島根県
島根県(しまねけん)は、日本の中国地方(山陰地方)にある県。県庁所在地および最大都市は松江市。 本州西部に位置し、山陰地方の西側を占める。離島の隠岐諸島や竹島[注釈 1]なども含む。 旧令制国における出雲国・石見国・隠岐国の3国に相当する。現在でも県内の地域分類として出雲地方・石見地方・隠岐地方の3区分が用いられることがある。 名称島根県の名称の由来は、県庁の置かれた松江城が、かつて旧島根郡(嶋根郡)に属していたためとされる。「嶋根」の名は、古代の『出雲国風土記』において八束水臣津野命(やつかみずおみつののみこと)が命名したと伝えられる[1]。 1871年(明治4年)7月の廃藩置県の直後には旧松江藩の領地に『松江県』が設置された。その4ヶ月後、同年11月に松江県は周辺の他県と合併して改称し、ここに『島根県』が成立した[1]。 この改称の理由については、「明治維新において松江藩が倒幕に消極的であったため」と伝えられている[1]。 尚、松江城下町(現在の松江市)は松江城が立地する島根郡(大橋川以北。橋北)だけでなく、意宇郡(大橋川以南。橋南)にもまたがる。 地理広袤(こうぼう)国土地理院の全国都道府県市区町村別面積調によると、島根県の面積は6707.79平方キロメートルである[2]。北東方向から西南方向へかけて、細長い形に広がった県である。 国土地理院地理情報 によると島根県の東西南北それぞれの端は以下の位置で、東西の長さは155.45 km、南北の長さは326.52kmである[注釈 2]。 出雲地方
石見地方
隠岐地方自然公園
ラムサール条約登録地域気候県内全域が日本海側気候であるが、日本海側気候の地域としては最西南端にあるため比較的温和な気候で沿岸部に豪雪地帯はない。しかし年間を通じて湿度が高く、降雨回数も多い。曇り・雨の日が晴れの日より多い。 東部沿岸部(出雲沿岸部および宍道湖周辺)松江市や出雲市など東部の沿岸部は、西部に比べると冬期の平均気温が低いものの、松江市の1月平均気温は4.3℃と、京都市や太平洋側の大都市である愛知県名古屋市とほとんど同じで、比較的温暖である。出雲市より松江市と東へいくほど雪が多いが、松江市の年降雪量は89cmと、鳥取県の米子市の133cmと比べると少なくなっている。年に1,2回、15 cm - 30cm程度のまとまった積雪があるものの、最低気温が比較的高いこともあり数日で溶けることがほとんどで、根雪となった年は非常に少ない(松江市の根雪は1961年以降で2011年/1984年/1977年/1963年の4回のみ)。しかしながら、大陸に近いために数年に一度の猛烈な寒気団に覆われると、沿岸部でも日中の気温が氷点下の真冬日になることもある。夏は熱帯夜も数日あるが、山陽地方の沿岸部と比べると暑さは穏やかである。 西部沿岸部(石見沿岸部)浜田市、大田市、益田市、江津市など県西部の沿岸部においては冬期の気温は比較的高めで1月の平均気温は約5.0 - 6.0℃と東京都心や大阪市とほとんど同じで、温暖である。日本海側気候から九州型太平洋側気候への遷移地帯に属し、冬期の降水は雨が多く、積雪しても数センチメートル程度にとどまることが多く、大雪となることは少ない。梅雨末期に梅雨前線の影響で大雨となることがあり、過去にも山陰豪雨(1983年)や2013年の豪雨で被害を受けた地域がある。夏は熱帯夜も数日あるが、山陽地方の沿岸部と比べると暑さは穏やかである。 内陸部内陸部は1月平均気温が0.0 - 3.0℃程と寒さが厳しく、飯南町赤名(-13.5度、2012/2/19)、弥栄(-16.3度、2012/2/19)、瑞穂(-15.2度、2012/2/19)、六日市(-13.4度、1981/2/28)などでは氷点下15℃程度まで冷え込んだことがある。[3] 西部の津和野町と吉賀町を除いて全域が豪雪地帯に指定されており、標高の高い地域では1m程度の積雪に達する年もある。夏の夜は涼しく、熱帯夜となることはほとんどない。
自治体県下には8市・5郡・10町・1村がある。 島根県では、町は川本町のみ「まち」で、それ以外は全て「ちょう」、村は「むら」と読む。 東部(出雲地域)旧出雲国の区域(ただし出雲市の一部、飯南町の一部は旧石見国)
