出口 若武(でぐち わかむ、1995年4月28日 - )は、日本将棋連盟所属の将棋棋士[1]。井上慶太九段門下[1]。棋士番号は317[1]。兵庫県明石市出身[1]。
棋歴
明石市立藤江小学校1年の時に学童保育で上級生から将棋を教わり[2]、これをきっかけに将棋を始める[1]。当時はサッカーの方が好きだったが、頼まれて出場した将棋大会で県大会まで勝ち進んだのを機に将棋に本腰を入れた[3]。加古川将棋センターに通い、関西研修会を経て小学6年の時に関西奨励会に入会[3]。文部科学大臣杯 小・中学校将棋団体戦で2006年、2007年の準優勝チームとしてそれぞれ参加している[注 1][4][5][6]。2006年大会の兵庫県チームでは、のちに棋士となる冨田誠也と同じメンバーであった[6]。望海中、明石北高校へ進学する中[2][7]、奨励会では17歳で三段リーグ入り。
三段リーグでは3期目まで目立った活躍は無かったが、4期目の第56回三段リーグにて12勝6敗の成績を挙げると、7期目の第59回三段リーグでも12勝6敗の成績を収めた(結果的にあと1勝で昇段だった)。
三段時代の第49期新人王戦では澤田真吾六段、梶浦宏孝四段らを破り決勝三番勝負に進出。奨励会三段の決勝進出は史上5人目だったが、藤井聡太七段に連敗し準優勝に終わった[8](新人王戦での成績は、プロ入り後も含めてこの準優勝が最高となった)。
そして第64回三段リーグでは開幕から10連勝と波に乗り、終盤失速したものの14勝4敗の1位で四段昇段を決めた(同時昇段は黒田尭之)[9]。井上慶太門下では稲葉陽、菅井竜也、船江恒平に次いで4人目かつ9年ぶりのプロ棋士となった。なお、井上門下はこの2年後に横山友紀と狩山幹生が、そしてその更に1年後には藤本渚がプロ棋士となっており、出口を契機に同門下のプロ棋士入りが加速している。
プロデビュー後
- 2019年度
プロデビューとなったこの年は、初参加の第78期順位戦にて苦戦し、3勝7敗で降級点が付く結果となった。但し、年度の全成績としては、早指し棋戦での活躍もあり、29勝18敗と大きく勝ち越した。
- 2020年度
2期目となる第79期順位戦にて、前年の不調から一転9勝1敗としC級1組昇級を決め五段昇段となった[10]。1年目で降級点を取った新人が、翌2年目で昇級を果たすのは史上初めてのことであった[6]。第70回NHK杯では予選を突破し、本戦に初出場した。また、第28期銀河戦でも予選と本戦ブロックを突破し、決勝トーナメントに進出した。
- 2021年度
第92期棋聖戦にて決勝トーナメントに進出すると、1回戦も突破してベスト8まで勝ち進んだ。第71回NHK杯では総合成績優秀者のため本戦1回戦シードとなり、本戦でも斎藤慎太郎・近藤誠也等の強敵を破り、ベスト8まで進出した。第7期叡王戦では五段戦(段位別予選)を突破して初の本戦入りを果たす。第80期順位戦のC級1組では7勝3敗に終わり、昇級まであと1勝が足りない結果となった(3位で昇級した飯島栄治も7勝3敗だったため、結果的にあと1勝で昇級だった)。年度の全成績としては40勝14敗と、デビュー以来最高の成績を収めた。
- 2022年度
初の本戦入りした第7期叡王戦は本戦でもその勢いを止めず、初進出した挑戦者決定戦でも服部慎一郎に勝利し、タイトル初挑戦と六段昇段を決めた[11]。藤井聡太叡王との五番勝負は0勝3敗のストレート負けに終わった。その他、第70期王座戦でも活躍し、決勝トーナメントまで勝ち進んだ(1回戦で敗退)。
- 2023年度
- 2024年度
棋風
元々は振り飛車一本だったが、20歳の頃に居飛車に切り替えるなど棋風改造に取り組んでいる[3]。
人物・エピソード
- 「若武」という名前は父と母が好きな言葉を1文字ずつ付けたもので、当初は父が「若」を、母が「夢」を推したが、画数の関係で選び直され「若武」になった[12]。
- 新人王戦で藤井聡太に敗れた対局後は、悔しくて呆然としていたためか帰りの電車で乗り過ごしてしまったという[13]。
- 女流棋士の長谷川優貴は同じ明石出身で同い年であり、四段昇段を決めた時には「面倒見が良くて、昔4つ下の弟のお世話よくしてくれたなぁ…笑 今度からは出口先生と呼ぶけれど、今日だけは!出口君、本当におめでとうございます」とお祝いコメントを贈られた[14]。
- プロ入りを果たした第64回三段リーグでは、前述通り終盤に失速しており、特に最後の2局は2連敗を喫した。そのためか、昇段を報告した時の師匠である井上の第一声は「情けないねえ」だったという[15]。
- 2021年4月22日、女流棋士の北村桂香と結婚[16]。
- 上述の第7期叡王戦を3連敗で敗退した際には、大盤解説会場でファンの拍手を受け涙を流した[17]。
昇段履歴
昇段規定は、将棋の段級 を参照。
- 研修会(関西研修会)
_______
- 2005年09月00日 : E1クラス [18]
- 2006年05月00日 : D1クラス [19]
- 2006年12月00日 : C2クラス [20]
- 2007年05月00日 : C1クラス [21]
|
- 奨励会(関西奨励会)
(5級 - 二段)
- 2000年00月00日 : 5級
- 2000年00月00日 : 4級
- 2010年07月00日 : 3級 [23]
- 2010年00月00日 : 2級
- 2011年03月00日 : 1級 [24]
- 2011年11月00日 : 初段 [25]
- 2012年12月00日 : 二段 [26]
|
- 2013年03月23日 : 三段(第53回奨励会三段リーグ戦〈2013年度前期〉からリーグ参加)[1][26]
- 2019年04月01日 : 四段(第64回奨励会三段リーグ成績1位) = プロ入り [1]
- 四段昇段以降
主な成績
タイトル戦
- タイトル戦登場
