東京電力ホールディングス
東京電力ホールディングス株式会社(とうきょうでんりょくホールディングス、英: Tokyo Electric Power Company Holdings, Incorporated[5])は、 東京都千代田区内幸町(日比谷)に本社を置く、東京電力グループの事業持株会社である。1951年に設立された東京電力株式会社が、電気事業法の一部改正[注釈 1]による電力小売全面自由化およびそれに続く発送電分離に対応するため、同年同日に持株会社体制へ移行して社名変更した[6][7]。 略称は東京電力、東電(とうでん)や東京電力HD、または商号の英文表示[5]の頭文字からTEPCO(テプコ)が用いられている。 東証プライム上場企業で、日経平均株価の構成銘柄の一つ[8]。 会社概要1883年(明治16年)に渋沢栄一により設立された東京電燈が始まりとなる。根津嘉一郎が東京電燈の経営に参画していたことから根津財閥の流れも汲む[9]。その後、国家総力戦体制に伴う大日本帝国による国策により、第二次世界大戦直前の1939年(昭和14年)4月、発電および送電設備が、半官半民の企業であった日本発送電の管轄となり、さらに太平洋戦争直前の1941年(昭和16年)8月には首都圏における送電事業が関東配電に移管させられた。太平洋戦争終結後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による再編命令が下され、日本発送電は第2次指定で指定持株会社に指定され、1950年(昭和25年)11月24日にGHQがポツダム命令を発したことで電気事業再編成令と公益事業令が公布され、1951年(昭和26年)5月1日、関東配電の営業地域を引き継ぐ形で発足した。 1951年(昭和26年)の設立以来、現在に至るまで、自社または子会社の一般送配電事業者としての送配電区域に自社の保有する原子力発電所を置かない電力会社として知られる[注釈 2][注釈 3]。また、複数の都道府県を営業区域とする一般電気事業者としては日本で唯一、都道府県名を社名に使用していた。 商用電源周波数は、東京電燈がドイツ帝国から輸入した50Hz仕様の発電機を採用し、その後に至るまで、東京電力管内では50Hzでほぼ統一されている。ただし、群馬県甘楽郡および吾妻郡では60Hzとなっている[10]。 創立60周年となる2011年(平成23年)3月11日時点で、同社のコーポレートスローガンは「いつもの電気、もっと先へ。」であった。そして、持株会社体制となった2016年(平成28年)4月1日より(創立65周年)、グループ全体の新ブランドスローガンとして「挑戦するエナジー。」が導入された。 福島第一原子力発電所事故の復旧および損害賠償のために、日本国政府による公的資金が注入され、認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が議決権の過半数超(潜在的には3分の2超)を有する大株主となっている[11]。同機構は実質的に国の機関であり、当社は同機構を介して国有企業化され、日本国政府の管理下にある。 なお、第二次世界大戦以前に存在し、のちに東京電燈(関東配電などの前身)に合併された東邦電力子会社の「東京電力」は、同名異企業である。 株主2011年前2010年度末における大株主福島第一原子力発電所事故の前年、2010年6月28日提出の有価証券報告書による[12]
2011年後2012年7月31日に、原子力損害賠償支援機構(現 原子力損害賠償・廃炉等支援機構)が、A種優先株式(転換権付有議決権)16億株、B種優先株式(転換権付無議決権)3億4000万株を1兆円で取得し、出資比率で約75%、議決権比率で50.11%を有する筆頭株主、および親会社以外の支配株主となった。B種優先株式には、A種優先株式を対価とする取得請求権(B種優先株式1株をA種優先株式10株に転換する権利)が付与されており、原子力損害賠償・廃炉等支援機構は潜在的には総議決権の3分の2超(約75%)の議決権(定款の変更や事業譲渡、分割、合併、解散など特別決議となる議案を単独で株主総会に提案し決議することが出来る力)を確保している。この第三者割当による既存株式の希釈率は議決権ベースで100.43パーセントであったが、東京証券取引所への上場は維持されている。将来的に株価が上昇し、同機構が当社への資金援助を回収するためにA種およびB種優先株式を普通株式に転換し売却した場合、希釈率は最大で約2千パーセントとなる。 支配株主となった原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、官民共同出資で設立されているが、特別の法律に基づく認可法人であり、理事長と監事の任命権は内閣が有している。