頭文字D
『頭文字D』(イニシャル・ディー、英語表記: Initial D) は、しげの秀一による走り屋をテーマにした漫画作品。および、漫画を原作にしたテレビアニメ、映画。通称「イニD」[2]。『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて、1995年30号から2013年35号まで連載された。 2022年12月時点で累計発行部数は5600万部を突破している[3]。アニメの関連CDは70万枚、ビデオとDVDは合わせて50万本を販売している[4]。 概要峠道において自動車を暴走させることを目的とする走り屋の若者たちを描いた作品である。 峠の走り屋を扱うしげのの漫画作品としては、『バリバリ伝説』『トンネルぬけたらスカイ☆ブルー』に続く3作品目となる。本作ではアマチュアドライバーの主人公が関東各地の走り屋との対戦を重ねながら、“公道最速”を目指していく姿が描かれている。また、主人公が属する精鋭走り屋「プロジェクトD」の県外遠征を、各エリアの有力走り屋が迎えうつという対抗戦も本作の特徴である。 作中の主な舞台となる秋名山(あきなさん)は架空の地名[注 5]で、上毛三山のひとつである榛名山がモデル。その他の地名は実名[5]。 作品の舞台となる年代は、第1話の冒頭に199X年と表記されている[注 6]。だが、三菱・ランサーエボリューションVII(2001~)や日産・フェアレディZ(Z33型)(2002~)などと2000年代前半、新劇場版のエキストラに至ってはダイハツ・ソニカ(2006~)や30プリウス(2009~)など2000年代後半に発売された車も登場しており、現実とは時間軸が異なる。 作品タイトル「D」の意味は、「ドリフト(drift)のD」であると作者が発言している。一方で、プロジェクトDの「D」に関しては、作中で高橋涼介が複数の意味を持つ言葉であるように語っているが、その一つは「Dream(夢)」である[注 7]。 反響![]() 主人公の藤原拓海が公道バトルで乗るトヨタ・スプリンタートレノ・AE86型、通称「ハチロク」は1987年に生産終了していたが、本作の人気に伴い中古車市場価格が高騰する現象を生んだ[6]。AE86自体、本作連載以前から人気は高かったものの、その中心は兄弟車のカローラレビンであり、レビンと比べてモータースポーツ参戦も少なかったトレノはレビンの半分ほどしか生産されなかった不人気車種[注 8]であったが人気の逆転現象も生じた。後にそれらの現象の影響は、2012年にトヨタ自動車から発売された小型FRスポーツカー「トヨタ・86」を生み出したきっかけの一部ともなっている[7][8]。 本作の愛読者には土屋圭市、織戸学、谷口信輝、今村陽一[注 9]などのレーシングドライバーがおり[9]、特に土屋圭市はアニメ版の監修やハチロクのエンジン音・スキール音の収録を務め、作品に深く関わっている。アニメ版終了後に公開された新劇場版においては谷口信輝が監修やハチロクのエンジン音・スキール音の収録を務め、土屋同様に作品に深く関わっている。また、2009年に刊行された増刊本『頭文字D THE MESSAGE』では前述の土屋、谷口のほか片山右京、新井敏弘、山野哲也、飯田章、石浦宏明、服部尚貴、中嶋悟らも本作の読者としてコメントを寄せている。 アニメの出演者で、藤原拓海を演じる三木眞一郎と高橋啓介を演じる関智一なども影響を受け、三木は主人公の愛車である「ハチロク」を購入し、関は当初所持していなかった自動車運転免許を取得。また、中里毅を演じた檜山修之も「この作品をもっと早く知っていたらスカイラインGT-R(R32)に乗っていたかもしれない」とコメントしている[要出典]。 作中に登場する技術「溝落とし」や、「インベタのさらにイン」などを実際に真似ようとする読者や視聴者が現れるようになったため、連載途中およびテレビアニメ版では読者・視聴者に対して「道路交通法を守り、安全運転を心がけてください」と警告するメッセージが表示される。 実写映画化の際、主人公の実家の豆腐店として登場した藤野屋豆腐店は映画撮影後も「藤原豆腐店」の看板を掲げて営業を継続したが、店主の高齢化と土地区画整理事業により2007年頃に閉店した。