- 登場回数 1回(獲得 0)
在籍クラス
順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始 年度
|
(出典)順位戦
|
(出典)竜王戦
|
期
|
名人
|
A級
|
B級
|
C級
|
0
|
期
|
竜王
|
1組
|
2組
|
3組
|
4組
|
5組
|
6組
|
決勝 T
|
|
1組
|
2組
|
1組
|
2組
|
2019
|
78
|
|
|
|
|
|
C251x
|
3-7
|
33
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
3-1/昇1-1
|
2020
|
79
|
|
|
|
|
|
C243*
|
9-1
|
34
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
2-1/昇1-1
|
2021
|
80
|
|
|
|
|
C130
|
|
7-3
|
35
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
3-1/昇2-1
|
2022
|
81
|
|
|
|
|
C109
|
|
7-3
|
36
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
0-1
|
6-0 (1位)
|
2023
|
82
|
|
|
|
|
C103
|
|
7-3
|
37
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
0-1/昇4-1
|
2024
|
83
|
|
|
|
|
C107
|
|
-
|
38
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
-
|
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。
|
年度別成績
公式棋戦成績(四段昇段後)
年度
|
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
通算成績
|
2019年度
|
48 |
29 |
19 |
0.6041 |
[36]
|
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2020年度
|
44 |
33 |
11 |
0.7500 |
[37]
|
92 |
62 |
30 |
|
|
2019-2020 (小計)
|
92 |
62 |
30 |
|
|
通算成績
|
年度
|
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021年度
|
53 |
39 |
14 |
0.7358 |
[38]
|
145 |
101 |
44 |
0.6965 |
[39]
|
2022年度
|
49 |
28 |
21 |
0.5714 |
[40]
|
194 |
129 |
65 |
0.6649 |
[41]
|
2023年度
|
31 |
16 |
15 |
0.5161 |
[42]
|
225 |
145 |
80 |
0.6444 |
[43]
|
2021-2023 (小計)
|
133 |
83 |
50 |
|
|
通算
|
225 |
145 |
80 |
0.6444 |
[43]
|
2023年度まで
|
非公式戦優勝
著書
- 先手三間飛車を完全攻略!出口流▲7八飛戦法破り (マイナビ将棋BOOKS)(2021年11月24日、マイナビ出版、ASIN B09HXDS2MK)
脚注
脚注
- ^ 2006年(第2回)は兵庫県チームとして[4]、2007年(第3回、小学校の部)は藤江小学校チームの一員として、それぞれ出場[5]。
- ^ 第79期順位戦C級2組10回戦・対中座真七段 戦(2021年3月5日対局)の棋譜コメント(6手目)より、同対局前時点の通算成績は「出口の今年度成績は29勝10敗(0.744)/通算成績は58勝29敗(0.667)」[27]。この対局に勝利し「通算59勝29敗」。
- ^ 第7期叡王戦 挑戦者決定戦・対服部慎一郎四段 戦(2022年4月2日対局)の棋譜コメント(6手目)より、同対局前時点の通算成績は「【出口の公式戦成績】通算成績は101勝44敗(0.697)」[28]。この対局に勝利し「通算102勝44敗」。
- ^ 2022年3月末時点の通算成績は101勝44敗(#年度別成績2021年度を参照)。2022年3月の対局のうち直近2局(2勝0敗)は同年3月29日および3月26日の対局[44]。2022年3月26日の対局に勝利し「通算100勝44敗」。
出典
関連項目
外部リンク
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タイトル 保持者 【7名】 |
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九段 【27名】 (引退1名) |
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八段 【34名】 (引退2名) |
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七段 【45名】 (引退2名) |
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六段 【30名】 |
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五段 【19名】 |