また、運営委員会委員や廃炉等技術委員会委員・副理事長・理事の任命、業務計画、予算、資金計画などには、日本国政府の認可が必要である。同機構の副理事長は元警察官僚(元大阪府警察本部長、元内閣情報官)、5名の理事のうち常勤の2名は、財務省と経済産業省から出向のキャリア官僚、1名は独立行政法人(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、旧動燃)の元役職員である。 同機構による東京電力への出資金(1兆円の優先株引き受け)や、10兆円強におよぶ資金援助の原資は、日本国政府が交付もしくは日本国政府保証により同機構が借り入れたもの[注釈 4]であり、同機構は管理運営・財政において実質的に国の機関である。したがって、東京電力は同機構を介して半国有化され、日本国政府の管理下にある[11]。経済産業省から同機構に出向のキャリア官僚(経産省課長級、同機構連絡調整室長)が当社の取締役指名委員会委員および執行役会長補佐兼社長補佐兼営業企画担当(共同)に就いている。 当社は「国が直接又は間接に補助金などを交付し、又は貸付金などの財政援助を与えているもの」および「国が資本金を出資したものが、更に出資しているもの」として、会計検査院の選択的検査対象である[13]。 2024年度末における大株主
巨額の損害賠償と公的資金→「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」も参照
2011年11月以降、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(実質は日本国政府)より、毎月数百億から数千億円規模の資金援助を受けており、2024年度末現在で累計13兆4058億円に達している[16][17]。当社は機構からの交付資金を特別利益として会計処理しており、交付された資金と同額を特別損失として賠償金に充てている。この資金援助には明確な法的返済義務が課せられておらず、当社は交付された資金を負債として計上していない[18][19]。機構からの資金援助を収益と認識する会計方針については、「(資金交付金の)申請にあたっては、資金援助の内容や額について、原子力損害賠償支援機構と調整していることや、機構法の趣旨などを勘案すれば、申請を行った時点で、原子力損害賠償支援機構資金交付金を受け取る起因が発生しており、実質的に収益が実現している」と説明している[20]。 これにより、当社は損益計算書上の赤字決算と貸借対照表上の債務超過を回避している。交付された資金は、各原子力事業者が機構に納付する一般負担金、東電が機構に納付することになる特別負担金、機構が保有する東電株式の売却益などによって国庫に回収されることになっているが、2021年の会計検査院の試算によると、資金の国への回収が終わるのは2044年(令和26年)~2064年(令和46年)で、仮に全額を回収出来たとしても、国は1519億円~2388億円の利払いを負担することになる[21][22][23]。 一部債権者に対して原子力発電所事故による補償を拒否するなどの行動をしているとも報じられている[24]。 国は、上述の資金援助とは別に、福島第一原子力発電所1-4号機の廃炉・汚染水対策に関する研究開発等、研究施設の整備等及び実証事業に対して、毎年数百億円規模の財政措置を講じている。 歴史
![]() (1987年〜2016年)
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東日本大震災以降論点は福島第一原子力発電所事故の影響参照
持株会社体制移行後
発電施設
原子力発電所→「東京電力の原子力発電」も参照
2箇所(建設中1箇所)、821万2000kW(2019年8月1日現在) いずれも沸騰水型原子炉の系譜に連なる(東京電力初の原子炉に沸騰水型が採用された経緯も参照)が、1980年代にK-PWR(加圧水型原子炉の一種)の採用を検討したこともある。東日本大震災以後、全原子力発電所が発電中止となっている。当社は、事業地域内(東京電力パワーグリッドの供給区域内)に原子力発電所を有したことは無い。
