこともあるが、200番台ではグリーン車は締切扱いのため利用できなかった。 1976年から2000年までは485系電車も使用されていた。JR九州は1990年以降、自社所有の485系を外装を赤一色にするなどのリニューアルを施工し、「かもめ」塗装の車両に関しては「KAMOME EXPRESS」の愛称があった。しかし「KAMOME EXPRESS」車両は単独運行の「かもめ」の車両更新が進んだことから1996年に全廃され、その後は2000年の485系撤退まで「にちりん」などで用いられる「RED EXPRESS」車両(「MIDORI EXPRESS」車両が組込まれることもあった[要出典])で運行された。
所要時間博多駅 - 長崎駅間の所要時間はおおよそ885系が1時間50分台、787系が2時間0分台で、臨時列車では形式を問わず2時間10分前後を要することが多かった。885系と787系の時間差は、主に肥前七浦駅 - 諫早駅間の急曲線連続区間での振り子車と非振り子車の速度制限の格差によるものである。2011年3月12日のダイヤ改正によって新鳥栖駅にも停車するようになったため、改正前より全体的に所要時間がわずかに延びたが、肥前山口駅での「みどり」との連結・切り離しが廃止されたことと、787系は基本的に肥前山口駅を通過するようになったことにより、783系が使われていた時期に比べると格差は小さくなっていた。ただし2020年3月14日のダイヤ改正以降は787系の二日市駅通過・肥前山口駅停車タイプの列車や、逆に885系の二日市駅停車・肥前山口駅通過タイプの列車が運転されており、787系でも博多駅 - 長崎駅間を1時間50分台で走破する列車があった(6・18・20・23・30・34号)。 リレーかもめ・かささぎ(2022年 - )
2022年9月23日時点の状況[6]を示す。 「リレーかもめ」の定期列車は博多駅 - 武雄温泉駅間に下り17本・上り16本、門司港駅 - 武雄温泉駅間に1往復(下り9号・上り66号)が運行されている。全列車が武雄温泉駅で新幹線「かもめ」に対面乗り換えで接続している。 「かささぎ」の定期列車は博多駅 - 肥前鹿島駅間に6往復、門司港駅→肥前鹿島駅間に下り1本(101号)、肥前鹿島駅→吉塚駅間に上り1本(104号)、小倉駅→佐賀駅間に下り1本(201号)、佐賀駅→博多駅間に上り1本(202号)が運行されている。吉塚駅終着列車は博多駅 - 吉塚駅間は無愛称の普通列車として運行する。 停車駅
→「かもめ (列車)#リレーかもめ・かもめ停車駅」を参照
門司港駅 - 門司駅 - 小倉駅 - 戸畑駅 - 黒崎駅 - 折尾駅 - 赤間駅 -(福間駅)-(香椎駅)-(吉塚駅)- 博多駅 - 二日市駅 - 鳥栖駅 - 新鳥栖駅 - 佐賀駅 - 江北駅 - 肥前鹿島駅
使用車両・編成
南福岡車両区に所属する787系電車・885系電車が充当されているほか、「かささぎ」では1本のみ783系電車も使用されている。「かもめ」時代には、485系電車も使用されていた。 787系は、「リレーかもめ」の大半と「かささぎ」の半数の列車で使用され、4人用グリーン個室とDXグリーン席を連結している。ボックスシートは「リレーかもめ」では指定席、「かささぎ」では自由席として営業している。「リレーかもめ」は8両編成、「かささぎ」は6両または8両編成で運転されている[8]。 1994年3月1日のダイヤ改正で、9両編成が「かもめ」5往復に投入され、ビュッフェも営業した(のちに7両に減車)。1996年3月16日のダイヤ改正によって、単独運行「かもめ」が783系に統一され、一度撤退した。2001年3月3日からは、「有明」用の4両編成が博多駅 - 肥前山口駅間の「かもめ」1往復に充当されたが、これも同年10月5日に撤退した。その後、2011年3月12日のダイヤ改正で、「リレーつばめ」「有明」用の7両編成から付随車1両を抜いた6両編成が「かもめ」に充当され、9年半ぶりに定期運用に復帰した。 