ロードレース世界選手権
![]() ロードレース世界選手権(ロードレースせかいせんしゅけん)は、オートバイによるモータースポーツ。国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が統括し、1949年に始まった二輪ロードレースの最高峰カテゴリーである。現在はドルナ社(DORNA)が各種権利等を管理している。 かつての正式名称は『FIM Road Racing World Championship Grand Prix[2]』で、2016年シーズンより「Road Racing」の表記が外され、『FIM Grand Prix World Championship』という正式名称を用いている[1]。シリーズの略称は2001年までは「WGP(World Grand Prixの略)」や、日本では「世界GP」や「世界グランプリ」などが一般的だったが、2002年に最高峰の500ccクラスがMotoGPクラスに改編されたのを機に、現在はシリーズ全体の略称にもMotoGP(モトジーピー)が使われる場合が多い。 現在は、レース専用に開発された二輪車を用い、レース専用に建設された世界各地のサーキットを転戦し、ライダーとマシンの速さを競うという内容になっている。かつては公道用市販車を改造したマシンも出場しており、公道を封鎖したコースも数多く使用されていた。 ![]() 選手権はエンジンの排気量別に4つのクラスに分かれており、2025年現在、MotoGPクラスは4ストローク1000cc(2012年~)、Moto2クラスはトライアンフのワンメイクの3気筒4ストローク765cc(2019年~)、Moto3クラスは単気筒4ストロークの250cc(2012年~)、MotoEクラスはドゥカティ製の電動バイク(2023年~)となっている[3]。 歴代チャンピオンに関してはロードレース世界チャンピオンの一覧を参照のこと。 選手権の概要![]() 緑色 - 現在MotoGPレースを開催している国 赤色 - 過去にレースを開催していた国 2025年のMotoGPは、過去最多となる世界18ヵ国22サーキットで開催される。 各クラスで、チームは1台もしくは2台のマシンをエントリーする。2025年シーズン開幕時点の各クラスの、エントリーチーム数とエントリーライダー数は以下の通り。
このほかに各大会にはそれぞれのクラスに限られたワイルドカードという特別出場枠があり、レースの主催者の推薦によりスポット参戦が認められている。 チャンピオンシップ世界各国でのグランプリレース(GP)での順位に応じてポイントを加算していき、ポイントの総計によって年間チャンピオンを決定する。また、全クラスにマニファクチャラー(メーカー)選手権があり、現在はMotoGPクラスのみチーム選手権も存在する。マニファクチャラー選手権はメーカー内の最上位入賞ライダーのポイントのみを加算し、チーム選手権はチーム内の全てのライダーの入賞ポイントを加算する。シーズン終了時に獲得ポイントの最も多い選手が「ドライバーズ・ワールド・チャンピオン」として認定される。同様に、獲得ポイントが最も多いマニファクチャラー(メーカー)は「マニファクチャラー・ワールド・チャンピオン」、として認定される。 競技の進行フリー走行通常は金曜日午前に2回、土曜日午前に1回、計3回の練習走行が設けられる。各フリー走行の時間は以下の通り。 【金曜日】
【土曜日】
フリー走行でタイムアタックが行われ、この順位が予選の班分けを兼ねる変則的ノックダウン方式となっている。MotoGPではFP2の上位10位までのライダーが予選Q1を経ずに予選Q2に進出できる。11位以降のライダーは予選Q1から行う。Moto2/Moto3ではFP1-3の上位14名がQ1を経ずにQ2に進出する。MotoGPでは2023年度から行われるようになったスプリントレースとの兼ね合いもあり、FP1は完全なフリー走行枠となり、予選の班分けが行われるのはFP2(セッション名は「プラクティス」)のみとなった。 予選土曜日午後に行われる。タイムアタックを行い、1周の最速タイムを競い合う。 【Q1(第1セッション)】 【Q2(第2セッション)】 Q2で最速タイムを記録した者はポールポジションとなり、スターティンググリッドではポールポジションを先頭に予選順位の上位から整列する。MotoGPのスプリントでは、F1とは異なりスプリントレース用の予選は行われず、決勝用のグリッドがそのままスプリントでのグリッドとなる。 いわゆる107%ルール(予選まででポールポジションの周回タイムの107%を超えるものは予選不通過となる)が存在するが、F1のそれとは異なり、各フリー走行で1回でもトップから107%以内のタイムを出していれば予選通過となる[3]。また悪天候等の影響で予選不通過者が多く出た場合は、主催者側の判断により救済措置が適用されることもある[4]。 スプリントMotoGPクラスでのみ、土曜日の午後に決勝レースの約半分の周回数で争われる短距離のレースを行う。スプリントレースのスターティンググリッドは決勝レースと同じ順位で整列する。スプリントレースでの獲得ポイントは以下の通り。
