2021年のF1世界選手権
![]() 2021年のF1世界選手権は、国際自動車連盟(FIA)フォーミュラ1世界選手権の第72回大会として開催された。 概要フェルスタッペンとハミルトンのタイトル争い本来、2021年は新レギュレーションに基づいたシャシーを使用する予定であったが、2019年末から起きた新型コロナウイルスの世界的流行を受け、急遽レギュレーション変更が行われ、各チームに与えられた2トークンを使用することである程度の改良を施すことが可能ではあるが、原則として2020年度のマシンを継続して使用することが決定した[1]。ただし、マシンの性能向上に一定の歯止めをかけるべく、フロア面積を縮小し、ダウンフォース量を昨年比10%低減させる規定も導入された[2]。 2014年のレギュレーション変革によりエンジンが「パワーユニット(以下PU)」に変更されて以降、独走を続けていたメルセデスだったが、プレシーズンテストの段階からこの影響を受け、開幕戦までに対応することができず、サマーブレイク前までメルセデスは苦戦。一方でレッドブルは開幕までにこの変更にうまく適応したことや同チームへPUを供給するホンダが新設計のPUを投入。前年と比べると、この2チームの差は縮まっていた。その結果、ドライバーズタイトルは史上初の8回目のワールドチャンピオンを目指すメルセデス所属のルイス・ハミルトンとF1参戦7年目にして前年ランキング3位のレッドブル所属のマックス・フェルスタッペンの二人によって争われ、コンストラクターズタイトル争いも両名が所属するチームによるタイトル争いとなった。 開幕戦バーレーンGPはハミルトン、第2戦エミリア・ロマーニャGPをフェルスタッペンが制すると以降は一進一退のランキング争いが展開された。ハミルトンが第3戦と第4戦の2連勝でポイントリーダーの座を一旦維持するが、フェルスタッペンが第5戦モナコGPを制すると同時にポイントリーダーの座を奪取。そこから、レッドブルとしても5連勝を記録したこともあり、第9戦終了時点では、両タイトルはフェルスタッペンとレッドブルがポイントリーダーの座に就いた。しかし、メルセデス陣営もレッドブルの5連勝の間は後れを取りつつも、第10戦までに行われた数回のアップデートによってマシンが適応していき、第10戦イギリスGPと第11戦ハンガリーGPの結果により、ハミルトンとメルセデスがポイントリーダーの座を奪還する形でサマーブレイクを迎えた。 サマーブレイク後の後半戦は、フェルスタッペンの2連勝で幕を開け、再びポイントリーダーの座を奪還。それでも、ハミルトンが第15戦ロシアGPで通算100勝目となる優勝によってポイントリーダーの座を奪取するが、直後の第16戦トルコGPの結果によりフェルスタッペンがポイントリーダーの座を三度奪取する。フェルスタッペンは第17戦アメリカGPと第18戦メキシコシティGPの連勝により、ハミルトンとの差を開くが、対するハミルトンは第19戦サンパウロGPから第21戦サウジアラビアGPにかけ3連勝を飾り反撃。最終戦アブダビGPは47年ぶりとなる同点での対決を迎えることとなった。予選ではフェルスタッペンがポールポジションを獲得するも、決勝はハミルトンがスタート直後から首位へ浮上し独走。終始ハミルトンがレースをリードするも残り5周でニコラス・ラティフィのクラッシュによりセーフティカー導入。ここでハミルトンはピットインで逆転される可能性があったためステイアウト。フェルスタッペン側はタイヤ交換を実施した。セーフティカー先導のまま周回を重ねる中、最終ラップでのレース再開が決定。最終周でのハミルトンとフェルスタッペンの対決の末、フェルスタッペンが首位でチェッカーフラッグを受け、フェルスタッペンは今季10勝目を挙げると共にレッドブルとしては2013年以来、ホンダF1としては1991年以来となるドライバーズタイトル獲得となった。コンストラクターズタイトルは、レッドブルが一時、ポイントリーダーに立ったものの、第11戦でメルセデスがポイントリーダーの座を奪還。メルセデスはダブルタイトル8連覇の記録は逃したものの、F1史上初のコンストラクターズ8連覇を達成している。 