『仮面ライダー対ショッカー』(かめんライダーたいショッカー)は、1972年3月18日に「東映まんがまつり」の一編として公開された東映の中編映画。上映時間は32分で、シネスコ[注釈 1]、カラー作品。
映像中で「仮面ライダー対ショッカー」はサブタイトルとして表示されるが、公開当時から『仮面ライダー対ショッカー』が正式なタイトルとして扱われている[2]。
概要
テレビ番組『仮面ライダー』の爆発的ヒットと、それに伴う「変身ブーム」を受け、テレビ版と同じスタッフ・キャストで制作された中編映画作品。公開時のキャッチコピーは「スゴいぞ!ジャンボだ!ボクらの仮面ライダーが映画になった」。
テレビシリーズの物語と設定を引き継いだ番外編として制作されているが、多数の怪人の登場や大規模なバイクアクションなど、通常の番組よりも規模を拡大している[2]。テレビ版第46話「対決!!雪山怪人ベアーコンガー」(1972年2月12日放送)とほぼ同時進行で制作されたため、劇中セット(ショッカー基地[注釈 2]と大道寺博士の邸宅セット)が第46話では本作品に先んじて登場しており、ベアーコンガーは本作品には登場しない[5][注釈 3]。撮影は1972年2月下旬に行われ、制作日数はわずか3日ほどだったという[6][5]。
東映は本作品に先んじ、1971年7月18日の「東映まんがまつり」のプログラムの1つとして、テレビ版第13話「トカゲロンと怪人軍団」を『ゴーゴー仮面ライダー』と題してブロー・アップ上映している。同作品が東映まんがまつりのアンケートで1位となったことで、翌年の春休みプログラムに完全新作として本作品が組み込まれることとなった[7]。プロデューサー・平山亨によれば、上映開始と同時に観客の子供たちは主題歌「レッツゴー!! ライダーキック」の大合唱となり、渡邊亮徳はそれを見て『仮面ライダー』の大ヒットを確信したという[8]。本作品が上映されるや、シネスコ画面一杯に次々と登場して名乗りを上げる怪人たちに子供たちは息を呑んで見入っていたと平山は述懐[9]。
テレビシリーズの主役が一文字隼人=仮面ライダー2号から本郷猛=仮面ライダー1号に再交代する時期に制作された本作品には、過去に倒された怪人の再登場、「新1号編」から登場する骨模様の衣装に変わった新しい「骨戦闘員」、「1号の新変身ポーズの披露[7][注釈 4]」など、「2号編」から「新1号編」への橋渡し的なイベント要素が盛り込まれている[注釈 5]。また、本郷に関しては大道寺博士の姿への完璧な変装術、ザンジオーに奪われそうな珠美の人形を手元に引き寄せたテレキネシス能力など、テレビシリーズでは描写されていない特異な能力が披露されている。
映画オリジナルの新怪人としてザンジオーが登場するが、テレビ版第51話の放送日が公開日と重なったユニコルノスと、公開1週間後の3月25日放送の第52話に登場したギルガラスも、テレビ本編に先んじて本作品がデビューとなっている[2]。
2021年11月11日には1111が並ぶ「ショッカーの日」にちなみ、東映公式Youtube Officialにて、本作品が初配信された[11]。
あらすじ
地球物理学研究所の大道寺博士が人工重力装置GXを発明した。ショッカーは大道寺から設計図を奪い、地球の地軸を狂わせて大洪水後の新世界に君臨しようと計画するが、設計図はまだ不完全なものであり、肝心の方程式が含まれていなかった。大道寺は悪用を防ぐため、不測の事態に備えて娘の珠美に預けていた。ショッカーの暗号通信を解読した一文字隼人と滝和也、そして本郷猛が駆け付けるが、珠美はザンジオーに誘拐されてしまう。
登場怪人
→新怪人のザンジオーについては「
ザンジオー」を参照
- 再生怪人軍団
- 名乗り順に番号が記載されている怪人は、地獄谷で珠美と方程式を交換する死神博士を援護すべく崖の上に出現した28体の怪人[注釈 6]。大道寺に変装した本郷が死神博士を拘束した際、命と引き換えにした死神博士の命令で全員戦うことなく撤退する。崖の上に出現の際、また撤退する際の映像には名乗りを上げた28体以外の怪人も含まれている[注釈 7]。
- 名乗りのシーンは、映画『ヘラクレス』の城塞に軍団が立ち並ぶシーンをイメージしたものとされる[7]。
キャスト
スタッフ
挿入歌
- 「レッツゴー!! ライダーキック[C 7]」
- 作詞 - 石森章太郎 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 藤浩一、メール・ハーモニー
