富山県美術館
富山県美術館 アート & デザイン(とやまけんびじゅつかん アート アンド デザイン、正式名:富山県美術館 英: Toyama Prefectural Museum of Art and Design)は、富山県富山市木場町にある公立美術館である。 略称は「TAD(タッド)」。日本博物館協会、全国美術館会議、富山県博物館協会会員。 概要2017年(平成29年)3月25日に一部先行オープン[1][2]、8月26日に全館開館した[3][4]、20世紀以降の近・現代美術作品とポスターやチェア(椅子)などのデザイン作品を中心に約16,000点(時価評価額 約270億円)[5]収蔵し、展示紹介している美術館である。1981年(昭和56年)開館(2016年12月28日閉館)の富山県立近代美術館のコレクションを引き継ぐ。また、富山県博物館協会の事務局が当美術館内に置かれている。 これまで富山市西中野町にあった富山県立近代美術館が、建設から35年以上経ち老朽化したために、富山駅北西側にある富岩運河環水公園西地区の敷地面積12,548m2の見晴らしの丘に、鉄骨造り一部鉄骨鉄筋コンクリート造り地上3階建ての、船の舳先のような形の建物を総工費約85億円で[2]移転新築し、開館。2017年(平成29年)3月25日13時30分にTADギャラリー・アトリエ・レストラン・カフェなどを先行オープン、「オノマトペの屋上」(遊具がある屋上庭園)は4月29日に供用を開始[1][6]、展示室等は8月26日より供用開始した[3]。美術館のコンセプトは「アートとデザインをつなぐ」である。 美術館の外観は、富山県の主要産業であるアルミを多用し、美術館正面の東側2階、3階は全面ガラス張りとなっている。屋上には芝生張りの屋上庭園を設置しており、晴れた日には東側の2階から屋上庭園では、正面にある富岩運河環水公園越しに雄大な立山連峰を眺望できる。いたち川沿いの南側屋外芝生広場には階段状のプロムナードがあり、2階屋外広場へと通じるほか、屋上庭園へ直接通じる階段、エレベーターが用意されている。また駐車場は、雨や雪などがしのげる屋内駐車場となっている。 館内は各階(フロア)ごとにテーマが設けられており、2階、3階には常設展示、企画展示の合わせて6つの展示室を持つ。また館内はアルミ材のほか県内(氷見)産のスギ材をふんだんに使用しているが、2階、3階の各展示室を繋ぐ中央廊下には、天井、壁に桟状の木材を数多く並べ、床も含め木材で囲まれている。屋上庭園は「オノマトペ」という遊具が8つあるが、これは美術館建設地に元々「ふわふわドーム」があり、子供たちの遊び場だったため、石井隆一富山県知事が、子供たちのために残すことを要望したことによる[7]。また3階レストランには、日本橋たいめいけんが地方初出店した。また、作品を保管する収蔵庫は洪水や、津波からの被害を受けないよう、2階・3階に設けられている。 常設展示品は、富山県立近代美術館より移設されたパブロ・ピカソ、ロートレック、ルオー、シャガール 、ジョアン・ミロやマルセル・デュシャンなどの作品のほか、シュルレアリスム作家の作品を中心としたコレクションを収蔵・展示。また、当館が収蔵する数多くのすぐれたデザインの、ポスターやチェアを収集し展示している。また、富山県立近代美術館設立に関わった、富山市出身の美術評論家・作家である瀧口修造の生前の作品ならびに世界的な作家より送られた所蔵品、富山市大山町で晩年を過ごした世界的な音楽家「シモン・ゴールドベルク」の生前のコレクションを展示している。 マスコットキャラクターは水色の象に羽根のような手のような耳と人間のような目が付いた「ミルゾー」で、富山県立近代美術館開館30周年を記念して2011年(平成23年)に、日本グラフィックデザイナー協会会長を務め、2020年東京オリンピックエンブレムのデザイン選考の審査員長で、富山県立近代美術館の開館以降ほぼ全てのポスターデザインを手掛けてきたグラフィックデザイナーの永井一正がデザインし、キャラクター名は一般公募にて選ばれたものを引き継いだものである。ただし色調を新しい美術館のイメージに合わせモスグリーンから水色に変更した[8]。 美術館員の女性ユニフォーム(制服)は、世界的なデザイナー、三宅一生デザインによるものである。 美術館正面にある富岩運河環水公園内のいたち川沿いを美術館へのプロムナード「千年の桜並木」として再整備し、屋根付きベンチ、手作りアート作品を展示したりワークショップなどを開催できるアートワゴン(屋台)などを設置した[9]。 富山県立近代美術館時代の2001年(平成13年)3月には、県民公園太閤山ランドのふるさとパレス内に、館外展示施設「太閤山ランドふるさとギャラリー」を開設。本館収蔵品を中心とした美術展を開いてきた。また、2013年(平成25年)より同施設と太閤山ランドを利用して、県内の芸術家が新人育成と、芸術家の刺激の場として企画した「太閤山ビエンナーレ」を隔年で開催してきたが、富山県立近代美術館の閉館、新たに富山県美術館の開館に伴い、「太閤山ビエンナーレ」を「ビエンナーレTOYAMA」と名称を改め、会場を富山県美術館並びに富岩運河環水公園を利用し受け継ぐこととなった[10][11]。なお、「太閤山ランドふるさとギャラリー」は富山県美術館移転時に閉鎖した[12]。 美術館内に出店している「日本橋 たいめいけん」が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、売り上げが落ち込み継続は困難として、2020年(令和2年)8月31日をもって撤退することとなった[13]。 