決勝日曜日に行われる決勝レース。土曜日の予選順位がスターティンググリッドの順位となり、規定周回数を走りゴール順位を競う。 【ウォームアップ走行】 【決勝レース】 決勝レースのスタート前、MotoGPでは25分前、Moto2/Moto3では15分前に、ピットレーンがオープンする。その後、各車は5分間の「サイティングラップ(Sighting Lap)」と呼ばれる周回を行って所定のスターティンググリッドにつく。このサイティングラップ中には、マシンセッティングの変更、燃料搭載量の変更、MotoGPクラスに限りマシンの乗り換えが認められている。サイティングラップ終了後は、ピットに入って行うセッティング変更やタイヤ変更が禁止され、チームはグリッド上での調整やタイヤ温めを行う。レース開始時刻になると、ウォームアップラップが開始される。F1などの四輪レースとは異なり、この周回中に他車を追い越してのウォームアップが認められている。1周の周回が終わると、各車は所定のスターティンググリッドで静止し、コースオフィシャルがスタートシグナルを点灯させるとレーススタートである。 原則としてMoto3 → Moto2 → MotoGPの順にレースが行われる。(motoGPの出走時間が一定の時間になるように調整されているため、イギリスGPやフランスGPではmotoGPの放映時間優先でmoto3→motoGP→moto2となることもある)
MotoGPクラス![]() ![]() ![]() 2001年まで存在していた500ccクラスが、2002年に現在の名称となり発足した選手権の最高峰クラス。かつてはイルモア、WCMといったプライベーターがオリジナルマシンで参戦していたほか、カワサキやスズキがワークス・チームを送り込んでいたが、2025年現在出場しているのはヤマハ、ホンダ、ドゥカティ、アプリリア、KTMの5メーカーと、ワークスマシンの貸与等を受けられるサテライトチームとなっている。 使用されるシャシーおよびエンジンはプロトタイプ(レース専用)が原則であるが、2012年より実施されたクレーミング・ルール・チーム(CRT)では市販車ベースの車両が認められた。なおタイヤは、2009年から2015年までブリヂストンのワンメイクであったが[6]2016年よりミシュランのワンメイクになっている。[7]。 なお、レギュレーションは年とともに変化しており、細部については下記の「レギュレーションの変遷」を参照 参戦チーム2025年のMotoGPクラスでは以下のチームがエントリーしている。
→詳細は「2025年のMotoGP」を参照
レギュレーションの変遷2002年 - 2006年 : 990cc時代2001年まで存在していた500ccクラスは、2ストローク・4ストローク共に排気量500ccが上限で、1970年代半ば以降は事実上2ストロークのみという状況になっていた。そこで環境問題対策へのアピールや商業上の理由(2ストローク大排気量車が市場と直結していない)によって、2002年より4ストロークが主体となるMotoGPクラスが誕生した。 2002年には「4ストロークエンジンの排気量あたりの出力効率は2ストロークエンジンの半分」とする係数計算から制定された新レギュレーションが導入され、2006年まで適用された。エンジンは2ストローク500cc以下、4ストローク990cc以下のレース専用車両という規定で、気筒数やピストン形状による最低重量制限が課せられていた。排気量は4ストロークが優遇された一方で、燃料タンク容量は2ストロークが32L、4ストロークが24L(2004年には22L)と、4ストロークの燃料タンク容量は大きく制限された。