最終戦のレース後、メルセデスは2件の抗議申し立てを行ったが、いずれもスチュワードは却下した[3][4]。メルセデスは抗議却下を不服とし上訴する構えを見せたが、控訴期限の12月16日に取り止めることを発表。これにより、アブダビGPと当選手権の結果は確定した[5]。2022年3月18日には、FIAはこの件を事実関係や問題点、争点となった無線通信などを時系列に沿って分析した調査報告書を発表。レースディレクターのマイケル・マシのヒューマンエラー(人為的ミス)があり、マシのとった手順は誤っていたと認めたものの、最終戦や選手権の結果が今後変更されることはないと明確にした[6]。(詳細は2021年アブダビグランプリ#FIAの調査報告書を参照のこと) レッドブルの予算レギュレーション違反・アストンマーチン、ウィリアムズの手続き上の違反国際自動車連盟(FIA)は2022年10月10日、2021年の会計報告期間に関して全10チームから提出された報告文書の監査を全て完了したと発表した。FIAは全10チームの内、レッドブル、アストンマーチン、ウィリアムズを除く7チームに適合証明書を発行した。FIAはレッドブル・レーシングが2021年度に予算上限レギュレーションに違反していた事を明らかにした。レッドブルの予算超過額は予算上限1億4500万ドルの5%未満の軽度予算違反であった。合わせて手続き上の違反も確認された。昨年の予算上限に違反していたのはレッドブルだけだった。アストンマーチンは手続き上の違反が確認された。ウィリアムズに関しては2022年5月に手続き上の違反が確認されており、2万5,000ドルの罰金のペナルティが既に課されている。10月28日、FIAは財務規定(フィナンシャル・レギュレーション)第6条28項に基づき、2022年10月26日付けでレッドブル及びアストンマーチンとの間で「違反是認」(ABA)を締結したと発表した。レッドブル・レーシングは2021年の予算超過に関して、700万ドルの罰金と、空力開発テスト時間10%減の罰則を受ける事が決まった。アストンマーチンに関しては45万ドルの罰金が科された。 移籍・復帰したドライバー2021年シーズンはチーム間でのドライバーの入れ替わりが多く起こった。
ライコネンの引退2007年のF1王者でアイスマンの愛称で親しまれたキミ・ライコネンが9月1日、今シーズン限りでの現役引退を発表[13]。F1史上歴代最多出走記録となる349戦の記録を残した。ライコネンの引退により、2000年代前半にデビューしF1のV10エンジン時代のレースに出走したことのあるドライバーは、ライコネンと同じ年にデビューしたアロンソを残すのみとなった。 その他のトピックス
レギュレーションの変更以下の内容は個別の出典が添付されていない場合、これらの出典[22]の内容を参照したものとなる。 技術規定
競技規定
参戦チーム・ドライバーエントリーリスト
チーム名・ドライバーの変更
開催地・年間スケジュール(以下、グランプリの決定・中止を太字で表す) 2020年11月10日に暫定スケジュールが発表され[94]、12月16日にFIAの承認を得た。当初は史上最多となる23戦が開催される予定で、当初予定の3週連続開催がサマーブレイク明けのベルギーグランプリからイタリアグランプリとロシアグランプリから日本グランプリの2回組み込まれていた[95]。この暫定スケジュールでは、第4戦として開催予定であったベトナムグランプリが政治的な問題で開催地から外され[94]、第4戦の予定日程を割り当てたまま保留扱いとされた[95]。 翌2021年の1月12日、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により改訂カレンダーが出され、開幕戦の予定であったオーストラリアグランプリが11月に移り、開幕戦はバーレーングランプリとなる事が決定(以下全戦繰り上がり)。また、当初第3戦に予定していた中国グランプリの延期が決定(のちに中止決定)。代わって第2戦としてイモラ・サーキットがカレンダーに加わった(エミリア・ロマーニャグランプリ)[96]。 