ドラえもん のび太の創世日記
『ドラえもん のび太の創世日記』(ドラえもん のびたのそうせいにっき)は、藤子・F・不二雄によって執筆され、月刊コロコロコミック1994年9月号から1995年3月号に掲載[2]された大長編ドラえもんシリーズの作品。および、この作品を元に1995年3月4日に公開されたドラえもん映画作品。大長編シリーズ第15作、映画シリーズ第16作。 同時上映は『2112年 ドラえもん誕生』。 概要藤子・F・不二雄は『四万年漂流』(足塚不二雄名義)、SF短編『創世日記』、『ドラえもん』の「地球製造法」[3]等、「創世」をテーマにした作品を幾度と発表しており、本作は藤子Fにとって「創世テーマ決定版に」という意気込み[4]で描かれた作品である。映画化に際し脚本としても藤子Fは参加[5]したが、「生物進化」「文明進化」など難解な題材を扱う内容となった[6]ため、次回作『のび太と銀河超特急』は作風を変えて子供も楽しめるようなビジュアル主体の賑やかな物語となった[6][7]。「じっくり書き込めば書いても書き切れないビッグテーマ」「190ページ足らずのコミックス、100分のアニメに盛り込むにはかなり無理がありました」とも語っており、考えた様々なエピソードのうち半分以上が積み残されてしまったという[4]。 ストーリー構想は例によってほぼ描き進めながら動かしていたらしく、物語をどうまとめればいいのか苦労し、終盤に登場するエモドランについても「締め切りを一日延ばして待ってもらっていたある朝(中略)浮かんできた」、「彼を登場させることでどうにか話を終わらせることが出来た」と語っている[4]。また、この作品から藤子Fのチーフアシスタントとなったむぎわらしんたろうが「進退化放射線源」を使うシーンで小さな虫が飛んでいることに対して「これが伏線になるのか?」と直接尋ねたところ、「つながればいいし、なければないで終わりだし」と答えていたという[8]。 本作におけるドラえもんたちは「創世セット」によって生み出された「新地球」の観察に終始し、第三者的な役割を担っている。また各時代でのび太たちのそっくりさんが登場する「新地球」の歴史は『ドラえもん』のパラレルワールドとなっており、ドラえもんたちがもう一つの『ドラえもん』世界を見るという不思議な「入れ子」構造[9]が描かれる。そのため、物語の後半は「新地球人」の出木杉が登場し、ドラえもん達と最後まで行動を共にする。彼本人ではないが、関係者が物語の最重要部まで関わるのは大長編・第2作第1期で唯一である。 原作、映画ともにジャイアンが新曲を歌っているが、「新曲」と謳いつつ、映画劇中で流れる曲はいつもの『おれはジャイアンさまだ!』である。 なお、のび太が昆虫を人間並みに進化させてしまうという設定は、同年に発表された『ドラえもん ガラパ星から来た男』でも使用されている。本作の連載第一回の掲載号コロコロコミック1994年9月号には、別冊付録に『ガラパ星から来た男』が収録された44.5巻という冊子が付属していた[注 1]。 映画としては16作目となり、同時上映作品『2112年 ドラえもん誕生』と併せてパンフレットでは『Wドラマチック!!ドラえもんフェスティバル!!』と題された。また、新地球の近代世界において地底で進化を遂げた昆虫人が地上人への攻撃手段として地上に大地震(=関東大震災)を起こそうとするというエピソードも考えられており撮影もされたが、1月17日に発生した阪神・淡路大震災の影響を考慮してカットされた[10]。 この作品からタイムマシンで移動する時の超空間バックがポリゴンCGを用いた仕様のものに変更され、旧来の超空間は併映作の『2112年ドラえもん誕生』で使用されたのが最後となった。つまり同タイミングで超空間の表現法が『2112年ドラえもん誕生』が旧表現、『ドラえもん のび太の創世日記』が新表現になっている。 シリーズ中初めて海援隊が主題歌を担当しており、本作も例年通り武田鉄矢が作詞を担当している。 あらすじ夏休みが半分に過ぎても、のび太は自由研究の題材が見つからず行き詰まっていた。