しかし、2002年シーズンが開幕すると4ストローク車両が圧倒的に有利なことが明らかとなったため、2ストローク車両でのMotoGP参戦は2003年シーズン終了までに次第になくなり、カワサキ(2002年シーズン第13戦もてぎGPから)やドゥカティ(2003年シーズンから)など4ストロークを得意とするメーカーの新規参入を呼び込むこととなった。 2ストロークから4ストローク大排気量へと変わった事でバックトルク(エンジンブレーキ)が強大になったため、初期の頃はコーナー手前のシフトダウンを伴う減速時に後輪側が激しく暴れるといったシーンがよく見られた。バックトルクの弱い2ストロークに馴染んだライダーやメーカーは対策に頭を悩まされることとなったが、エンジンの電子制御やスリッパー・クラッチ等の開発が進むにつれ問題は解消され、当時はまだ2ストロークだった250ccクラス等からのステップアップも困難ではなくなっていった。 2ストロークエンジンはその構造上電子制御を取り入れにくかったが、4ストロークへの移行に伴いハイテク化が一気に進んだ。燃料噴射装置は機械式から電子制御式に移行し、エンジン特性そのものの電子制御化、トラクションコントロール、シフターの最適化等、操縦を支援する装置が数多く搭載されるようになり、これらの電子装置の性能が車両性能を大きく左右するようになった。2ストローク時代と比べ、単に絶対速度が上がっただけでなく遥かに扱いやすいマシンとなり、ライダー達のタイムが拮抗するようになったという意見がある。 2007年 - 2011年 : 800cc時代990cc時代の最高峰クラスは、直線での加速力や最高速では4輪のF1をも凌ぎ、ブレーキングポイントが明らかに手前でコーナー脱出速度が遅いにもかかわらず、鈴鹿サーキットをはじめ、各サーキットにおける最高速レコードを叩き出していた。そのため、最高速度の急激な上昇を抑えるといった安全上の理由等によりレギュレーションが改正され、2007年から最大排気量が800ccへと引き下げられた。エンジンの気筒数によって最低重量が定められ、燃料タンクは21Lに制限された。
800ccになっても下位クラスよりも大柄でトルクも強大で、最大エンジン出力は200馬力以上、最高時速はダニ・ペドロサが349km/h以上を記録した。また990cc時代はライダーにマシンの有り余るパワーを制御する事が求められたが、800ccへの変更後は電子制御技術が一層進化し、250ccクラス等からのステップアップがスムーズになったことにより以前に比べて新人ライダーが活躍する事が多くなり、スーパーバイク世界選手権(市販車改造1000cc)出身ライダーは、ライディングスタイルを変更しないと活躍出来ない傾向になっていた。 2009年 : コスト削減策の適用高騰し続ける参戦費用を抑えるため、2009年よりMotoGPの主催者であるDORNAやIRTAなどで構成されるグランプリ委員会によってレギュレーション改正が行われた。 タイヤサプライヤーを一社に限定し、2009年から2011年まで3年契約でブリヂストンが供給[9]。第11戦チェコGP以降は使用できるエンジン数が最大5基までに制限された。また、ブレーキの材料として、セラミック複合材料によるディスクとパッドの使用は禁止となった。エンジンオイルは潤滑油としてのみ使用可能であり、油圧制御システムへの使用は禁止される。電子制御サスペンションの使用も禁止された。EGR(排気ガス再循環装置)の使用も禁止[10]。さらにこの年からルーキーライダーはサテライトチームからしかエントリーできなくなった(スズキのみサテライトチームを持たない為このルールの適応外となっている)。 2010年 : コスト削減策の適用エンジン個数は、年間シーズンを通して、各ライダーは最大6基のエンジンを使用できる。カーボン製フロントディスクブレーキの直径は最大320mmとなる[11]。MMC(金属基複合材料)とFRM(繊維強化金属)の使用は禁止となる。タイヤ温度センサーの使用も禁止される。ホイールのリム幅も制限され、ホイール直径は16.5インチのみとなる。可変排気システムの使用も禁止。可変バルブタイミングシステムと可変バルブ開閉システムでは、電子制御と油圧制御を使用するシステムは禁止される。コンロッドは、中空構造は禁止だが、オイル循環用の穴は直径2mmまで許可される。ツインクラッチシステムの使用は禁止。トランスミッションは、オートマチックは禁止されるが、マニュアルでは若干のパワーアシストが許可される。無段変速トランスミッションの使用は禁止。GPSの搭載は、DORNAがテレビ放送などを目的としたもののみ許可され、マシンの電子制御系システムとして使用することはできない。ステアリングダンパーの電子制御は禁止[10]。 2012年以降 : 1000cc時代