2月11日、当初ベトナムでの開催を予定していた日程を1週分後ろに動かす形で第3戦にポルトガルグランプリが追加でカレンダーに加わえる方針をFIAが示し[97]、その後正式に追加が決定。 4月28日、カナダにおいて渡航制限の調整ができないことが確定したため、カナダグランプリは中止となり、代わってカナダGPを予定していた日程にトルコグランプリを開催することを一時は決定した[98]。 しかし、トルコGPの代替決定後、トルコ国内の感染が拡大。それを受け、イギリス政府は、渡航を規制する『レッドリスト』に追加[99]。これにより、トルコGPは6月の開催を断念し、中止ではなく無期延期とすることを発表[100]。これを受け、カレンダーの変更が行われ、6月25〜27日に予定されているフランスGPを1週間早めて18〜20日に開催し、6月25〜27日にはオーストリアでの2レース目となる『シュタイアーマルクGP』を行うことを決定。7月2〜4日には当初の予定通りオーストリアGPを開催するため、フランスGP、シュタイアーマルクGP、オーストリアGPという3連戦の日程が組まれた[100]。 6月4日、シンガポール国内での新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、シンガポールグランプリの開催中止を発表[101]。その後FIAは、シンガポールGPの開催予定日となっていた10月1〜3日に、カナダグランプリの代替として一時開催を決定したものの無期延期となっていたトルコグランプリを開催することを発表した[102]。 7月6日、日程を当初の開幕予定から11月へ順延して開催予定となっていた、オーストラリアグランプリの開催中止を発表[103]。 8月18日、モビリティランドは「F1日本GPを開催するために設定された期日までに、F1海外関係者の日本入国が確実な状況に至らなかったため」として、10月8日~10日に鈴鹿サーキットで行われる予定だった日本グランプリの開催中止を発表した[104]。 8月28日、本シーズンの開催ラウンドが、当初予定していた全23戦から全22戦に減少することを発表(この時点での第20戦の開催地は未定)。 9月30日、第20戦(11月19〜21日)としてロサイル・インターナショナル・サーキットでのF1開催(カタールグランプリ)が決定された[105]。カタールでのF1開催は初となる。 2020年からの変更点新型コロナウイルス感染症の世界的流行前に制定された開催スケジュールを基準とする。
シーズン結果レース
ドライバーズ・ワールド・チャンピオンシップ(選手部門)
(略号と色の意味はこちらを参照)
コンストラクターズ・ワールド・チャンピオンシップ(製造者部門)
ペナルティポイント
カーナンバー過去に使用されたことがあり、2021年から使用可能になるカーナンバーは、「2」(ストフェル・バンドーン)、「9」(マーカス・エリクソン)、「28」(ブレンドン・ハートレイ)、「35」(セルゲイ・シロトキン)の4つ。このうち「9」はニキータ・マゼピンが使用する。 テレビ放送・インターネット配信日本フジテレビNEXTおよびNEXTsmartは前年に引き続き、全戦全セッションを完全生中継する[153]。DAZNも前年に引き続き、全戦全セッションの生配信を行う[154]。 ゲーム2021年F1世界選手権イギリスGPの週末である 2021年7月16日に、2021年のF1シーズンに基づいた下記の公式F1ゲームがMicrosoft Windows,PlayStation 5,PlayStation 4,Xbox Series X / S,Xbox Oneで発売される予定である。上位機種ではレイトレーシングなど最先端のCG技術が投入される予定である。FOM(Formula One Management)との独占契約を結んだコードマスターズが開発し、EAスポーツが発売する。 脚注注釈出典
外部リンク |
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