2009年に解体され、店舗跡地は区画整理で新興住宅地や道路に利用され、当時の面影はほぼ皆無になったが、看板などは伊香保おもちゃと人形自動車博物館に移設され、館内で当時の姿が再現されている[10][11]。 本作のパロディに、自動車を鉄道車両に置き換えた同人誌作品『電車でD』が存在する[12]。2014年の新劇場版公開に際して開催されたイベント「新劇場版『頭文字D』Legend1-覚醒-公開記念86“超”夏祭りin Daiba at MEGA WEB」では、コミックマーケット86との連動企画で『電車でD』のポスターがMEGA WEBに展示された。これに際しては、講談社から了承を得たことも明らかにされている[13]。 また、本作品の主要な舞台となった群馬県渋川市では、2020年頃からアニメや漫画のファンが舞台になった場所を訪れる「アニメツーリズム」を推進しており、本作品の絵柄が描かれたマンホールの設置、ラッピングバスの運行(群馬バス・関越交通)などを行っている[14]。 海外でも日本車好きたちを中心に熱い支持があり、テレビ東京の「YOUは何しに日本へ?」ではドイツ人のファンがハチロクをレンタルして本作の聖地巡りをする様子が放送された[15]。本職のラリードライバーにも知られており、2022年のWRC(世界ラリー選手権)ラリージャパンの開催前にオリバー・ソルベルグは第一巻の表紙を自画像風にアレンジした画像を投稿している[16] また同年に史上最年少王者となったトヨタのカッレ・ロバンペラも、SS18恵那のステージ後インタビューで「頭文字Dのように豆腐を運んだよ」と冗談混じりでコメントしている[17]。次戦となる2023年WRC初戦ラリー・モンテカルロでは、ニコライ・グリヤジンがシュコダ・ファビア ラリー2に「藤原とうふ店(自家用)」と書いて参戦し、名所チュリニ峠で最速タイムを叩き出した[18]ほか、2024年はラリージャパンにおいてシトロエン・C3のラリー2仕様を拓海のAE86仕様のカラーリングに変更して参戦している。 あらすじコミックス17巻 Vol.191 / アニメThird Stageをターニングポイントとして、大きく高校生時代とプロジェクトD編に分かれる。さらにアニメでは、高校生時代をFirst StageからThird Stage、プロジェクトD編をFourth StageからFinal Stageと、各3ステージに細分化される。 高校生時代アニメFirst Stage[注 10]藤原拓海(ふじわら たくみ)は群馬県渋川市に住む一見ごく普通の高校生だが、父が営む「藤原とうふ店」の配送を中学生時代から手伝い、秋名山の峠道で日々AE86型(ハチロク)スプリンタートレノを走らせるうちに、非凡なドライビングテクニックを身に着けていた。それは全て、かつて「伝説の走り屋」と言われていた父・藤原文太(ふじわら ぶんた)による英才教育であった。ある日、赤城山を本拠地とするチーム「赤城レッドサンズ」のナンバー2・高橋啓介(たかはし けいすけ)に勝利したことで、「秋名のハチロク」の噂は群馬県内全域に広まっていく。 アニメSecond Stage啓介の兄でレッドサンズのリーダーを務める高橋涼介(たかはし りょうすけ)に勝利を収め、「秋名のハチロク」の名声は名実ともに群馬県内の走り屋達に知れ渡る。しかしそれとは裏腹に、ハチロクのエンジンは限界を迎え始めていた。そんな中、栃木県日光市のいろは坂を本拠地とするランエボ軍団「エンペラー」が群馬エリアへ侵攻。その攻勢はついに秋名にまで及び、拓海は最新のメカニズムで武装したランエボの挑戦を受けることになる。一方、文太もハチロクの限界を察知し、エンジンブローに備えて非公式なルートで新たなエンジンを入手していた。 アニメThird StageThird Stageは劇場版となる。高橋涼介に、以前より計画していた群馬県外遠征チームへの参加を要請された拓海は、自らの走りに限界を感じ始め、「速くなるためには知識が必要」との涼介の指摘に心を動かされる。これまで状況に流されるままバトルを受ける拓海だったが、手練の走り屋たちの挑戦を経て、次第に自分の才能と夢を見つめなおすようになっていった。 