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四段 【14名】 | 2025年04月1日付 昇段者 | |
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2025年10月1日付 昇段者 | |
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2025年度 引退者 【4名】 |
九段 福崎文吾 ( 2025年4月22日引退 )
七段 木下浩一 ( 2025年4月23日引退 )
七段 増田裕司 ( 2025年4月23日引退 )
八段 長沼洋 ( 2025年5月1日引退 )
八段 有森浩三 ( 2025年5月15日引退 )
2023年度引退予定者 (現役継続中) |
七段 川上猛 ( 引退日未定 / 第38期竜王戦 5組在籍、4組昇級の場合は現役継続、引退日は2025年度以降)
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日本将棋連盟所属(現役棋士 171名 / 2025年度引退者 5名、2025年7月10日時点) △は2025年度の昇段(期中の昇段月。月表記なしは期首4/01付)。引退者の(日付)は引退日。 これまでの引退棋士・退会者についてはTemplate:日本将棋連盟引退棋士参照。詳細は将棋棋士一覧を参照。2026年度 >> |
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竜王 | |
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1組 【 ▼降級 4名 】 | |
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2組
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3組
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4組
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5組
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【在籍 31名(棋士30名・奨励会員1名) / 定員 32名 (欠員1) 】
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6組 【 △昇級 5名 】 |
| 女流棋士 | |
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アマチュア |
- 森下裕也アマ
- 荒田敏史アマ
- 関矢寛之アマ
- 竹内広也アマ
- (6組参加4名)
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奨励会員 |
- 山下数毅(三段、5組在籍)
- 齊藤優希(三段、6組参加、2025年4月四段昇段)
- (5組、6組参加各1名、計2名)
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次期から出場 |
【2025年04月昇段者】(2名):
齊藤優希(第38期は三段として出場)、炭﨑俊毅(第39期からの出場)
【2025年10月昇段者】(2-4名):(いずれも第39期からの出場)
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★挑戦者 / ◎本戦出場 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
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名人 | |
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A級 | |
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B級1組 | |
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B級2組 | |
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C級1組 | |
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C級2組 | |
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フリー クラス
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次期から 出場
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フリークラス 昇級者 | |
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奨励会三段リーグ 上位者 |
- 2025年10月1日昇段者(2-4名)
- 2026年4月1日昇段者(2-3名)
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先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの(数字)は在籍可能残り年数(2025年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |