1967年のロードレース世界選手権
![]() 1967年のロードレース世界選手権は、FIMロードレース世界選手権の第19回大会である。4月にモンジュイック・サーキットで開催されたスペインGPで開幕し、富士スピードウェイで開催された最終戦日本GPまで、全13戦で争われた。 シーズン概要この年はカナダの建国100周年記念の一環としてカナダGPがモスポート・インターナショナル・レースウェイで開催され、選手権は全13戦となった。カナダGPが世界選手権の1戦として開催されたのは、この年だけのことである。また、前年同様に250ccクラスは全てのイベントでレースが行われたが、50ccクラスは約半分の7戦の開催となった。最終戦の日本GPは前年同様富士スピードウェイで行われたが、前年ホンダが「危険である」としてボイコットするきっかけとなった30度バンクはライダーたちにも不評だったために使用されず、ショートカットして4.359kmとなったコースで行われた[1]。 前年、5クラス全てでマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得するという快挙を成し遂げたホンダは、技術開発という目的を達成したとしてこの年から50ccクラスと125ccクラスへのワークス参戦を取り止めた。同時にチームの中心的存在であったジム・レッドマンと軽量クラスのエースであったルイジ・タベリも昨シーズン限りで引退し、マイク・ヘイルウッドとラルフ・ブライアンズの2人がチームを牽引することになった。500ccクラスではヘイルウッドがMVアグスタのジャコモ・アゴスチーニと互いに一歩も譲らないタイトル争いをシーズンの最後まで繰り広げ、250ccクラスでもヘイルウッドとブライアンズはヤマハのフィル・リード、ビル・アイビーとの熾烈な戦いが繰り広げられた。ホンダがいなくなった125ccクラスはヤマハとスズキの日本製2ストローク同士の争いとなり、50ccクラスはライバルのいなくなったスズキが完全に支配した[1]。 そしてこの年のシーズン終了後、ホンダは大排気量クラスにおいても目的を達成したとして翌シーズンにはワークスチームを送り込まないことを発表し、スズキもホンダの後を追うようにグランプリからのワークス活動の撤退を発表した[2]。 500ccクラス前年型の4気筒RC181の改良型で500ccクラスに臨んだホンダに対し、MVアグスタも前年デビューさせた3気筒を更にパワーアップさせて対抗した[3]。開幕戦となった西ドイツではホンダのマイク・ヘイルウッドが序盤にトップに立ちながらクランクシャフトのトラブルで脱落し、MVアグスタのジャコモ・アゴスチーニが逆転勝利を挙げた[4]。第2戦マン島TTでは逆にアゴスチーニがチェーン切れに泣かされ、ヘイルウッドは108.77mphというその後8年間破られることのないラップスピードを記録して優勝した[5]。 続くダッチTTでヘイルウッドは連勝したが、RC181はパワーではMVアグスタを上回るもののフレームの剛性不足を原因とする深刻なハンドリングの問題を抱えており、ヘイルウッドは個人的にイギリスのフレームビルダーに製作を依頼したフレームを使用できるようにホンダに要望していた。しかし、ホンダはヘイルウッドの提案を受け入れず、自ら改良したフレームを投入したが操縦性は大きく改善されることはなく、ベルギー、東ドイツとアゴスチーニに連勝を許した[6]。 その後もアゴスチーニとヘイルウッドのマッチレースは続き、第8戦のアルスターGPが終わった時点で2人は4勝ずつで並んでいた。しかし第9戦のイタリアでレースの大半をリードしていたヘイルウッドをミッショントラブルが襲い、アゴスチーニが逆転で優勝しヘイルウッドは2位に沈んだ。この結果、アゴスチーニは1ポイントでも取ればタイトル獲得という状況で最終戦を迎え、小雨となったカナダGPでは無理をせずにヘイルウッドに続く2位でフィニッシュして2年連続となるタイトルを獲得し、MVアグスタはマニュファクチャラーズ・タイトルをホンダから奪い返した[1][7]。 350ccクラス![]() 前年、350ccクラスでは4気筒で圧倒的な強さを誇ったホンダだが、この年は6気筒の新型モデルRC174を投入した。このマシンは250ccの6気筒RC166の排気量を拡大したもので、大幅な重量の増加を避けるために297.06ccに抑えられていたにもかかわらず、前年型の4気筒を大きく上回る66psを発揮した[8]。このマシンを駆ったマイク・ヘイルウッドは前年同様に唯一のライバルであるMVアグスタのジャコモ・アゴスチーニを圧倒し、開幕から5連勝を飾って第5戦のチェコスロバキアGPで早くも2年連続となるタイトルを獲得した[9]。 早々にタイトルを決めたヘイルウッドは、タイトル争いが激しくなっていた250ccクラスと500ccクラスに専念するためにアルスターGPとイタリアGPではこのクラスに出場せず、代わってRC174に乗ったラルフ・ブライアンズがイタリアで350ccでの初勝利を挙げた[8]。 