見かねたドラえもんは未来デパートから創世セットを購入する。夏休みの宿題用の道具でありながら、もう一つの太陽系を作り出すことができるものだった。のび太は「神様」として新世界を創造し、その観察日記をつけることになった。トラブルはありつつも地球は無事に生まれ、海が満ち、生命が誕生しはじめた。一方、同じく自由研究が手付かずだったジャイアンはのび太と共同研究にしようと走り回っていたが、裏山でカマキリのような怪人を目撃する。 出来上がった「新地球」に降り立ったドラえもんとのび太だが、まだ地上は虫が住む程度だった。早く恐竜や動物、人間を繁栄させたいのび太にせがまれ、ドラえもんはユーステノプテロンを一匹捕獲して進化退化放射線源を当てる。それにより進化は大きく進み、やがてのび太の大好きな恐竜が地上に栄えるものの、最終的に恐竜は小惑星の衝突によって現実同様に絶滅してしまった。生物は誕生と滅亡を繰り返して進化するという無情さをのび太は思い知る。そこにジャイアンが訪れ、手土産としてスネ夫から取り上げた漫画を強引に押し付けて去って行く。ドラえもんは追いかけて漫画を返そうとするが、誤って走行中の車に落としてしまう。この過失で弱みを握られたドラえもんによって不本意ながらジャイアンとスネ夫を研究に参加させる羽目に。どうせ皆でやるならとしずかも誘い、創世日記は結局いつものメンバーの共同研究となるのだった。 新地球では永き時が流れており、人間が誕生して石器時代に突入していた。そこで一行は自分達によく似た少年3人を発見し、神様としてつい肩入れして力を貸す。神の存在が新地球の人々に知られ、のび太も神様として彼らを守っていくことを宣言する。共同研究は順調な滑り出しを見せるが、その様子をあのカマキリの怪人が窺っていた。翌日、四丈半島の別荘へバカンスに行ってしまったスネ夫とジャイアンを放って、ドラえもん、のび太、しずかの3人は新地球に行く。文明は弥生時代レベルまで進化していたが、同時に宗教という概念が生まれており、神への生贄を捧げる風習までも存在した。本物の神様として、勝手に作られた風習に異を唱えるドラえもんたちは生贄を助けるべく行動し、生贄を求めていたとされるムカデの怪物・白神様を撃退する。その際にのび太の尻に何か棘のようなものが刺さり、帰って調べてみるとそれは小さな矢であった。 時は流れ、多くの文明が生まれ、国同士の交流も盛んになっていた。そろそろ他の国も見回るべきというしずかに対し、生贄事件で助けた自分に似た少年ノビ彦の子孫が気になって仕方ないのび太はスペアポケットを手に、一人で日本に似た国に行くことに。その国は平安時代のような社会となっていた。ノビ彦の子孫の野比奈は冴えない老人であり、薬草売りでやはり貧しい暮らしをしていた。そんなある日、野比奈はチュン子という甲虫類と人間を合わせたような奇妙な生き物を保護する。のび太の陰ながらの支援もあり、チュン子は元気になったのだが、生き物嫌いの野比奈の妻に見つかってしまい、引っ叩かれて飛び去ってしまった。探しに行った野比奈はやがてチュン子の養親によって「チュン子のお宿」に招かれ、歓待を受けた後にお土産を貰って帰るという『舌切り雀』のような体験をする。お土産の箱には一杯の宝が詰めてあり、のび太はこの一族にも運が向いてくるだろうと満足して去る。しかしのび太も野比奈も気付かなかったが、チュン子の養親もまた昆虫人だった。彼らは人間との共存を望んではいたのだがその直後、都の人間が名医の令嬢捜索の名目で、居もしない鬼を討つべく山狩りを行った。やむなく昆虫人は人間の望み通りの鬼に化けて彼らを追い払う。 一方、四丈半島に行ったスネ夫とジャイアンは昆虫人の乗る謎のタイムマシンに拉致されていた。このタイムマシンは密航としてタイムパトロールに追われていたが、超空間の支流に飛び込んで逃げおおせる。のび太はしずか、ドラえもんと合流する。しずかは外国で「女神様」として様々な奇跡を起こしていたが、同時に各地で起きていた宗教戦争に悩まされたと語る。