- オープニングはテレビ版と同じ1番、エンディングは2番を使用。
- 「ライダーアクション」
- 作詞 - 石森章太郎 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 子門真人[C 8]
テレビ放送
映像ソフト化
いずれも東映ビデオより発売。
- VHS(セル、レンタル)共通。LD(セルのみ)。
- DVD:「仮面ライダー THE MOVIE BOX 1972-1988」(2003年12月5日発売)、単巻.VOL.1(2006年3月21日発売)
- BD:「仮面ライダー THE MOVIE Blu-ray BOX 1972-1988」(2011年5月21日発売)に収録。
- UHD:「仮面ライダー THE MOVIE 1972‐1988 4KリマスターBOX」(2021年11月10日発売)に収録。
併映作品
評価・影響
それまでの東映まんがまつりでは東映動画制作の長編アニメーションを中心としており、本作品が公開された1972年春の興業も長編アニメ『ながぐつ三銃士』がメインであったが、丸の内東映でのアンケート調査では本作品が他の同時上映作品と大差を付けて1位となった[20]。これを受け、同年夏の興業では『仮面ライダー対じごく大使』がメイン作品となり、以後の興業でも仮面ライダーシリーズが主要作品の1つとなった[20][21]。これに対し、東映動画側はアンチ仮面ライダー作品として『マジンガーZ』シリーズに注力していった[20]。本作品以降、東映まんがまつり枠でテレビシリーズの番外編的な中編映画を公開し、その作中でテレビシリーズの新展開を先行披露するパターンが定着していく[21]。
他の仮面ライダーシリーズとの関連
本作品オリジナルの怪人・ザンジオーの登場作品については、ザンジオーを参照。
以下はタイトルのオマージュ。
エピソード
- 監督の山田稔はせっかちな性格で、再生怪人軍団が集結するシーンでも速めのパンを指示していた[22]。しかし、このシーンは子供たちに評判だったため、東映プロデューサーの平山亨によれば山田は「それならばゆっくり映せば良かった」と反省していたという[22]。
- 『仮面ライダー』の人気上昇に伴い、東映生田スタジオの東京映像企画ではキャラクターショーも請け負うようになった[23]。しかし、ショーの収益は東映本社のものであったために生田スタジオの収益は増えず、直接収入を得る手段として本作品公開時に東映直営館で仮面ライダーのサイン会を催した[23]。番組スポンサーの玩具メーカーであるポピーの協力を得て玩具の福袋を用意するなどして好評を博したが、番組制作局である毎日放送から純粋な番組宣伝以外でのサイン会は差し控えてほしいという要望書が東映に送られて以降、ショーなどの業務は東映芸能部が担当するかたちに一本化された[23]。
脚注
注釈
- ^ この「シネスコサイズ」は、実際には35mmスタンダードフィルムの上下を省いてサイズを合わせた、簡便な「疑似シネスコ」である。
- ^ 本作品用に、2階建て仕様のものが新たに制作された。
- ^ 『仮面ライダー大図鑑 (5)』(バンダイ・1992年)90頁では、ほぼ並行して別班撮影されたと思われる制作第51話の怪人であるため、それに出演中と推測されている。
- ^ 本郷の変身時の掛け声はテレビ本編での「ライダー……変身!」ではなく、エコーのかかった「変身!」で、変身ベルトの風車の映像も本編と異なる。撮影時は無言でポーズを取っており、掛け声はアフレコ時に入れられた。
- ^ 物語上の時間軸は、テレビシリーズ第52話でギルガラスを倒した後、一文字が南米に旅立つまでの間と解釈される[10][5]。書籍『仮面ライダー大全集』では、本作品でのGX計画の失敗がテレビシリーズでの死神博士の失脚に繋がったものと推測している[2]。
- ^ 28体の登場シーンでは多くの怪人が名乗りを上げるだけに終わっており、名乗る際に微動だにしない者すらいる。
- ^ ギルガラス、プラノドン、トカゲロン、キノコモルグ、ピラザウルス。
- ^ a b c d プラノドン・ギルガラス・エジプタス・地獄サンダーが1つの部隊として1号・2号と戦う。
- ^ テレビでは、日本語を話せない設定だったが、本作品では何事も無かったように名乗りを上げている。
- ^ a b c d サラセニアン・キノコモルグ・ドクダリアン・トリカブトが1つの部隊として1号・2号と戦う。
- ^ a b 初代と異なり、ショッカーベルトを腰に巻いている。