2012年シーズンから最大排気量が再び変更され、1000ccに拡大となる。シリンダー数は4気筒以下、最大ボア径は81mmとなる。最低車両重量は1000ccの場合157kg、従来の800ccエンジンを使用する場合は150kgとなる。メーカーが運営するワークスチームと、メーカーからマシンの供給を許可されたサテライトチームが使用する非量産の「プロトタイプマシン」は、年間使用エンジン数は6基、燃料タンク容量は21Lに引き続き制限される。 2012年 : クレーミング・ルール・チーム「クレーミング・ルール・チーム(Claiming Rule Team)」(CRT)とは、主催者・参加者による委員会で認められたチームに適用されるレギュレーションで、減少傾向にあったMotoGPクラスへの参加を容易にする目的で2012年より採用される。CRTは、フレームビルダーの製作した車体に改造した量産車エンジンを搭載した「CRTマシン」での出場が許可される[12]。 CRTはカテゴリの1つではなく、MotoGPクラスの車両レギュレーションの1つであり、15位以内に入るとMotoGPクラスのポイントを獲得する。そのためCRTマシンの順位を比較する場合は、「CRT勢トップ」のような表現を用いる。 プロトタイプマシンに対して出力の劣るCRTマシンは、年間エンジン使用制限数が12基に、燃料タンクの最大容量が24Lに緩和されている[13]。また、改造費の抑制を目的としたエンジンの買取制度も規定され、プロトタイプマシンを製造しているメーカーが要望した場合は、CRTは使用したエンジンを2万ユーロで販売しなければならない[6]。つまり、プロトタイプマシンのエンジンに対抗しようとして、多額の費用をかけて量産エンジンを改造したとしても、ワークスメーカーはCRTが使用したエンジンを2万ユーロで買い取ることが可能である。 スイスのフレームビルダーであるスッター・レーシング・テクノロジーが、BMW社製の量産エンジンを使用し、プライベーターへのマシン供給を計画している[14]他、イギリスのFTRも同様にシャーシ供給(エンジンはチームにより異なる)やアプリリアが自社製プロトタイプフレームにRSV4のエンジンを搭載したマシン[15]等が参加した。 CRTは2013年シーズンまで実施され、2014年からはルールを改めエンジン使用台数制限の緩和や燃料タンクの増量などが受けられる代わりに主催者指定のECUソフトウェアを使用する「オープンクラス」に移行したが、これも2015年をもって廃止された。 2016年シーズンのレギュレーションオープンクラスの廃止により、ECUはハード・ソフト共に共通化[16]。年間使用エンジン数は7基だが2013年以降参戦のメーカーは条件付きで9基[16]。最低車体重量は157kgとなり、燃料タンク容量は22リットルに統一[17]。タイヤはミシュランとなりサイズが16.5インチから17インチに変更される[18]。 Moto2クラス![]() ![]() 2009年まで存在していた250ccクラスに替わり、2010年から新たにMoto2クラスが始まった。クラス初年度は当初旧250ccマシンとの混走を認める予定であったが、エントラントは全てMoto2規格のマシンでの参戦となった[19]。 エンジンは3年ごとにプロポーザルが行われており、2010年の入札でヤマハに勝ったホンダが、4ストローク直列4気筒600ccエンジンを独占供給していた[20]。市販車のCBR600RR用のものをベースにしており[21]、出力は約140馬力[22]。この頃にはエンジン、車両ともに性能が向上し、2ストローク500ccのエンジンの時代よりも速く周回できるようになった[23]。2013年の入札でもホンダが勝利し、契約は2015年まで延長された[24]。さらに2014年11月に2018年までの契約延長が発表されている[25]。ホンダのエンジン供給は2018年で終了し、2019年からはトライアンフがエンジンを供給する[26]。トライアンフは2017年10月に直列3気筒・765ccのMoto2用新エンジンを公開した[27]。2019年からはECUもマニエッティ・マレリ製の共通ECUとなる[28]。 エンジンメンテナンスはドルナが契約した外部コンサルタントに委託され、イコールコンディションに保たれたエンジンが各チームに供給されている。メンテ担当は2010年 - 2012年までが後藤治率いるGEO Technology[29]、2013年 - 2018年まではエクステンプロが指名されている[24][25]。 車両最低重量は135kg、ブレーキディスクは鉄製のみ認められる[3]。タイヤはダンロップのワンメイク。シャシーについてはプロトタイプであることが条件で、クラス開始時にはスッター、モリワキ、ビモータ等多くのシャシービルダーが参戦している。