西部(石見地域)
隠岐(隠岐地域)旧隠岐国の区域
市町村合併
都市圏
友好交流自治体
歴史原始・古代![]()
中世
![]() 近世
近・現代![]() ![]()
年表
人口人口規模最盛期島根県の人口は、県民歌『薄紫の山脈』の歌詞に「九十万の県民の……」とある[13]ように、1950年代には90万人を超えていた。1955年(昭和30年)には約93万人に達した[14]。 人口減少しかし、以後は減少傾向が続き2014年(平成26年)には70万人を割った[15]。翌2015年(平成27年)の第20回国勢調査では69万4,352人と記録された。 1920年(大正9年)の第1回国勢調査では71万4,712人であったため、第1回調査に対する人口の増減率では全国の都道府県で本県が最下位となった[14]。また第1回調査での人口を以後の調査で下回った、全国で最初の都道府県となった(太平洋戦争による大規模な疎開の発生によって第6回調査(昭和22年)のみ一時的に急減した東京都を除く)。 地域別に見ると、出雲地域は1950年代から2020年代にかけて50万人前後のほぼ横ばいで推移しているのに対し、石見地域と隠岐地域はそれぞれ38万人から18万人、4万人から2万人と半減しており、二大都市である松江市・出雲市への集積が進んでいる[16]。 義務教育の児童、生徒数の減少は進行中であり、2025年度、県内の分校を含む小学校9校、中学校2校で新入生がゼロとなった[17]。 県外との比較日本の都道府県人口としては、隣接する鳥取県に次ぎ全国で2番目に少ない。また政令指定都市の中で最少の静岡市よりも少なく、政令指定都市以外では最大の人口の船橋市よりも少ない。人口密度は、西日本では高知県に次いで低い。 人口・面積・人口密度・可住地面積率・可住地面積・可住地人口密度はいずれも高知県のそれに近いが、高知県は高知市に県民のほぼ半分が居住する一極集中型の県なのに対し、島根県は松江市・出雲市に人口が集中している二極集中型の県である。 課題島根県の『県民ホットライン』には、県民が考える人口減少の要因として「はっきり言って魅力がない」「働ける職場がない」「医療・福祉が十分でない」「人間関係が保守的で変化を拒む気風は煩わしいから嫌だと思われている」などの意見が2015年までに寄せられた[14]。 県はそれらの意見に対し、解決策として「県内産業の振興と雇用の確保」「企業誘致の推進と観光振興」「売れる農林水産品づくり」「県外からのUターン・Iターン対策」の4つを提唱した[14]。 統計2018年(平成30年)の合計特殊出生率は1.74で、沖縄県に次いで全国2位。自然増減率は-0.71%で全国41位、社会増減率は+0.01%の転入超過で全国14位だった。 ![]()
都市圏5万人以上の都市雇用圏(2015年国勢調査時点の10%都市圏)
島根県人口動態1960年(昭和35年)時点では全国39位の人口規模であったが高度経済成長期の人口流失は非常に大きく、1975年には鳥取県に次ぐ人口の少ない県(46位)となり現在まで約半世紀に渡って人口順位に変動は見られない。現在においても人口流失は止まっていないが1960年代は年間15000人の社会減少となっていたが,近年は1500人前後に収まっており、人口減少こそ続いてはいるが自然動態が年々悪化している中で、総人口は高度経済成長期のような年間1万人を超えるような大幅な人口減少は見られない。全国においても中下位の人口増加率と健闘している。
高知県との人口推移比較島根県・高知県の二県は人口規模,面積,人口密度,高齢化率も似ている。人口規模の近い高知県と比べて島根県の人口動態を考察する。1960年(昭和35年)時点では3.5万人程島根県が高知県の人口を上回っていたが、2005年(平成17年)時点では反対に高知県が約5.4万人島根県の人口を上回るまで差が広がった。ただ近年の高知県の人口増加率は全国45位前後で推移しているのに対して、島根県の人口増加率は30位前後で推移しており2025年5月現在の人口では1.2万人程まで高知県との人口差は縮小している。長年46位の人口順位が続く島根県だが、近い将来、高知県の人口を再び上回ると予測されている。
