クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃
『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 〜サボテン大襲撃〜』(クレヨンしんちゃん オラのひっこしものがたり サボテンだいしゅうげき)は、2015年4月18日に公開された『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第23作目。 概要ストーリー案シリーズとしては初めて「野原一家の引越し」をテーマにしており、第19作『嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦』(2011年)以来4年ぶりに海外を舞台とする[注 1]。ひろしの異動によりメキシコに引っ越した野原一家と、そこで巻き起こる事件を軸として、物語が展開されていく。 シンエイ動画プロデューサーの吉田有希は本作の引っ越しという要素について、「今回は、大きく設定を揺るがすようなことをやりたい」という発想の原点があり、そのうえでどこで何をやるかと考えた結果、「パニックものはやってないなぁ…ということでメキシコに引っ越してサボテンに襲われるという話になりました」と語っている[2]。吉田はその年の7月31日の放送からテレビシリーズのチーフプロデューサーに昇格している。 当初はインドを舞台とする案も存在したが、もろもろの事情でメキシコに変更された[注 2]。メキシコが選ばれた理由としては「ほとんどの人が名前を知っているが実際に行った事のある人はあまりいないという微妙なさじ加減が良かった」と監督の橋本は語っている。また、製作にあたって現地取材も行われ、作中の街並みやゲストキャラクターなどに活かされている[3]。 上映時間は104分と、第20作『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』(2012年)以来3年ぶりに100分を越しており、歴代で3番目の長さである。 テレビシリーズに登場するキャラクターが多く登場している。また、本田ケイコ(おケイ)と小山むさえ[注 3]、屈底厚子、屈底アツミ、四郎は本作が劇場版初登場である(ただし、屈底厚子、屈底アツミ、四郎は、声なしでの登場。)。 ゲスト声優2015年2月24日にはゲスト声優としてお笑いコンビ・日本エレキテル連合とHKT48(当時)の指原莉乃を起用した事が発表された[4]。日本エレキテル連合は本作でアニメ声優初挑戦となり、本人役で出演する。この他、テレビ朝日アナウンサー(当時)の宇賀なつみがサボテンフェスティバルをリポートするアナウンサー役で出演する。 スタッフ監督は、第21作『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』の監督を務めた橋本昌和が2年ぶりの再登板。脚本は、テレビシリーズにも参加して第21作の脚本を担当したうえのきみこが同じく2年ぶりの再登板となったが、今回は初の単独脚本である。 作画面でのキャラクターデザインには前作『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014年)の大塚正実から、第9作『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)のデザインを手掛けた末吉裕一郎が2年ぶりの再登板となり、原勝徳と共同でキャラクターデザインを担当している。メキシコ人のキャラクターデザイン原案とキラーサボテンのデザインにはEunYoung Choiを起用。演出面では前作を監督した高橋渉が絵コンテと演出を、湯浅政明が同じく前作に引き続き絵コンテと原画で参加し、本作ではバス内のアクションシーンを担当している。 本作は園長先生及びナレーションを演じてきた納谷六朗がライブラリ出演しているが、納谷は映画公開前の2014年11月17日に死去している。今回の出演について製作サイドは「園長先生のセリフは、納谷六朗さんの生前の声を使用したものです。春日部のみんなに野原一家が別れを告げるという場面を描く時、そこに園長先生がいないというのはあり得ないので、今回、このような形で登場してもらいました。後任を選ぶかどうかを含め園長先生について今後どのようにしていくかは、ただいま検討中です」とコメント[5]していたが、2015年10月9日放送分のテレビシリーズより森田順平が担当している。また、大原ななこが第11作『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』以来12年ぶりに登場しており、声は死去した紗ゆりに代わって2代目の伊藤静が担当した。同じく、双葉商事の部長が第17作『オタケベ!カスカベ野生王国』以来6年ぶりに登場しており、声は死去した郷里大輔に代わって2代目の大友龍三郎が担当した。なお、大友が演じる部長が登場するのは、テレビシリーズ・映画を含めて初である。テレビシリーズでは2015年6月12日放送分より演じる。 主題歌2015年1月30日には主題歌にゆずが起用されることが発表された。ゆずがアニメーション映画の主題歌を担当するのは2013年公開の「劇場版 HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-」以来2年ぶり4度目となる。また、映画公開に先立ち同年の2月6日放送回からのテレビシリーズのEDも務めることとなった。 本楽曲は明るくも哀愁感漂うポップナンバーで、ラテンテイストあふれるリズムにストレートで心温まるメッセージを込めた歌詞がマッチした楽曲となっている。レコーディングには海外ミュージシャンを招き、マリンバ、ケーナ、フィドル、マラカスなどさまざまな楽器が取り入れられた。チーフプロデューサーの松久智治は心にシンプルに迫る詩とメロディで、ラテンの明るさと力強さを伴い、笑いと感動を1曲の中で表現していると語っている[6]。 ちなみにゆずは、2018年7月6日放送分のTVシリーズより主題歌『マスカット』を担当している。 