原子力発電所における事故稼働する全ての原子力発電所で火災、放射性物質漏れ、臨界といった事故が発生している。スリーマイル原子力発電所事故に対する東京電力の対応のように、他の原子力事故を受けて対策を強化する例も見られたが、2011年(平成23年)3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故は炉心溶融を伴い、原子炉建屋が水素爆発で破壊され、大規模な放射性物質漏れを起こす大事故となった。 この影響で、福島第一原子力発電所で進められていた増設計画も中止された(詳細は福島第一原子力発電所7、8号機の増設計画の経緯を参照)。また福島県庁の復興計画では『原子力に依存しない安心安全の福島県』を基本理念にして、福島県内にある福島第二原子力発電所の全基廃炉を求めている。 原発事故の反省と総括2013年(平成25年)3月29日、「経済性を最優先するあまり、原発という特別なリスクを扱う会社でありながら、経営層のリスク管理に甘さがあった」「事前の備えが十分であれば防げた事故だった」とする、事故への総括と改革プランが、東京電力の改革監視委員会で了承された。 改革プランでは、原発のリスクを公表する「リスクコミュニケーター」という専門の担当を設けることや、緊急時の指揮命令系統において、1人の責任者が管理する人数を最大7人以下に制限することなど、提言が盛り込まれた。しかし、原子力発電所への社会の理解を得られる見通しは、全く立ってない[64]。 原子力発電所以外の発電施設原子力発電所以外の発電施設は、以下のように子会社へ移管されている。
過去に存在した発電施設火力発電所
原子力発電所
電源調達入札制度について12箇所、238万8600kW
関係会社等→「東京電力グループ」も参照
東京電力ホールディングスを事業持株会社として、東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー、東京電力リニューアブルパワー、東京電力フュエル&パワーがそれぞれの子会社・関連会社を有し、東京電力グループを構成している。 東京電力ホールディングス[66]
東京電力パワーグリッド[66]
東京電力エナジーパートナー[66]
東京電力リニューアブルパワー[66]
東京電力フュエル&パワー[66]
現在は関係会社でない企業
かつて存在した企業
など 関連団体・施設関連団体
広報施設運動施設
現存しない主な関連団体・企業
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売却福島第一原子力発電所事故の賠償金を捻出するために、愛知県名古屋市中区の賃貸マンションを売却[69]。KDDI、リビタ、関東天然瓦斯開発の株式を売却した。 2012年7月27日、東京電力総合グラウンドを杉並区に売却。 2013年8月28日、銀座支社本館を読売新聞グループ本社および読売新聞東京本社に売却が決定[71]。解体跡地には、読売並木通りビルが建設され、メインテナントとして無印良品銀座店が入居した。 統合東電工業、東電環境エンジニアリング、尾瀬林業を「東京パワーテクノロジー」に統合させる[72]。 東電ホームサービスをティー・オー・エスに統合し、社名を「テプコカスタマーサービス」に変更し、東電ホームサービスと東電広告を「東電タウンプランニング」に統合する[73]。 コーポレートスローガン
主な提供番組当然のことながら、いずれの番組も上記テリトリーのみでの提供であった。同一県内で複数の電力会社のエリアとなっている静岡県では、他社(中部電力)との共同提供や共同制作CMも放送された。ただしBSデジタル放送の民放各局で同社が提供していた番組は、全国での視聴が可能であった。 イメージキャラクターとして、でんこちゃんが安全・省エネを呼びかけるCMが有名であった。その他の企業CMにおいては後述の出演者による作品が放送されていた。 広報用CM(インフォマーシャル形式)としては長らく、60秒形式の「TEPCOインフォメーション」(担当:岸ユキ→生田智子)が放送されていたが、2006年10月からは30秒形式の「東京電力 for you」(担当:辛島小恵)に変更された。 なお、東京電力の発電所が置かれている地域[注釈 7] では発電所の広報を目的とした独自のCMが放送されていた。特に青森・新潟・福島の3県では原子力発電への理解を求める内容で、東北電力と共同でのCMも存在し、青森県の視聴者が多い岩手めんこいテレビでも放送の実績があった。 東京電力は、年間220億円以上の広告費を使用してきたと言われる。2010年度の広告費[注釈 8]は269億円であり、関東地方でしか電気を売らないのにもかかわらず、全国の広告費上位ランキングで10位に入っていた。 2011年3月時点の提供番組2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴い、2012年2月現在、以下の番組では既にスポンサーから降板した(一部に放送を休止している番組もある)。 また該当する番組では、提供クレジット表示を行わないのに加え、同社の通常のCMの放送に替えて、ACジャパンの公共広告CMの放映、ならびに同社からの福島第一原子力発電所事故と、その影響による計画停電についてのお詫び、および同社から全需要家に対する節電へのお願いを伝える内容の、社告形式のCM等が放映されている。また、でんこちゃんシリーズのCMも打ち切りとなった。