政治県政財政平成16年度以降の財政力指数は、都道府県の中で19年間ワースト1である[18]。 国政→詳細は「衆議院小選挙区制選挙区一覧 § 島根県」、および「鳥取県・島根県選挙区」を参照
衆議院の小選挙区が2。参議院では、島根県選挙区として全県で1区を構成していたが、2016年の第24回参議院議員通常選挙より鳥取県選挙区と合区され、鳥取県とともに1区を構成する合同選挙区が創設された。 経済・産業農業![]() 全国的な流れと同様に島根県においても農業の衰退が進んでおり、島根県の総農家数・耕地面積・農業生産額も年々低下している。農業生産額の割合では、米が全生産額の33.3%で最も多く、野菜が16.2%、乳用牛が13.7%、肉用牛が13.6%を占めている[19]。特産品としては米(仁多米、きぬむすめなど)、ブドウ、西条柿、牛肉、メロンなどがある。付加価値が高く、観光との相乗効果が見込める薬草やハーブの栽培にも力を入れている[20]。 水産業日本海に面しているため漁業が盛んに行われており、総漁獲量(2011年)は15万3,000トン[22] で中国・四国地方で最も漁獲量の多い県である。 2010年の調査では、ベニズワイガニの漁獲量が5,163トンで全国1位、ブリ類の漁獲量が17,963トンと全国1位、アジ類の漁獲量が33,432トンで全国2位を誇っている[23]。 また、宍道湖などで採れるしじみは、2014年(平成26年)には3622トンで4年ぶりに日本一の漁獲高となった[24]。
建設業島根県では、建設事業者数は4,657社で全事業者数の約12%、従業員数でも32,723人と全産業の従業員数の約11%を占めている[26]。全国では、建設業の全産業に占める事業所数は9.7%・従業員数は6.9%[27] となっており全国と比べても島根県でも建設業が占める割合が大きくなっている。 特に公共工事の比率は66.94%と高知県に次いで全国2位[28] と高く建設業において公共事業が大きな役割を担っている。しかし近年の国や県・市町村の財政難などから公共事業は減少しており、建設業を取り巻く環境は厳しくなっている。 製造業島根県の製造品出荷額等は9,840億円(2010年)[29] であり鉄鋼が1,578億円(2010年)[29] と最も高い割合を占めている。江戸時代から明治時代にかけてたたら製鉄が栄え、古くからの鉄鋼技術を背景に島根県では鉄鋼産業が盛んに行われておりプロテリアル(旧・日立金属)や東洋製鉄、NTN鋳造など鉄鋼関連の企業が多数集積している。この他、情報通信機械が1,565億円、電子部品・デバイスが1,295億円と続いている[29]。 情報通信機械の分野では出雲市に本社を置く島根富士通がノートパソコンの生産拠点を構えており、出雲市の本社工場では年間200万台のノートパソコンが生産されている。 製造業出荷額等は2010年の統計データでは、島根富士通や島根島津・出雲村田製作所などが本社・工場を構える斐川町(当時)が2,634億円[29] と県内の市町村でトップとなっている。なお、斐川町は2011年に出雲市と合併しており、2010年時点の統計では、出雲市が3,818億円が製造業出荷額等でトップとなっている[29]。
小売業島根県の小売業の年間商品販売額は1999年の約8,463億4,700万円、事業所数は1994年の12,018事業所、従業員数は2002年の50,546人をピークにそれぞれ年々減少傾向にある[30]。2009年現在では、年間商品販売額は約7317億5,300万円事業所数は8,952事業所、従業員数は45,628人となっている[30]。 百貨店(日本百貨店協会に加入している店舗)は存在しない[31]。2024年1月14日まで一畑百貨店松江店(松江市)が営業していたが、同日をもって閉店したことにより「百貨店ゼロの県」となった[32][33]。 