関連企画・その他引越しにちなみ、2015年3月25日に春日部市の春日部市役所にて「春日部さよならセレモニー」が開催。当イベントには野原しんのすけ自らが市役所に転出届を提出し、最後には駆けつけた市民達を含んだ記念撮影も行われた。公開二日前の2015年4月16日には永田町にある在日メキシコ大使館に査証(ヴィザ)申請書を提出した。カルロス・アルマダ大使は「メキシコはカラフルな国、楽しい生活が送れることでしょう。これを機に日本とメキシコの子供達の良い交流になればと願います」とコメントしている。一方「引越し先」となるメキシコの日本大使館では4月21日に野原しんのすけが来訪して在留届を提出し、大使の山田彰から両親の「在外選挙人登録申請書」を手渡されている[7]。メキシコでは日本メキシコ学院にも訪れたほか、大使館訪問時には現地でしんのすけの声を担当する声優も駆けつけた[8]。 劇中で本作のキャラクター・マリアッチを演じる浪川大輔が歌う劇中歌『愛して、アミーゴ』が公開初日の4月18日に配信された。 海外へ行く本作にあわせ、過去に野原一家が春日部以外の場所で巻き起こすストーリーを集めたDVD「クレヨンしんちゃん きっとベスト☆密着!カスカベ脱出 上巻・下巻」が2015年3月27日にバンダイビジュアルより発売された。「上巻」は日本国内、「下巻」は海外でのエピソードが収録されている。 なお、44日後(平成27年5月7日)にしんちゃん一家は無事に春日部に帰って来た。 また、作中に成田空港第1ターミナルの天井およびアエロメヒコ航空のボーイング787型機が塗装、APU排気口、レイクド・ウィングチップに至るまで忠実に描かれている。一方、作中では飛行機が夜に出発しているが、アエロメヒコのメキシコシティ行きは2014/15年冬ダイヤにおいて成田空港15時発(AM57便)であるため、実際とは異なる。 テレビシリーズにおける関連作品2015年3月6日放送分において「引越し」という題材に合わせ、まだアパートに住んでいた野原一家が今のマイホームを買うストーリー「若い二人はこうして家を買ったゾ」が前編・後編で放送された。また、映画公開前日の4月17日放送分でも、「サボテン」ではなく「たけのこ」を題材にした作品「たけのこ大襲撃だゾ」が前編・後編で放送された。さらに5月1日放送分のAパートでは劇中の同時期にあった、もうひとつの引越し物語として「シロの引越し物語だゾ」が放送されテレビシリーズと映画の内容がリンクしている。
興行成績全国339スクリーンで公開され、2015年4月18、19日の初日2日間で興行3億8,940万5,800円、動員32万9977人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第4位となった[9]。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは満足度91.6を獲得し、第1位となっている[10]。さらに、連休明けの5月6日時点(映画公開から2週間半)で興行収入歴代4位の16億4452万5000円を突破[11]し、前作『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』の同じ時点での興行収入をはるかに超えた。公開から30日で『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』の興行収入を超え、歴代3位の19億230万8500円を記録した。5月27日のテレビ朝日の会見により、動員172万5634人、興行収入20億1901万円と発表され、第2作の『ブリブリ王国の秘宝』(1994年)以来、21年ぶりに興行収入20億を超えた[12]。 そして6月27日までの集計で『アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993年)の興行収入22.2億を上回り、シリーズ最高記録を更新したことが配給元の東宝の調べで判明した[13]。 最終興収は22億9000万円[1]。なお、この記録は、『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』がこの記録を更新するまで破られなかった[14]。 テレビ放送次作『爆睡!ユメミーワールド大突撃』の公開を記念するかたちで、2016年4月1日放送分の『ドラえもん・クレヨンしんちゃん 春だ!映画だ!3時間アニメ祭り 第2弾・第2部』(19:35 - 21:48)で、エンディング部分はダイジェスト、オープニングを含め本編はノーカットにて地上波で初放送された。また、2021年4月23日に公開予定であった『謎メキ!花の天カス学園』の公開を記念するかたちで、2021年4月18日の『スペシャルサンデー』でも放送された[15]。ここでの放送では、オープニング・エンディングと一部シーンがカットされた。 あらすじ
ひろしは、メキシコの町に生息するサボテンの果実を集めるために双葉商事の部長から異動と同時に部長昇進を命じられる。はじめは単身赴任を考えていたものの、みさえから「家族はいつも一緒!」との一言により一家総出でメキシコへ引っ越しすることに。慣れ親しんだ春日部の住人達と涙の別れを告げることになった野原一家。メキシコのお姉さんはみんなスタイル抜群と聞いたしんのすけは喜んで旅立つ。 引っ越し先の町・マダクエルヨバカ[注 4]にて個性的なご近所さん達に囲まれ不安だらけの新生活が始まるが、そこでしんのすけ達を待ち受けていたのは人間を捕食する歩くサボテン・人喰いキラーサボテンだった。 果たして野原一家は、メキシコのご近所さん達と共にこのピンチを乗り越えることができるのか!? 本作のキャラクター
キャスト
スタッフ
主題歌
映像ソフト化2015年11月6日にバンダイビジュアルからBDとDVDでリリース[17]。BDのみの映像特典としては、短編「シロの引越し物語だゾ」が収録されている。 受賞
脚注注釈
出典
外部リンククレヨンしんちゃん映画作品 |
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