作られた神や伝説を盲信し、過ちを犯すのはいつの時代もどこの国も一緒だった。しかし奇妙なことに、どの国でも小さな羽を持つ妖精が信じられ、地底世界の伝説が語り継がれていたという。 新地球の人類の文明は近世まで発達していた。野比奈の血筋である野美家は野比奈の遺した財産から富を築き、その子孫の野美のび秀は野美コンツェルンの社長となっていた。のび秀は南極で発見された大穴の探検のため、出木杉そっくりの科学者・出木松博士、しずかそっくりの秘書・源しず代と共に飛行船で出発した。ドラえもん、のび太、しずかも新地球の謎を解くべく密かに同行し、南極に到達する。大穴の中は昆虫人が暮らす地底世界であり、のび秀は昆虫人の大統領に招かれる。大統領は昆虫人の歴史を語る。彼らの先祖はこの星の自然を独占していたが、約5億年前の「神のいたずら」と呼ばれる何者かの干渉により進化した恐竜や哺乳類に地上を支配され、寒冷地や高地に追いやられた。その後、地底世界を発見し、そこで独自の進化を遂げたのが彼らだという。しかし彼らはいつの日か地上を取り戻す機会を虎視眈々と狙っており、地上人類が地下にも進出し始めた事を機に、宣戦布告することを決めたのだった。 一方のドラえもんたちは地底世界に連れてこられていたジャイアンとスネ夫と再会する。彼らを連れてきたのはのび太に似た昆虫少年のビタノ。大統領の息子でもある彼は、大学の卒業論文として「神のいたずら」の解明を目指していた。ひょんなことからタイムマシンを手に入れたビタノは5億年前で謎の髪の毛を発見し、そのDNAを追って外の世界(本来の地球)にまで到達したのだが、それ以上は解明できていなかったので関係のありそうなジャイアンとスネ夫に話を聞こうとしていたのだ。ドラえもんとのび太は、「神のいたずら」とは自分達の進化作業のことだと悟る。また、その時の進化退化放射線源は一匹の羽虫にも当たっており、それによって昆虫人への進化も促していたのだ。すると、ドラえもんに似たエモドランがやってくる。のび太の面倒を見るドラえもんと同じく、タイムマシンで未来からビタノの元にやってきたロボットだった。 交渉が決裂したのび秀は飛行船に戻ってくる。地上世界へ危機を知らせるべく飛び立とうとする飛行船と、それに砲台を向ける昆虫軍。一触即発の中、ドラえもん一行が互いを静止しながら降りてきた。ドラえもんとのび太は地球を作った「神様」として、そしてこの事態の招いた責任を取り、第三の地球を提供する。複製した創世セットを使い、エモドランの協力によって、まだ昆虫が地上を支配していた時期まで作り上げたのだ。大統領はそこに移住して理想の社会を作ることを決め、人類への攻撃を中止。戦争は回避され、のび秀の飛行船も無事に地上世界へと戻った。ドラえもんたちは「もう神様は必要ない」と、立派に育った二つの星をそこで生きる人々に任せ、創世日記を仕上げるため元の世界へ戻っていくのだった。 舞台
作中に登場する生物や都市生物
都市
声の出演
ゲストキャラクター創世セットのキャラクター新地球人ドラえもんとのび太が作った新しい地球に住む人間。
昆虫人(ホモ・ハチビリス)新地球の地底空洞に文明を築き上げた昆虫人類たち。学名は「ホモ・ハチビリス」。姿は蜂に似ているが、人間たちとコンタクトを取る際は人間そっくりに変身でき、彼らの文明は人類を遥かに上回っている。ドラえもんとのび太が5億年前に行った進化作業の際に、昆虫の祖先が「進化退化放射線源」の光を浴びたのが切っ掛けで、人類と同時に昆虫の進化が始まった。原作では人間よりも大分小さい身体であり、擬態時のみ人間サイズになるが映画では昆虫形態の時も人間サイズである。 ハチから進化した昆虫人ホモ・ハチビリスが主流派だが、他にもカマキリや甲虫類の昆虫人もいる。なお、地底空洞には、地上のような草や花はなく、コケや巨大なキノコなどが生えている。
巨大ムカデ
その他
スタッフ
主題歌
脚注注釈出典
関連項目外部リンク
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