2022年現在ではカレックス、ボスコスクロ、ガスガス、MVアグスタが参戦している[30]。 開始初年度から40台という、3クラス中最も多いエントリーを集める盛況となった。またエンジンの統一により各車のタイムが拮抗し、第3戦フランスGPの予選ではトップから1秒以内に27人ものライダーがひしめき合う事態となった[31]。決勝でもたびたび激しいバトルが展開されることとなり、2010年シーズンは9人もの勝者を生み出した。 Moto3クラス![]() これまでの125ccクラスに代わり、2012年からはMoto3クラスが新設された。エンジンは単気筒250cc4ストロークのみ。最大ボア径は81mm、最大回転数は14,000rpmに制限される。エンジンサプライヤーは1基あたり12,000ユーロ以下での販売、要求があれば1シーズンあたり最低15人のライダーへの同一スペックのエンジン供給が義務付けられ、特定のライダーのみエンジン改良を施すといった行為は認められない。ライダー込みの最低制限重量は148kg[32]。タイヤは2014年まではダンロップのワンメイク[33]。パワーが小さいので、前の選手の真後ろを走りスリップストリームを利用するのが効果的とされ、数多くのマシンが僅差で競り合う展開になることが多い。 3クラスの中で年齢制限が最も厳しく、各シーズンの1月1日時点で新規参戦は16歳から25歳まで、継続参戦は28歳以下のライダーしかできない[3]。 2012年現在はホンダがNSF250Rを発表しているほか、KTM[34]、マヒンドラ[35]、イオダ[36]が参戦。ホンダ、KTMはコンプリートマシン以外にエンジン単体の供給も行っており、オリジナルフレームにそれらのエンジンを搭載して参戦しているチームも多い。他にBeOn[37]も参戦計画があるほか、モリワキエンジニアリングもワイン・ガードナーと共にニューマシンの開発を行う方針を明らかにしている[38]。2021年現在では、ホンダはNSF250RWに発展し、KTMと激しい開発競争を繰り広げている。2017年までにマヒンドラとその別バッジネームであるプジョーが参戦している。オリジナルフレームによる参戦はなく、全てコンプリートマシンとなっている。 過去に存在したクラス500ccクラス2001年までの53年間、選手権の最高峰を担ってきたクラス。4ストロークまたは2ストロークの排気量500cc以下のマシンで争われた。1966年から1972年にかけて、ジャコモ・アゴスティーニがMVアグスタを駆りクラス7連覇を達成している。また、1978年から1980年はケニー・ロバーツがヤマハで3連覇、1990年から1992年はウェイン・レイニーがヤマハで3連覇、1994年から1998年にはミック・ドゥーハンがホンダで5連覇を遂げた。 排気量は500ccながら130kgの車体に200馬力近い2ストロークエンジンを積むマシンはモンスターと呼ばれる一方、2ストロークゆえにタイムを縮めるにはごく狭いパワーバンドを維持しながら走行するテクニックが必要だったため素人では到底乗りこなせない車体だった。パワーが飛躍的に向上した1988年当時のホンダNSR500を初ライドした王者エディ・ローソンが「このバイクは俺を殺す気か!?」と言った。 現在のMotoGPマシンよりもタイヤや車体が劣っていた事もあり、パワースライドのバランスを取るために繊細なテクニックが必要とされ、90年代中頃のマイルドなエンジンになるまでは、ダートトラックでテクニックを磨く事が多いアメリカンライダーとオージーライダーが活躍していた。また、各サーキットも現在と比較すると路面の状態が良い状態ではなく、彼らにとって大きなアドバンテージとなっていた。 1989年までゼッケンは、黄色ベースに黒数字。 350ccクラス1982年までの34シーズン開催されたクラス。4ストロークまたは2ストロークの排気量350cc以下のマシンで争われた。アゴスティーニがこのクラスでも7連覇(1968年 - 1974年)を果たしている。在日韓国人[39]の片山敬済が1977年にタイトルを獲得している。 250ccクラス![]() 2009年までの61年間にわたり開催された、選手権で2番目に長い歴史を持つクラス。250cc以下のレース専用車両で競われた。最終的なレギュレーションでは最低重量は100kg。エンジンは2ストローク、4ストロークのどちらでも選べたが、末期は全てのチームが軽量・ハイパワーである2ストロークを採用していた。シリンダー数は2気筒以下。 市販レース車両(レース専用車)では、ホンダ・レーシング(HRC)からRS250R、ヤマハからTZ250等が販売され、プライベーターの参加が可能なカテゴリーであった。