プロジェクトD編アニメFourth Stageやがて、拓海は「頂点に立つドライバーになる」という夢を持ち、高橋涼介が設立した群馬選抜チーム「プロジェクトD」のメンバーに加わる。プロジェクトDは「1年間のみの限定活動」「関東完全制圧」を謳い、拓海がダウンヒル(下り)、啓介がヒルクライム(上り)を受け持つダブルエース体制で、県外の名だたる峠道へ遠征する。拓海は愛車ハチロクを自在に操り、誰の目にも圧倒的に速いと思える車を相手に対等な勝負を繰り広げ、公道最速伝説を築いていく。 アニメFifth Stage栃木県、埼玉県、茨城県を制覇した「プロジェクトD」の活動は、最後にして最難関の神奈川県へと舞台を移す。そこには北条豪(ほうじょう ごう)率いる「サイドワインダー」による「4段階の防衛ライン」が敷かれていた。一方で神奈川県内には、「死神GT-R」の出没情報が多数報告されていた。その死神GT-Rの正体が、かつての自身の先輩である北条凛(ほうじょう りん)だと知る涼介は、チームの活動とは別に超高速コース・箱根ターンパイクで互いの生死を賭けたバトルを計画する。 アニメFinal Stage「プロジェクトD」vs「サイドワインダー」神奈川最終戦。拓海と対戦する「サイドワインダー」ダウンヒル担当ドライバー・乾信司(いぬい しんじ)もまた、ハチロクを操る強敵であった。最強の敵を相手に、最後の闘いの火蓋が切って落とされる。 登場人物→詳細は「頭文字Dの登場人物」を参照
書誌情報単行本
廉価版以下作品は講談社(講談社プラチナコミックス)より刊行されている。またアンコール刊行も度々行われており、本記事では「アンコール刊行」(1回目のアンコール刊行)、「アンコール刊行!」(2回目のアンコール刊行)と表記している。
新装版
電子書籍
公式本
アニメーション『頭文字D』のアニメ化は、これまでフジテレビ系列を主とする地上波放送で2シリーズ、CS放送のアニマックスで2シリーズが放送されたほか、劇場版1作とOVA5作(うち3つは総集編)も製作され、初放送から15年以上が経つ長期作品となっていた。原作が完結した2013年には、原作最後のバトルをアニメ化する『頭文字D Final Stage』の制作と、原作漫画の雰囲気を意識し序盤から再制作した『新劇場版 頭文字D』が2014年夏に公開されることが発表された[213][214]。なお、新劇場版はテレビアニメ版からキャスト・スタッフが全て交代している。 本作品では車両のほとんどは3DCGで描かれており、車両の形状や挙動、エンジンやスキール音に至るまで忠実に再現している[注 11]。回によっては実写シーンが導入されることがある[215]。 First Stage放送当時はテレビアニメにCGが導入され始めた時期であったが、本作では毎週放送のスケジュールをこなした上で、走行シーンのカメラワークや背景描写のような手描きアニメでは難しかった表現にも効果を示した。当初はセルアニメのキャラクターとのマッチングに違和感があったが、CG技術の向上と視聴者の慣れによって解消されていった[216]。車両の挙動もFourth Stageなどでは物理シミュレーターを用いており、回を追う毎に自然なものになっている[注 12]。 テレビシリーズ(初代)
劇場版(初代 / 二代目)
OVA(初代)
スタッフ
※ゲーム作品に関する詳細は「頭文字D ARCADE STAGE」を参照 アニメに関する備考
First Stageではこれに加えて本放送版及びVHS版から一部BGMと効果音がSecond Stageのものに差し替えになっている[注 29]。 ただし、一部の動画配信サイトでは現在でも本放送版が配信されており差し替え前のものも視聴可能である。北米版DVDは日本語音声が差し替え前、英語音声が差し替え後の構成になっている。