大型スーパーでは、イオンモールなどのイオングループ複数社や、広島県のイズミなどが島根県内で総合スーパー(GMS)やショッピングセンターなどを展開している。出店が進む一方で、競争が激化し2000年代にはマイカル(現:イオンリテール)の浜田サティ (現在のゆめマート浜田)や出雲サティ、ジャスコ(現:イオンリテール)の浜田店(現在はトライアルが出店)や平田店(現在はショッピングセンターViVAが出店)などが閉店している。 地場スーパーには、みしまや、ふくしま、フーズマーケット ホック、グッディー、キヌヤ、ラピタといった店舗がある。 観光業![]() ![]() 島根県の観光入込客延べ数は、年間33,158千人(2015年)[34] となっている。観光入込客延べ数変動の要因は尾道松江線の全線開通や松江城が国宝に指定されたこととなっている[34]。 市町村別の上位では、出雲市が12,495,489人と最も多く、次いで松江市が 10,061,918人、浜田市が 1,825,247人となっている[34]。観光施設では、出雲大社が607万6千人と最も多くの観光客を集めている[34]。 県外からの観光客入り込み割合は、広島県が22.9%、近畿地方が18.7%、関東地方が13.1%となっている。中国地方4県の合計では、県外観光客入込客数全体の5割近くを占める[34]。 島根県の観光客による観光消費額は1,367億円(平成27年度)と推定されており、観光消費額が県内に及ぼす経済波及効果は1,634億億円と推定されている[34]。 県内に本社を置く主要企業
県内に拠点事業所を置く主要企業指定金融機関など
生活・交通警察島根県警察本部の管轄にある。2005年(平成17年)4月1日に再編が行われ、以下の12警察署が置かれている。 海上保安庁第八管区海上保安本部の管轄にある。
交通空港鉄道県内一帯で普通列車の本数は毎時1本以下となっており、県内における営業列車の運用は臨時列車を除きすべて当日中に終了する(=日付越えの運用は行われていない)。
バス事業者島根県内を運行する路線バス事業者(リムジンバス、デマンドバス、自治体バスを除く)。 道路
フェリー・高速船医療・福祉→詳細は「Category:島根県の医療機関」を参照
教育大学国立大学公立大学なお、島根県内に本部を置く私立大学・短期大学は存在しない[35]。かつては島根中央女子短期大学が存在した。他都道府県に本部を置く大学のキャンパスはある。 通信制大学私立
短期大学公立
私立
高等専門学校国立
専修学校特別支援学校高等学校中学校小学校幼稚園学校教育以外の施設農業大学校職業能力開発短期大学校高等技術校
図書館博物館美術館マスメディア新聞
情報誌
放送テレビ局・ラジオ局
ケーブルテレビ局→「Category:島根県のケーブルテレビ局」を参照
コミュニティFM島根県の電波事情島根県は平地が少なく起伏に富んだ地形の地域が多い。そのため、テレビやラジオの受信環境は必ずしも安定しているとは言えない。そのため、共聴設備やケーブルテレビ経由での受信が必須となる地域も多い。また、朝鮮半島に近いこともあって韓国などの電波との混信も少なくなかったが、地上デジタルテレビ放送やケーブルテレビ網の整備、FM補完中継局の開始とともに解消されつつある。
通信社文化・スポーツ方言食文化→「Category:島根県の食文化」も参照
住文化伝統工芸
→詳細は「日本の伝統工芸品の一覧 § 島根県」を参照
スポーツ
→「Category:島根県のスポーツチーム」も参照
観光→詳細は「島根県の観光地」を参照
文化財→詳細は「島根県指定文化財一覧」を参照
祭事→詳細は「Category:島根県の祭り」を参照
郷土芸能・民謡→詳細は「Category:島根県の音楽」を参照
島根県を舞台とした作品→「島根県を舞台とした作品一覧」を参照
島根県出身の人物→詳細は「島根県出身の人物一覧」を参照
脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
|
Portal di Ensiklopedia Dunia