4ストローククラス移行の関係で、市販レース車両の開発は、一旦2003年をもってストップしたが、2007年型TZ250でごく僅かな改良が施された(一部パーツに変更有)。最終年度の参戦メーカーはアプリリア、ホンダ、ジレラ、ヤマハの4社だった。 日本人では原田哲也(1993年)、加藤大治郎(2001年)、青山博一(2009年)の3人がタイトルを獲得している。1990年代前半は岡田忠之、原田哲也、青木宣篤ら日本人トリオが活躍した。 1989年までゼッケンは、緑色ベースに白数字。 125ccクラス![]() 1949年の選手権開始以来、唯一2011年シーズンまで63年間開催され続けたクラス。125cc以下のレース専用車両で競われる。エンジンは2ストローク、4ストロークのどちらでも選べるが、全てのチームが軽量・ハイパワーな2ストロークを採用した。最低制限重量はライダー込みで136kg[3]。 2010年当時、参戦メーカーはアプリリア、デルビ、ホンダ、ランブレッタ。 かつてはベテランの軽量級スペシャリストが多いクラスであったが、途中から厳しい年齢制限が課され、近年では若手の登竜門的なクラスに位置付けられていた。 免許制度の都合で125cc市販車に馴染みの深い南欧諸国出身のライダーが多く活躍した。日本人では坂田和人(1994年、1998年)、青木治親(1995年、1996年)がチャンピオンを獲得している。 1989年までゼッケンは、白色ベースに黒数字。 50ccクラス1962年から1983年の22シーズンにわたって開催された最少排気量クラス。4ストロークまたは2ストロークの排気量50cc以下のマシンで争われた。 80ccクラス50ccクラスを引き継ぐ形で1984年から始まったクラス。1989年までの6シーズンと短命に終わった。4ストロークまたは2ストロークの排気量80cc以下のマシンで争われた。 サイドカークラス1996年まで選手権の1クラスとして開催されていた[40]。現在は独立した別の選手権としてヨーロッパで開催されている。 日本人の活躍優勝回数
2023年シーズン終了時 表彰台(3位以内)獲得回数
2022年開幕戦カタールGP終了時 ポールポジション獲得回数
2022年開幕戦カタールGP終了時 年間ランキングチャンピオン獲得回数
2位獲得回数
3位獲得回数
2022年開幕戦カタールGP終了時 日本におけるテレビ中継現在、地上波では日本テレビがMotoGPクラスを中心に録画放送を実施。CS放送ではスカパー!の日テレG+で全クラス予選・決勝レースの完全放送が行われており(基本は巨人戦生中継最優先の為、重ならない場合は生中継実施)、2016年度は巨人戦の生中継が重なった場合BSスカパー!で放送される[41]。またBS放送ではBS日テレがMotoGPクラスを中心に録画放送(ただし、日本GPのみ生中継)[42]。 2018年度からは定額制動画配信サービス、Huluでも予選・決勝レースを全戦ライブ配信されている[43]。 歴史
なおHuluストア(課金配信)ではライブ配信のほかに見逃し配信の販売も行なっている。 日本における公式映像テレビ中継の無かった時代は、VIDEO VISON(英)が4〜6台のENGカメラで収録したものが主であった。イギリスのDuke Marketing Ltd.がヨーロッパでの発売・販売を行ってきた。 日本では初の廉価ビデオマガジン「バイカーズ・ビジュアル・エクスプレス」(制作:ダイエーSVラボ/1987年6月創刊)が世界GPを扱い出したことをきっかけとし、「パワースポーツ・ビデオ」(発売:大陸書房)や「マンスリーモーターサイクルビデオマガジン RIDE ON」(制作/発売禅プランニング)、「ライダーズビデオステーション・バーン」(発売:ジャパン・ネットワーキング)やビデオサービスフルカワからビデオマガジン形式でシリーズ戦が発売された。 1989年の日本国内で全戦がTXN系列で放映されると同時に、「バイカーズ・ビジュアル・エクスプレス」(制作:アートスタッフ/発売:世界文化社)が全戦をリリース。以降発売元は、1991年日本ビクター、1992年東芝EMI、1993年よりウィック・ビジュアル・ビューロウとなっている。 2000年からはエキスプレスが発売元となり、2004年からは公式DVDとしてウィック・ビジュアル・ビューロウがラウンド毎に発売している。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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