885系は、2000年3月11日の車両投入時より「かもめ」に使用されており、西九州新幹線開業後も「リレーかもめ」「かささぎ」両列車で用いられている[8]。当初は黄帯の「白いかもめ」編成(1次車)のみ運用されていたが、2次車である青帯の「白いソニック」編成が5両から6両に増結されてからは同編成も使用された。現在は1次車と2次車は共通運用となっている。 783系は「かささぎ102号」のみの運用で、「みどり」編成と「ハウステンボス」編成を連結した8両編成で運行されている[8]。各車両とも中央の乗降口を境に肥前鹿島寄りのA室と博多寄りのB室に分かれており、駅や車内でもそのように案内されている。なお、定期「リレーかもめ」への充当はないが、臨時列車や代走で使用される場合がある。 1989年の投入当初は、先頭車の帯色を青と赤で塗り分けた専用編成(7両編成。繁忙期は9両編成)が「かもめ」で使用されていた。1990年3月から1994年7月まで、車両愛称の「ハイパーサルーン」にちなみ列車名も「ハイパーかもめ」となっていた。運転開始時よりカフェテリアの営業も行っていたが、1992年に営業を終了している。1996年に単独運行の「かもめ」は783系6両編成(繁忙期は一部8両編成)に統一されたが、2000年3月11日に885系が投入されると、783系は「みどり」併結列車での運用がほとんどとなり、編成も4両編成となった。その後、多客期の5両編成運行が2006年9月以降常態化し、2007年3月18日のダイヤ改正で正式に5両編成に増車された。2011年3月12日のダイヤ改正で「みどり」との併結運行が終了し、編成も再び4両となった。2016年3月26日のダイヤ改正では1往復が再び5両編成に変更され、2017年3月4日のダイヤ改正では「みどり」編成と「ハウステンボス」編成を連結した8両での運行となった。2020年3月14日ダイヤ改正で「みどり」用4両編成のみでの運転に変更された。 485系は、1976年から2000年まで「かもめ」で使用されていた。1990年以降、外装を赤一色にするなどのリニューアルが施工され、「かもめ」用の車両に関しては「KAMOME EXPRESS」のロゴが描かれていた。しかし「KAMOME EXPRESS」車両は1996年に全廃され、その後は2000年の485系撤退まで「にちりん」などと共通の「RED EXPRESS」車両で運行された。 沿革運行開始→「山陽本線優等列車沿革」も参照
乗り入れ再開
廃止
→詳細は「§ 夜行普通列車「ながさき」」を参照
運転再開
![]()
国鉄分割民営化後
2000年代
2010年代
2020年代
西九州新幹線「かもめ」・「リレーかもめ」
列車名の由来(五十音順)
夜行普通列車「ながさき」1976年3月1日、従来無名であった門司港駅 - 長崎駅・佐世保駅間を佐世保線・大村線経由で運行する寝台車連結の夜行普通列車に「ながさき」の愛称が与えられた。 これは、座席指定席・寝台車を連結した普通列車を旧国鉄の座席指定オンラインシステム「マルス」へ収容するための、全国的な措置である。同時に、従前は運行地域のみの発券であった夜行普通列車の寝台券の販売も、全国へ拡充されることとなった。 この経路の夜行普通列車の歴史は古く、長崎本線のルートがそれまでの早岐駅・大村駅ルートから現在の肥前鹿島駅ルートになった1934年12月の段階で、既に門司駅[注 18] - 長崎港駅[注 19]と同じ経路を通る列車として設定されていた。 「ながさき」は1984年2月1日をもって廃止されたが、36年後の2020年にYouTuberのスーツの申し入れにより、9月12日から13日にかけて門司港駅 - 長崎駅間を1往復、団体臨時列車として復活運行した。車両はキハ66系気動車2両編成が充当され、長崎→門司港の復路は夜行「ながさき」のダイヤに沿って運行された[36]。 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク |
Portal di Ensiklopedia Dunia