音楽音楽はエイベックス関連の楽曲が数多く使用されており、激しいカーバトルのBGMに軽快なダンス・ミュージックを流して雰囲気を盛り上げている。 オープニング、エンディングテーマは1st stage以降、その殆どをm.o.v.eが歌っており、バトルシーンにはSUPER EUROBEAT(以下SEB)が使われ、劇中のSEBはサウンドトラックとは別に、「頭文字D D Selectionシリーズ」というコンピレーションアルバムとしてリリースされている。 また、2005年9月から12月にかけて4連続シングルリリースされたm.o.v.eの各曲PVは頭文字Dとのコラボレーション企画とされ、第三弾となった「雷鳴-out of kontrol-」においては、メンバー3人がアニメのキャラクターとなって拓海の操るAE86型トレノと赤いFD3S・RX-7のバトルに巻き込まれる、という内容になっている(motsuが操るFDが先行し、助手席に座るt-kimuraがmotsuのアグレッシヴな走りに悲鳴をあげ、yuriは後追いのAE86の助手席に座って拓海のドライビングに酔いしれる、という内容である)[226]。 新劇場版からはSEBを使用せず、日本のロックバンドの楽曲が使われているが、「Battle Digest」ではSEBを再起用している。 主題歌
作中で使用されたSUPER EUROBEATと挿入歌テレビシリーズ「頭文字D」
テレビシリーズ「頭文字D Second Stage」
映画「頭文字D Third Stage」
映画の予告で使用された楽曲
OVA「頭文字D Battle Stage」
OVA「頭文字D Extra Stage」
アニマックスPPV「頭文字D Fourth Stage」
OVA「頭文字D BATTLE STAGE 2」
OVA「頭文字D Extra Stage 2」
アニマックスPPV「頭文字D Fifth Stage」
アニマックスVOD「頭文字D Final Stage」
映画「新劇場版 頭文字D Legend1 -覚醒-」
映画「新劇場版 頭文字D Legend2 -闘走-」
映画「新劇場版 頭文字D Legend3 -夢現-」
OVA「頭文字D BATTLE STAGE 3」
OVA「新劇場版 頭文字D Battle Digest」
放送局第1期
第2期
※京都・神奈川エリアにおいては、事実上の再放送となっている。 各話リスト
関連商品
メディア展開音楽CD
ドラマCD
タイピングソフト本作を元にした、パソコン用タイピング練習ソフトシリーズ。 →詳細は「頭文字D 高橋涼介のタイピング最速理論」および「頭文字D タイピング関東最速プロジェクト」を参照
ビデオゲーム本作を元にしたアーケードゲーム・家庭用ゲームシリーズ。 →詳細は「頭文字D ARCADE STAGE」を参照
携帯型ゲーム本作を元にした、携帯型ゲーム機の用ソフト。
ネイティブアプリ本作を元にした、携帯電話用アプリ。レースゲームが主だが、『頭文字D カルトクイズ 基礎知識編』(制作および配信日不明)も扱った。いずれも配信は終了している。
ソーシャルゲームいずれも配信は終了している。 バタフライによる配信。 講談社と、プレミアムエージェンシーによる配信。
Webラジオ
プロモーション映像2022年、トヨタ・GR86のプロモーション映像企画「GR86 FASTERCLASS」の一環として、拓海が運転するAE86トレノと、土屋圭市が運転するGR86が対決するショートアニメ[247]が制作された。本人役として土屋圭市も声優として参加している。アメリカで制作されたプロモーション映像であるため、土屋のGR86は左ハンドル仕様となっている。 パチスロ
パチンコ
実写版→詳細は「頭文字D (映画)」を参照
『インファナル・アフェア』シリーズのスタッフ陣を中心に実写映画化され、キャストには香港および台湾、日本などアジア各地の若手俳優が起用された。撮影は全て日本で行われ、新潟県の弥彦山スカイラインや群馬県渋川市がその舞台となっている。2005年6月に香港などで公開された後、日本(ギャガ配給)では2005年9月17日から新宿ミラノ他全国で公開された。 日本国外での展開
脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク
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