過去
問題・不祥事天下り問題→詳細は「日本の電力会社 § 天下り問題」を参照
福島第一原子力発電所事故以降、経済産業省と電力会社の天下り問題が、監督官庁である経済産業省傘下だった原子力安全・保安院の原子力発電所における安全基準のチェックを甘くさせる構造にしたとして批判が集まった。 逆に、官民人事交流というかたちで、監督官庁である経済産業省や環境省に当社従業員を出向(天上り)させている[78][79]。2021年10月1日現在、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターに1名、環境省大臣官房に1名、同省環境再生・資源循環局に1名、同省地方環境事務所に26名の当社(子会社を含む)社員が出向している[80]。 大手メディアとの癒着問題東京電力上層部と大手マスメディア関係者の中華人民共和国への接待旅行が明らかになった。2011年3月30日の会見において、この件について問われた代表取締役の勝俣恒久は「全額東電負担ではない。詳細はよく分からないが、たぶん、多めには出していると思う」「マスコミ幹部というのとは若干違う。OBの研究会、勉強会の方々。誰といったかはプライベートの問題なので」「責任者の方によく確認して対応を考えさせていただきたい。2〜3日中にどういうことになっているか照会したい」と述べた[81]。照会結果は未だに公表されていない。[いつ?] 原子力損害に対する賠償・除染問題→詳細は「福島第一原子力発電所事故」を参照
東京電力を相手に民事訴訟が起こされ、朝日新聞社によると「放射性物質は無主物であり東電が除染する責任はない」と答弁したとされており[82]、判決もその主張が認められて原告が敗訴した。損害賠償請求権の時効は通常3年、民事訴訟の時効は10年で、いずれにしても東京電力が優勢であるが、東京電力は損害賠償の請求権の時効について、「事故から3年たったら(賠償請求が)終わりになるということは全く考えていない」(広瀬直己社長、2013年1月10日福島県庁舎にて)[83]と、法律上の時効を過ぎても請求に応じる考えを明らかにしている[84]。 しかし一方で、2013年春以降になって東電が、原発事故で避難した社員に対して、支払った賠償金を事実上返還するよう要求するケースが多発していることが、2014年に入って判明しており、中には、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)による和解案を拒否するケースも出ている。これらの返還請求が出て以降、復旧作業に関わる社員の退職が相次いでいるとされ、復旧作業への悪影響が懸念される状況となっている[85]。また、東電が、立入制限区域から転居した社員に対しては賠償を打ち切る内容の独自の基準を定めていることも判明している[86]。 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(実質的には日本国政府)から特別資金援助というかたちで10兆円超(2021年3月末現在)の損害賠償資金の交付を受けている。これは、無利子の融資であり、仮に将来的に全額が返済されたとしても、国は1千億円以上の利払いを負担することになる[87][22]。 東京電力は、放射性物質で汚染された がれき撤去の際、飛散防止剤を10倍から100倍に薄め、散布回数も大幅に減らすよう指示している[88]。原子力規制庁は、このせいで飛散防止効果が落ち、2013年夏に放射性物質の飛散が起きたとし、東京電力に行政指導している[88]。また、飛散防止剤メーカーの担当者は、「これでは飛散防止効果はない、飛散は当然」という旨を述べている[88]。 政治家との繋がり以下は、福島原発事故以前の状況である。2012年(平成24年)以降は、事実上の「国有企業」であり、政治献金はできない。 自民党への献金東京電力の役員の大半が自民党の政治資金団体「国民政治協会」に対し、2007年から3年間で計1703万円の政治献金をしている[89]。 政治家のパーティー券購入東京電力は2010年までの数年間の間に自民党の麻生太郎、甘利明、大島理森、石破茂、石原伸晃、元自民では与謝野馨(無所属(当時))、平沼赳夫(たちあがれ日本(当時))、民主党では仙谷由人、枝野幸男、小沢一郎(当時)の政治資金パーティー券を大量購入している[90]。 東京電力株を保有する政治家2009、2010年資産等報告書による[91]。
関連する人物歴代社長・会長
経営者外部出身者
社員および関係者
家族が東電関係者企業CM出演者
テレビ番組
脚注注釈
出典
批判関連項目
外部リンク
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