- ^ 名称は名乗りの際の台詞のものであるが、ムササビードルは「ムササビドール」と名乗っている。
- ^ a b c d e 序盤、GX方程式の秘密を狙い活動する。
- ^ a b c 予告編のみの登場[2][12]
- ^ a b c オープニングクレジットでは役名未表記。
- ^ ハエ男、カニバブラー、さそり男、ギルガラス[13]。
- ^ サボテグロン、ドクガンダー、ザンブロンゾ、ムササビードル、地獄サンダー[13]。
- ^ 『仮面ライダー対じごく大使』と『仮面ライダーV3対デストロン怪人』を含む。
- ^ 仮面ライダーシリーズと同じ原作者によるアニメ作品。
クレジットに関する注釈
- ^ a b テレビ版同様、オープニングで「1号」「2号」の別なく「仮面ライダー」と表記。
- ^ クレジットでは「中屋敷鉄男」と誤記している[13]。
- ^ a b クレジットでは「滑川力也」と誤記している[13]。
- ^ クレジット表記は「鈴木敏秋」[13]。
- ^ クレジット表記は「山下敬介」[13]。
- ^ オープニングにクレジットされているが未出演。
- ^ エンディングクレジットでは「仮面ライダー」と誤表記[13]。
- ^ エンディングクレジットでは「子門直人」と誤表記[13]。
出典
- ^ a b c d e 大全集 1986, pp. 224–225, 「仮面ライダー劇場用作品製作メモ」
- ^ a b c 大研究 2007, pp. 143–145, 「53 劇場用エリート怪人ザンジオーの人気と実力」
- ^ 『よみがえるヒーロー!仮面ライダー大研究』(二見書房・2000年) p.143
- ^ a b c 映画大全集 1993, p. 130, 「仮面ライダー劇場用映画作品研究」
- ^ 大下英治「第一章 メガヒット紆余曲折」『日本(ジャパニーズ)ヒーローは世界を制す』角川書店、1995年、23-24頁。ISBN 978-4048834162。
- ^ 平山亨著『仮面ライダー名人列伝』(風塵社)より[要ページ番号]。
- ^ OFM 特1 2005, p. 33, 「大怪人図録 PART I イソギンチャック/カメストーン/ユニコルノス/ギルガラス/ザンジオー」
- ^ “お昼のショッカーさん:「ショッカーの日」にショッカーさんのマンガ連載開始 2022年にアニメ化も”. まんたんweb. 2021年11月11日閲覧。
- ^ OFM10 2004, pp. 23–29, 「特集 よみがえる怪人たち ショッカーからバダンまで 再生怪人軍団の系譜」
- ^ a b c d e f g h i 怪人大画報 2016, p. 119, 「人喰い山椒魚ザンジオー」
- ^ 怪人大全集 1986, p. 134, 「仮面ライダー劇場用怪人大全」
- ^ 怪人列伝 2011, p. 96, 「人喰い山椒魚ザンジオー」
- ^ キャラクター大全1号・2号編 2014, p. 67, 「仮面ライダー2号 ENEMY」
- ^ “仮面ライダー 劇場版3作品一挙放送|2023年6月24日(土) 放送 19:00~20:45 | 映画放送ラインナップ”. TOKYO MX. 2023年6月24日閲覧。
- ^ ““昭和仮面ライダー”の劇場版3作品をノーカットで一挙放送!!『仮面ライダー 劇場版3作品一挙放送』きょう夜7時から!| TOKYO MX+(プラス)”. TOKYO MX. 2023年6月24日閲覧。
- ^ 「2000TV・映画 特撮DVD・LD・ビデオ&CD」『宇宙船YEAR BOOK 2001』朝日ソノラマ〈宇宙船別冊〉、2001年4月30日、67頁。雑誌コード:01844-04。
- ^ a b c 仮面ライダー1971-1984 2014, pp. 402–403, 「COLUMN 映画の世界に進出したライダー オリジナル劇場用作品初期4作」
- ^ a b 「銀幕のマジンガーたち」『魔神全書 MAZINGER BIBLE』監修 ダイナミックプロ、双葉社、2002年1月25日、318-322頁。ISBN 4-575-29324-5。
- ^ a b OFM2 2004, p. 30, 和智正喜「仮面ライダー監督紳士録 第7回 山田稔」
- ^ a b c OFM1 2004, pp. 27–29, 「特集:生田スタジオ “夢”が紡がれた『仮面ライダー』の故郷」
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