250ccクラス![]() 前年は250ccクラスでも他を圧倒したホンダの6気筒RC166とマイク・ヘイルウッドだったが、この年は前年トラブル続きだったヤマハの水冷V型4気筒V4・RD05Aがようやく力を発揮し始め、強力なライバルとなった。ホンダはヘイルウッドに加えて前年軽量クラスで活躍したラルフ・ブライアンズを250ccクラスに出場させ、対するヤマハもエースのフィル・リードに加えて前年125ccクラスで頭角を現したビル・アイビーをこのクラスにも全戦出場させ、この4人による激しいタイトル争いがシーズン終盤まで続けられた。 開幕戦ではヘイルウッドがトップを走りながらパンクでリタイヤしてリードが先勝、ヘイルウッドは第2戦もリタイヤとなってブライアンズが250cc初勝利を挙げた。そして第3戦フランスでもヘイルウッドはトップを走っている時にミッショントラブルで後退し、シーズン初完走で3位は得たもののアイビーとリードに1・2フィニッシュを許した。ヘイルウッドのシーズン初勝利は、第4戦のマン島TTまで待たなければならなかった。 その後もこの4人で表彰台をほとんど独占する形でシーズンは続き、第11戦イタリアが終わった時点でリードとヘイルウッドが4勝ずつを挙げ、2位が3回だったリードがポイントではわずかに上回っていた。そして気温10度以下という悪コンディションの中で行われた第12戦カナダGPではリードのマシンが不調となってヘイルウッドが5勝目を挙げ、両者は同ポイントで最終戦に臨むことになった[1]。ところが最終戦日本GPではリードは4周目にマシントラブルでリタイヤ、トップを走っていたヘイルウッドも序盤にリタイヤしてしまう。レースはアイビーや前年同大会優勝の長谷川弘らが次々とトラブルで脱落する中をブライアンズが優勝し[10]、同ポイントでシーズンを終えたリードとヘイルウッドのタイトル争いは優勝回数が多かったヘイルウッドに軍配が上がった[11]。マニュファクチャラーズ・タイトルはヘイルウッドとブライアンズの2人で7勝をかせいだホンダのものとなった。 125ccクラス![]() ホンダの撤退により、このクラスはヤマハ、スズキ、MZといった2ストローク勢同士の争いとなった。前年デビューさせた水冷V型4気筒のRA31を熟成させていたヤマハに対し、スズキは従来の2気筒モデルの改良型であるRT67を投入したが苦戦は必至であり、既にV型4気筒の新型の開発をスタートさせていた[1]。 シーズンがスタートするとヤマハの強力なV4に乗るビル・アイビーとフィル・リードの2人は他を寄せ付けず、第2戦西ドイツでアイビーとリードの転倒によってスズキの片山義美が、第8戦フィンランドではリードのマシンのクランクシャフト破損に助けられたスチュアート・グラハムがそれぞれ1勝した以外は全てのレースでアイビーとリードが勝利を独占した。その中でもアイビーは第7戦チェコスロバキアGP終了時点で4勝と5割以上の勝率で優位に立ち、第9戦アルスターGPではチームオーダーによりリードはアイビーに勝利を譲った。そして続くイタリアGPで冷却水漏れによるオーバーヒートに苦しんだアイビーは、スズキのハンス=ゲオルグ・アンシャイトのスリップストリームを使う作戦でマシンを温存してゴール直前でアンシャイトをかわし、0.2秒差で優勝すると初めてのタイトルを獲得した[1][12]。 最終戦の日本GPでは、スズキが待望の水冷V型4気筒マシンRS67をデビューさせた。グラハムがこのマシンを駆ってチャンピオンのアイビーに次ぐ2位でフィニッシュしたが、この後スズキがグランプリ撤退を決定したため、このマシンは2度とグランプリを走ることはなかった。一方、徐々に力をつけていたカワサキはデイブ・シモンズのライディングでフランスGPで初ポイントを獲得し、フィンランドでは初表彰台を獲得している[1]。 50ccクラス![]() スズキの水冷2気筒RK67は完成の域に達しており、ホンダがいなくなったこの年の優位は明らかだった。そして開幕戦のスペインでは、ハンス=ゲオルグ・アンシャイトと片山義美の2人が他の全てのライダーを周回遅れにする圧勝ぶりで1・2フィニッシュを飾った。第2戦西ドイツでは、スズキはもう1台のマシンをスチュアート・グラハムに与えたが片山とグラハムはトラブルで完走できず、残ったアンシャイトが2勝目を挙げた[1]。フランスでは片山が勝ち、マン島TTではグラハムがグラプリ初勝利を挙げた。グラハムは500ccクラス初代チャンピオンのレスリー・グラハムの息子であり、親子2代でのマン島制覇だった[13]。アンシャイトと片山のタイトル争いはベルギーで3勝目を挙げたアンシャイトが制し、2年連続チャンピオンとなった[14]。 グランプリ
ポイントランキングポイントシステム
ライダーズ・ランキング500ccクラス
350ccクラス
250ccクラス
125ccクラス
50ccクラス
マニュファクチャラーズ・ランキング500ccクラス
350ccクラス
250ccクラス
125ccクラス
50ccクラス
脚注
参考文献
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