富山県立近代美術館からの新築移転の経緯これまであった富山県立近代美術館は、当時建設からすでに33年以上も経ち、耐震基準を満たしておらず、空調施設も旧式であった。特に消火設備がスプリンクラー式であり、火災の際他の美術品にも影響を与えるなど、文化庁の基準も満たしていないことから、他の美術館からの美術品の借り受けにも支障をきたすため、早急な対策が必要であった[14]。 そこで現在地での建て替え、移転新築などを検討し、市街地郊外ではなく富山駅に近く公共交通機関を利用し県内外の人達が気軽に訪れ、中心市街地の賑わいを富岩運河環水公園と共にもたらすことができるとして、富山県は2013年(平成25年)に、富山駅北側の富岩運河環水公園西地区の見晴らしの丘に新築移転すると発表した。 その後2014年(平成26年)4月に基本設計の概要を発表[15]。2015年(平成27年)1月16日には県知事が、同年3月に着工し2017年(平成29年)1月の開館予定であること、また館名の名称変更も検討すると発表した[16]。同年11月30日に県知事は、新美術館の名称として「富山県アート & デザイン美術館」を提唱、また休館日の変更、開館時間の延長の意向も提示した。開業時期については、2017年(平成29年)春にレストランとアトリエを、ゴールデンウィークまでに「オノマトペ」の屋上をテーマとした屋上庭園を先行オープンし、同年夏後半から秋口に掛けて全面開業の予定であると発表した[17]。 2016年(平成28年)3月に美術館名称を「富山県美術館」に正式決定、2016年(平成28年)9月2日には、全面開館は2017年(平成29年)8月26日、レストランとアトリエは同年3月下旬に、屋上庭園はゴールデンウィークをめどに先行開業すると発表した[3]。また、美術館の英文名称と略称の発表とともに永井一正が制作したロゴマークも発表された[18]。なお県知事が以前提案した館名の「アート & デザイン」は英文名称とロゴマークに盛り込まれた(英文の正式名では「&」ではなく、「and」と明記)。富山県立近代美術館は移転準備のため2016年(平成28年)12月28日に閉館した[19][20]。 一部先行開館した2017年(平成29年)3月25日と26日には「TADどきどき祭り」を開催、一部を除き展示室空間を一般開放。当美術館を設計した内藤廣、たいめいけんの三代目オーナーシェフ茂出木浩司、現代彫刻家三沢厚彦によるトークイベント、彫刻家の佐藤忠博によるワークショップ、内藤廣建築設計事務所スタッフが、美術館の特長や魅力、デザインの工夫などの解説をしながら館内を巡るイベントが開催された。またTADギャラリーでは、美術館の設計図、模型、写真、建設に使用した部材などの展示と映像による美術館の紹介がされていた[21]。 2017年(平成29年)3月25日から8月25日の部分開館期間の入館者数は、約57万5000人であった[22]。 全館オープン当日は記念式典の後、午後1時より一般公開となり、永井一正、佐藤卓による記念トークイベント、弦楽コンサート、富山県出身の女優、室井滋らによるパフォーマンスショーなどが行われた[4]。 開館の記念展は、「生命の美の物語 LIFE—楽園を求めて」と題し、138人、170点の展示をしており[23][24]、愛知県美術館所蔵で、めったに貸出しされないオーストリアの画家、グスタフ・クリムト作「人生は戦いなり(黄金の騎士)」、フランスのグルノーブル美術館よりロベール・ドローネー作「ブレリオに捧ぐ」、フェルナン・レジェ作「曳き船」、ドイツのブレーメン美術館よりパブロ・ピカソ作「画家(自画像)」、豊田市美術館よりエゴン・シーレ作「カール・グリュンヴァルトの肖像」など、国内外の美術館40館より日本初公開の8点を含め、130点を借り受け展示された[25][23][24][26]。 また富山県美術館が新たに約2億1600万円で購入した藤田嗣治(レオナール・フジタ)の「二人の裸婦」のほか、女優、室井滋の所有品である「猫」、富山県ゆかりの所蔵家より「座る裸婦」を借り受け計3点が展示された[27]。 沿革
主な収蔵作品絵画・版画など
など 彫刻・立体造形・ミクストメディアなど
など ポスター
など 約13,000枚 チェア
など 約230脚 世界ポスタートリエンナーレトヤマ世界ポスタートリエンナーレトヤマ(略称:IPT)は、1985年(昭和60年)より3年に一度、富山県立近代美術館にてこれまで11回開催されてきた、世界各国より公募されたポスターデザインを審査表彰し展示する、日本で唯一の世界的なポスターコンペティションで、2012年(平成24年)には4,622点、2015年(平成27年)には3,845点の応募作があった「世界5大ポスター展」の一つである。2018年8月に「第12回世界ポスタートリエンナーレトヤマ」を現美術館で引き続き開催[35]、入選作品は展示紹介される。 展示室・施設建物面積 6,683m2、鉄骨造り一部鉄骨鉄筋コンクリート造り地上3階建て、高さ 19m、延床面積 14,990m2(内 美術館用途 9,965m2) 常設展示室、企画展示室(展示室 1 - 6)以外は無料ゾーンである。 1階人々が集い交流するフロア
など 2階訪れるごとに発見があるフロア
など 3階アートとデザインをつなぐフロア
など 屋上「オノマトペの屋上」
交通アクセス
周辺の主な施設・店舗脚注
参考文献
関連項目外部リンク
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